★「認知症」でお金が止められる⁉ 衝撃事実で、重版出来‼

表紙カバー350px
認知症の家族を守れるのはどっちだ
   成年後見より家族信託
A5判260ページ、本文カラー、1800円+税
親のお金が使えない、NHK「クローズアップ現代+」も注目!
凍結されやむなく成年後見? 元気なうちに、家族に信託?
家族の認知症でお悩みの方、ヒントをつかんでください。
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★認知症の妻を家族信託で守る! 親なき後の問題解決にも“光”‼

(著作)認知症の妻を守る

あなたの奥さんはすでに認知症を発症している―――。
そんな妻を、あなたが財産を遺せば守れますか?
認知症の家族を守れるのはどっちだ⁉ 成年後見より家族信託
この問題は、拙著の重要テーマのひとつです。
もちろん家族信託で、この問題は解決します。
というより、家族信託のメリットをもっとも活かせるケースがこれ、といっていいでしょう。
きょうは具体的に、その方法と考え方を解説しましょう。

 

■認知症の妻に財産を遺すとどうなる?

《仮想あなたの家族》
あなた(甲) 80歳
認知症を発症している妻(乙) 77歳
東京住まいの長女(T) 50歳
東京住まいの長男(C) 48歳

《あなたの財産》
自宅不動産(家と土地)3000万円
預金 2000万円
生命保険 1500万円(受取人は乙)
有価証券 1500万円
………………………………………………………………………
公的年金(妻の老齢基礎年金含む)360万円/年

仮想あなた(A)の家族

あなたは妻とふたり暮らし。
娘と息子は、東京の大学に入学して以来、親元から離れた。
資産、年金の額とも、老後が不自由となる状況ではない。

 

ただ、あなたは憂うつだ。
50年以上も連れ添った妻に、認知症の傾向が現れてきたから。
娘も息子も、今さら同居できる環境ではない。
認知症の妻をおいて、『私は先に他界するかもしれない』。

 

それで遺言を書いてみた。
<妻には自宅と保険金1500万円と預金1500万円>
<娘と息子には預金と有価証券で各1000万円>
総資産8000万円。妻にはすぐに使える3000万円を残す。
子に1000万円を渡すのは彼らの遺留分を考えてのことである。
が、本当にこれで妻の老後は安心、と言えるのだろうか。

 

『もしも妻の認知症が悪化したり、自宅でひとりで暮らせないほど介護度が進んだ時には………、
むしろ自宅を売って、そのお金で施設や介護付き有料老人ホームに移った方がいいかもしれない。
しかし妻の所有となった自宅は、認知症でも売れるのか?

 

■妻に遺した口座が凍結、誰も使えない⁉

あなたの心配は当たっている。
妻の認知症がひどくなっていたら、相続そのものが難しくなる。
遺産分割協議は、各相続人の判断能力がなければ成立しないからだ。
この点、あなたは遺言を書いたから大丈夫」と思っているが……、どうか。
<遺言があれば、妻の判断力にかかわらず、相続は行えます>
よかった。危機回避。ではあるが……
認知症の妻に財産を遺したところで、そもそも使えるのか⁉

 

相続により、不動産の名義は認知症の妻に移転する。
不動産の売買は契約行為である。
買い手が現れても、認知症の妻とは契約できない
認知症により、妻の契約能力は失われているから。
(※民法では、自分がすることの意味を理解できない人との契約は無効とされる)
そのような物件の仲介に乗り出す不動産会社はないだろう。

 

さらに、預金の場合はもっとずっと深刻だ。
遺言に「遺言執行者」を指名しておけば(長女でも弟でもいい)、遺産の3000万円を妻名義の通帳に振り込むことはできる。
しかしそのお金を月々の生活費として、誰が引き出すのだろう。
妻がキャッシュカードを作っており、暗証番号も子に伝えてあるなら、当座、誰かがそのカードで引き出すことはできる。
しかし名義人が認知症である口座から、永久に家族が引き出し続けることは難しい。
いずれ、銀行から口座を凍結される可能性は高い、と言わざるを得ない。
かくして、認知症の妻に遺した財産は誰も使えなくなってしまう。

 

「普通の遺言」ではダメだ、何か、ほかの対策を考えよう。

 

