★「父が軽い認知症」と話したら1億円の土地登記を断られた!父と家族信託契約を結べば、受託者の手で再び売買契約を結べる

成年後見

「認知症」と軽口を言ったのがアダ

Q (相談者:Tさん
父から受け継いだ会社をたたむことにしました。
父名義の土地を父の承諾を得て売却することになり契約直前まで来たのですが、暗転しました。
司法書士に登記を依頼するために相談に行った折、私がつい「父が軽い認知症だったので……」と口を滑らせたのがアダ。
途端に目の色が代わり、「登記はできません」といわれてしまいました。
契約するばかりの段階にきているのに、父に会って状態を自分の目で確認することもなく登記を断られるとは。
途方に暮れています。

確かに父は、町医者に「認知症の傾向が出ていますね」と言われましたが、薬が合っているせいか明るくなり、取引先との会話にも不自然はありません。
土地売却も父の指示で私が動いたので、本人の意思能力は確かです。
司法書士は「後見人を立てるしかない」といいますが、調べる限り、後見人は一度立ててしまうと成年後見制度から離脱することはできないようです。

土地売却のためだけに拙速に後見人制度を頼ることには抵抗があります。
成年後見人制度以外に現状を打開する方法はありませんか?

違う司法書士の判断を求めたいところです。


Tさん、大変な目に遭われましたね。
世間の「認知症」に対する反応はとても厳しいんですよ。まして契約行為においては。
解決は難しそうですが、100%不可能ではないと思います。
登記の仕事を引き受けなかった司法書士はまじめな方なのでしょう。
ただ法律の専門家ですからね、契約当事者となるお父さんの常況を確認すべきです。
医師でもない一般市民のTさんがポロリと落とした愚痴に、変に反応してしまいましたね。
確かに司法書士は、成年後見申立ての専門家ですから認知症には敏感です。
もし家庭裁判所に提出する診断書に「保佐相当」「成年後見相当」のチェックがあれば、登記事務は行いません。
それは“司法書士会の基準”になっていますから、当然です。

でも今回は一般医が、「認知症の傾向もでているね」と言っただけですから診断書もない。
「契約行為をする能力があるかどうか」は、まず自分で面談して確認すべきです。
契約当事者のお父さんに会わないまま断る、というのはまずいですね。
とは言え、司法書士を相手にしているのに、「認知症」の言葉を出したあなたは軽率でした。
成年後見制度では認知症を、補助・保佐・成年後見の3段階で考えます。
補助と保佐の境目は、専門家でも判断がまちまちになるほど難しい。
でも、保佐相当を超えれば契約能力なしとみなされますから、結果は重大です。

2000年の成年後見制度成立に伴い、医師法、弁護士法、会社法、国家公務員法など、180以上もの法律に欠格条項(資格を奪う)が設けられました。
ところが2018年には「欠格は差別的だ」とこの条項撤廃に向け一括法が成立したので、徐々に欠格条項は廃止され「個別審査」へと移行しています。
その欠格との境が「成年後見」と「保佐」相当です。
それに対し「
補助」相当の人はセーフなんです。つまり「正常」と同じ扱い。
専門家でも断定できないくらいだから、補助/保佐が分かれ目だなんて普通の人は知りません。

だから不動産業者もお父さんの常況を見て、あまり疑問を感じないで売買契約を仲介したのでしょう。
民法のどこにも、補助相当やMCI(アルツハイマー病による軽度認知障害)の人との契約は無効、などとは書いてありませんからね。
お父さんとの契約は”セーフ”である可能性が高いです

2017年6月に民法の大改正がありました(いわゆる「債権法の改正」)。
その中で重要な変更がありました。民法第3条に1つ項目が追加されたのです。
民法第3条の2 法律行為の当事者が意思表示をした時に意思能力を有しなかったときは、その法律行為は、無効とする。》
意思能力というと難しそうですが要するに、自分がしていることの法的な意味がわかっている、ということ。
お父さんが「今私は、土地を売ろうとしていて、その買い手と契約している」ということがわかっていればOKだということです。
そのことさえ分からない常況というのは、重度の認知症か意識喪失の状態ですね。
ご相談をお聞きしている限り、お父さんはそのような常況ではないようです。

お父さんを伴い、ほかの司法書士に当