■負担付遺贈の遺言にヒントがある

そこで考え出されたのが負担付遺贈の遺言」という手法だ。

 

負担付遺贈の遺言とは、このようなものである。
私は、下記不動産と金融資産を長女であるT(生年月日)に、以下の負担をかけることを条件に遺贈する。
Tは、母乙(生年月日)に対し、乙が生存中、その生活費として〇万円を毎月支給すること。
これにより娘Tは、母乙の生活を保障する道義的な責任を負い、他の相続人より多くの遺産を得る。

 

■「違う人に預けて」管理させる

この遺言の何が、「普通の遺言」とは違うのか、お分かりだろうか?
(多分)切羽詰まった人だからこそ考え付いたのだと思う。
それは、救いたい本人に遺産を渡さず、他の者に渡す、という大胆な発想だ。
そして「他の者」に、こんな条件を付ける。
《お前により多くの財産を遺そう。その代わり、お前はお母さんの面倒を一生みてほしい》
アメとムチ、というとなんだか卑しいコトに思えるが、遺言者の思いは非常に合理的だ。

 

はっきり言って、認知症にかかっている相続人を(民法の枠内で)守る方法は、これしかない。
先ほどから書いているように、認知症の本人に財産を渡してはいけない。
みすみすその財産を「動かせない財産」に変えてしまうことになるから。
だからこそこの遺言の書き手は、別の者に遺産を持たせた。

 

負担付遺贈の遺言にはいくつか欠点があるので、後でまとめて解説するが、「本人にはあげない」という発想はすごいと思う。
実はこの点、私が「家族信託を使って行おうとしていること」と一致している
認知症の妻を守るという課題の完全解決にはならないが、この遺言はいい線をいっている

 

 

■強すぎる「所有権」を粉砕せよ!

この記事の前半で私が言いたかったのは、「民法では所有権が強すぎる」ために弊害もある、ということである。
なまじ所有権を絶対と考えるので、所有者の健康問題までが「管理・処分権限」に直結してしまう。
民法では、「財産そのもの」と「所有者」が切り離せないのだ。
この遺言を書く前の「甲と甲の財産」の関係を<イラストA>で表すと、以下のようになる。

認知症の妻を守るA

あなたの財産は、あなたが所有者である限りあなたのもの。どのように処分しようと構わない。「所有権は絶対的な権利」だからだ。しかしそれがアダになることも……。

 

イラストA>では、所有者の甲は意思能力が健在であり、財産を完全に自己で管理できている。
だから甲にとっては、銀行の口座凍結など「無縁なこと」で、考えたこともない。
しかし甲がその感覚のまま(不用意に)普通の遺言を書くと、そうはいかなくなる。
イラストB>のように認知症の妻が相続したら、この財産はたちまち動かせない財産に変わる。

認知症の妻を守るB

甲の遺産は妻乙の名義に代わる。妻が認知症だと「契約能力」を疑われ、せっかくの遺産を妻は思うように使えなくなってしまう。

 

■妻本人が「所有する」状態を作らない

これは誰が見ても愚策だから、「負担付遺贈」という遺言技術が生まれた。
健常な娘に、妻の老後を託す遺言だ。
当然、娘には扶養義務を果たすことを課し、妻の分まで加えて遺産を遺す。
<イラストC>がそれだ。

認知症の妻を守るC

認知症を発症している母の分まで余分に相続。その代わり母の生活費を生涯支払う。しかしこの財産の所有者は娘である。

 

今度は、所有者は娘T。遺言により完全な所有権を持つ(100%Tの財産になる)。
Tは無論、健常だから、この財産が銀行に凍結される恐れはない。
Tが遺言者の願い通りに、もらった遺産のうち「母の分」をきちんと母のために使えば、この財産は活きたものになる。

 

■ 負担付遺贈の遺言の9つの欠点

負担付遺贈の遺言は、解決の道筋を示してくれている。
この遺言の「欠点」………をいた方法が、今回のテーマの答えになる

 

負担付遺贈の遺言には、すぐ分かる欠点が2つある。
1つ、Tが遺言者の思惑通りに動くとは限らないこと。
2つ、甲は、生きているうちにこの遺言の成否を確認できないこと。
(遺言だから当たり前であるが)

 

さらに細部まで突っ込むと、

  1. Tに、他の相続人より過分な相続税がかかる。
  2. Tは「母の生涯にわたる生活費」を預託された形だが、自己の財産と分別管理ができない。
  3. その結果、他の相続人が「約束の実行」を見届けたくても、事実上不可能になる。
  4. Tが亡くなると、(Tの家族にはなんの義務もないので)約束が継続されない。
  5. “母扶養のための資産”の意味合いがあった父からの遺産は、(Tが亡くなると)Tの家族に相続されてしまう。
  6. 遺言者の「指示」は変更できず、時代や環境の変化に即応できない(「月額○円」の価値が下がることも考えられる)
  7. Tひとりが責任を負うが、遺産を多く受け取ったことから、他の家族から孤立していく可能性がある。

 

付け加えた「7つの欠点」は、ちょっと辛口すぎるかもしれない。
総合的に評価すれば、「民法」の枠内で認知症の妻の老後を何とかしようと考えたとき、この遺言は「出色」だ‼
1.~7.まで、負担付遺贈の遺言の欠点というより、民法そのものの限界というべきかもしれない。
現行民法以前の、「家督相続」の時代なら、この遺言は見事に家族の指針になっただろう。
今は均分相続が定着してきたので、「1人の善意に頼る」こと自体が難しくなっている。

 

だからこそ、家族の1人に妻の運命を託す場合は、ルールや監視の仕組みをもっと頑丈にしておくべきなのだ。

 

■実現させたいのは、この7か条!

さて、方向性はわかったから、民法の限界を何とかしよう。
実現したいのは、こういうことだ。
遺産を直接妻に渡さずに、しかも妻のために公正に使う仕組みを作る
そのため、以下の7つの条件を実現する。

  1. 娘は「母の生活費を託され見た目の財産が増える」が、このことで損も得もしないこと。
  2. 娘に渡した遺産は、妻の分が含まれているので、ごちゃ混ぜにしない(分別管理をする)こと。
  3. 万が一娘が死亡しても、妻への給付は継続され、娘の相続人のものにならないこと。
  4. 娘が好き勝手に財産を使わぬよう、他の家族がチェックできるようにすること。
  5. 遺言のような単純な指示で終わらせず、環境変化に順応できるようにすること。
  6. その「仕組み」を、夫甲が生きているうちに作ること。
  7. 甲が亡くなった後もその仕組みは存在し、母の晩年を守ること。

つまり「負担付遺贈の遺言の欠点」すべてをクリアし、しかも甲が生きている間に仕組みを作り上げる
そんなことができるのだろうか。
家族信託を使えばできる。

 

 

■家族信託ならそれができる


まず、「母以外の者に財産を託す」ということを、信託法を使って実現させよう
<イラストD>
を見てほしい。

認知症の妻を守るD

妻を守るのが目的なのに、なぜ夫が登場してくるのだろう……。

 

(おっと、イラストを間違えた‼ わけではありません)
認知症の妻のための対策なのに、なぜ夫甲がイラストに登場してくるのか。
少しややこしいが、それを解説しよう。

 

新たな「7つの箇条書き」を実現させるには、「所有権」という民法の観念を一度“粉砕”しなければならない
所有権は強い権利だが、強すぎるから所有者の健康までが条件とされてしまうことは、先に述べた。
しかし人間は老いる。
高齢になれば、認知症を発症する人も増える。
これはもう、想定できる未来だ。
対策するしかない。

 

■所有権とは“別の形”にして渡す

民法法制の下では、別の者に遺産を相続させて、間接的に大切な人を守るしかなかった。
信託法の下でのやり方は、ちょっと違う。
「所有権」としては渡さないのだ。
ここに甲が登場するのは、最終的に、妻乙に遺産を「所有権」とは別の形して渡すためである。
まことに奇妙な形に見えるが、説明しよう。

 

①財産は、甲がTに渡す(信託する)。
②渡して、財産の名義は甲から「T」に換える
③しかしTは、その財産を自分のためには使わず、甲のためのみに使う。
④Tに与える名義は、Tに「管理権」を持たせるための便宜的なものである。
⑤自分のためには使えない財産なので、Tは「真の所有者」ではない。
Tは、いわば財産管理人としての「名目的な所有者」という立場になる―—わけである。

 

■甲の財産を「受益権」に換える

もう一度、<イラストA>を見てほしい。
こちらは「所有権」を例示している。
財産と、所有者甲は不即不離で結ばれていて、甲のみが管理・処分権を持つ。
この状態がいわゆる「財産を所有している」という状態だ。
強い権利なので、その状態を赤の実線で示した

 

一方<イラストD>は、家族信託をしている状態を示している。
(聞きなれない用語が出てくるが、我慢してほしい)

委託者(甲):財産を託す人
受託者(T):財産を託される人(名目的な所有者になる
受益者(甲):託された財産から実質的な利益を得る人(実は「委託者」と同じ人)
信託財産:甲の財産の一部。「所有者」としての名義は、委託者→受託者に移る。
受益権:受託者に向かって「信託財産から得られる利益を、私に寄こせ」と請求する権利。

 

家族信託(イラストD)の場合、甲が委託者となって自分の財産(の一部)を信託財産として、受託者Tに託している。
民法では、娘は完全な所有権を得た。
その多くを認知症の母のために使うことが条件にはなっているが、法的には、Tはどのように管理・処分しても構わない。

信託法の考え方はそれとは違う。
名義はTに換えたのに、財産から実質的に得られる利益については、全部委託者(この場合は「受益者」ともいう)に返さなければならない。
※家族信託契約書に、その“筋書き”を書いておくのである。
Tが管理し、甲が実質的な利益を受け取るこの奇妙な財産のあり方を、「受益権」と呼ぶ
イラストD>は受益権の様子を表している。

 

受託者Tは、託された財産を甲を想起して、甲のためにのみ管理・運用・処分する。
甲はいったんTに財産を託したものの、その財産の実質はすべて自分に戻る。
財産は「行って来い」で(名義だけは「T」になるが、実質的には甲に戻される。
委託者甲は、実際に利益を受ける取る者であるから「受益者」と言われる。
だからこの信託では「委託者=受益者」であり、金銭の動きにうるさい税務署も、「この財産の実質的な所有者は甲である」と認め、お金が「T→甲」に流れても、特に贈与税の対象とはしない。

 

以上、少々長い説明になったが、民法では財産は必ず「○○の所有」であり、これは変えようがないが、信託法で財産は、「名義()と財産の中身()」という2つの要素に分かれる。
堅固な所有権に比べ、受託者が得る「財産の名義」は管理・運用・処分するための名目であり、実際の財産を所有しているわけではないので、
イラストD>は色を変え、点線で表した。

 

■健康な夫がまず委託者になる

これが「認知症の妻を守る家族信託」の第一段階だ。
委託者甲は、認知症の懸念を持つ人でなくてもいい(まったく健康で構わない)。
健康な甲は、認知症の妻を守るために娘と信託契約を交わし、自分の財産を受益権に変えた
繰り返すが、遺産を「所有権」の形で妻に渡さないためにである!

認知症の妻を守るE

委託者甲の狙いは、はじめから自分が他界したときの<妻への財産の渡し方>にある。

 

甲の受益権は、所有権と同様に、売買や貸し借りの対象となる。
「受益権」とは、受託者に「信託財産からの利益を私に寄こせ」と要求できる権利だ、とされている。
法律用語でいうと、人に要求できる権利であるから「債権」に当たる。
債権は、相続の対象にもなる。
受益権は委託者が信託したことによって生まれた権利なので、委託者が死亡したときには「帰属権利者(残余の信託財産を受け取る人)」に自分の受益権を承継させることができる。
※受益権は誰に帰属させても構わない。契約書に書いておけば、その人が帰属権利者となる(親族以外の人も帰属権利者となることができる)。この辺が「家族信託契約は遺言の代わりになる」と言われるゆえんだ。

 

■夫の死後、受益権を妻に渡す

今回の信託では、委託者甲が死亡したときに信託を終了させず、次の受益者をあらかじめ決めておく。
当然、妻乙が第2受益者である
それを表したのが<イラストE>だ。
乙の姿(第2受益者)がようやく出てきた。
甲は自分の希望通り、遺産を「Tという財産管理人(=受託者)付きのまま」妻に渡すことができた
渡ったのは(所有権ではなく)受益権なので、線は点線だ。

 

Tは、委託者甲が信託した財産(自宅不動産と金融資産計3000万円分を甲存命中にはほとんど使わず“温存”しておき、乙が第2受益者になった時点から、乙のために本格的に管理・運用・処分することになる。
(甲の生活は信託財産としなかった「年金」などで賄ってきた)

 

甲の死後、乙は自宅にひとりで住むことになるので、乙の介護度が進めば自宅から離れ施設で暮らすことも予想される。
その場合、実家は空き家となる。
姉弟は空き家のまま相続する気はないので、Tが受託者として実家を処分(売却)することも、あらかじめ「信託目的」として契約書に書いておく。
Tが換価処分して得た金銭は、そのまま信託財産に組み込み、乙の介護費用等に回す。
遺言ではこのように、状況に合わせて財産の形を変えて活用するなど、絶対にできないことである。

 

■受託者を監視する人も作れる

家族信託では、▼委託者▼受託者▼受益者のほかに、▼受益者代理人、▼信託監督人を置くことができる。
受託者の行動を監視するのは、通常は受益者だ。
しかし今回の家族信託のように、受益者は認知症になることが予想されることも多い。
それでは自分の財産がどのように使われるか、チェックができない。
そんな場合に備えて、受益者代理人が受益者と同様の権限を持って、受託者の行動をチェックできるようにしている。
今回は、弟のCが受益者代理人となって、乙の代弁をするのが妥当だろう。
(信託監督人も同様の機能を発揮するが、説明は割愛する)

 

■家族信託は、遺言の欠点を克服する

どうだろう、このようにすれば負担付遺贈の遺言では解決できなかった問題はすべて解決できるのではないか。

  1. Tに、他の相続人より過分な相続税がかかる。
    乙が亡くなり信託が終了したとき、乙の受益権を「所有権」に戻したうえでTとCが承継するので、必ずしもTが得するとは限らない(分配比率はあらかじめ契約書で決めておく)。
  2. Tは「母の生涯にわたる生活費」を預託された形だが、自己の財産と分別管理ができない。
    「分別管理」は信託法で義務付けられているので、受託者Tが厳格に分別管理ができるよう「受託者用通帳」を作る。
  3. その結果、他の相続人が「約束の実行」を見届けたくても、事実上不可能になる。
    受益者代理人や信託監督人がTの行動をチェックすればいい。(それが“家族の自治”だ)
  4. Tが亡くなると、(Tの家族にはなんの義務もないので)約束が継続されない。
    家族信託は、Tに第2受託者(Cが候補)を決めておけば、Tが万一死亡したとしてもCが乙の財産管理を継続できる。Tの家族は信託財産に手を出すことができない。
  5. “母扶養のための資産”の意味合いがあった父からの遺産は、(Tが亡くなると)Tの家族に相続されてしまう。
    Tが管理している信託財産は「乙のために使われる財産」であり、Tの個人財産ではないから、Tが死亡したとしてもTの家族は1ミリの権利も有しない。
  6. 遺言の指示は変更できず、時代や環境の変化に即応できない(「月額○円」の価値が下がることも考えられる)
    受託者の判断で、乙への給付や信託財産の使い方は変更できる(契約で「TとCとの合意により」とすることもできる)。
  7. Tひとりが責任を負うが遺産を多く受け取ったことから、他の家族から孤立していく可能性がある。
    この信託の縁の下の力持ちは確かにTだが、Tは必ずしも得をしない。最終的に受け取る財産はどのようにでも決めておける。

 

■言われるままに成年後見を使うな‼

最後に、このケースで成年後見制度を使ったらどうなるかについても、触れておきたい。
甲が存命中に、間違っても成年後見制度に踏み込まないでほしい。
銀行や地域包括センターなどでは、「成年後見人を付けてください」というかもしれない。
役所に相談した場合も同様だ。
ハンで押したように「成年後見」を持ち出す。

 

まじめな人、法令順守が好きな人、またこの制度をよく知らない人は、うのみにしがちだが、言う方も制度を深く知って言っているわけではない。
助言、必ずしも正解ではないから、うのみは禁物だ。
この制度、後戻りがきかない。
『しまった』と思っても、後見人を外すことはできないので、うかつに申立ててはいけない。

 

■施設選びも、家族は蚊帳の外に置かれる

「単に財産管理を任すだけ」と思わないでほしい。
現在の成年後見運用では、家族の身上監護権を奪われてしまう。
本人の財産をどう管理しているのかを知らされないのもストレスだが、父や母の病院、施設選びまで関与できなくなるのは痛手だ‼
このような重大事を、「申立をする前にきちんと説明された」という話は、聞いたことがない。
ちょっと信じられないような話だが、私が相談を受けた範囲で「(制度のことを)十分知らされた上で申し立てをした」という人は一人もいない。
相談された、あるいは説明をした士業者や、裁判所職員は何をしていたのか!

 

甲が認知症の妻のために、良かれと思って成年後見を申立てると、「できる限り自宅で妻と暮らしたい」という甲の願いは、かなわなくなるだろう。
だから成年後見制度が、人間味を欠いた、「措置」同然の(「やってやる」という感覚の)ごう慢な制度に見えてくるのだ。
成年後見制度の主旨は逆だったはずである。
福祉を「措置」として行うことをやめ、本人に選択してもらう、できるだけ本人の残存能力を活かせるよう手助けをする、そんな謙虚な反省からスタートした制度が、今はどこに向かっているのか⁉

 

■福祉に関心ない後見人に高額報酬

甲なき後、姉弟がこの制度を申立てた場合も同様だ。
就任した成年後見人は、(もし法定相続分通りに)乙に相続させていなければ、まずそのことを問題とし、母の相続分(遺産の2分の1)に足りない場合は、“返還”を請求することから後見事務を始めるだろう。
「認知症の母には財産管理能力がないから、私たちが多く遺産を受け取り、母のために使うのだ」、という“家族の戦略”は一顧だにされない。

 

そういう攻防から始まり、財産管理の実態は示されず、身上監護も後見人が行うことになる。
しかし元々、介護や看護経験のある後見人は少ない。
無関心に施設や病院に入れっぱなしで、年に1度も訪問しない、まして本人と会話することもないような後見人もいる。
それでいて高額報酬を受け取るのだとすると、家庭裁判所への報告はどうやっているのか、聞きたいところだ。

 

親族の仲が悪いなど、特別な事情でもない限り、普通の家族は「成年後見制度」は敬遠した方がいい。

 

■親なき後の問題にも光明!

ここまでの話をもう一度、まとめよう。
「認知症を発症していたら、家族信託はもう無理ですか?」とよく聞かれる。
混同しないでほしい。
委託者(今回の例では「甲」)がボケていれば、確かに家族信託契約を結ぶのは難しくなる。
しかしきょう書いた家族信託は、この話とは関係ない。
今回例示した甲のケース、甲はボケていないどころか、すこぶる健康だ。
それでも甲を委託者として、あえて信託契約を結ぶ。
狙いは、すでに財産管理能力を失っている乙に、管理者付きで遺産を渡すためだ
受益者は、信託財産から何らかの利益を受ける人であり、管理能力の有り無しは関係ない。

 

言い換えれば、委託者甲は、「所有権として財産を乙に渡さない」ために、あえて信託契約を結ぶのである。
すると甲の財産は民法の世界から離れ、信託法に則って「受益権」に変わる。
甲の財産の管理者は娘Tに代わり、Tが受託者として甲のために管理する。
甲の真意は、自分が亡くなって以降に効力を発する。
契約により、受益権は甲から乙に移る。
Tは引き続き、乙のために信託財産を管理する。

 

以上がきょうの話のまとめである。
我ながらくどいと思ったが、同じ説明を繰り返した。
とても重要だからだ。
この手法は「認知症の妻」を救うだけでなく、《親なき後の問題》を一気に解決する!
知的障がい者、重度の身体障がいをもつ人、薬物やアルコール依存症、ひきこもり、極度の浪費家………………。
これらの人を第2受益者とすることで、成年後見に頼らない道が見えてくる。

 

親なき後の問題は複雑多岐にわたるので、お金の受け渡しだけで完全解決になるわけではないが、親の不安の大きな部分を除いてくれるだろう。
認知症対策と同時に、私は親なき後の問題解決の一手法として、家族信託を磨きこみたいと願っている。

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静岡県家族信託協会

ジャーナリスト石川秀樹
相続指南処行政書士

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(表紙)家族信託の本

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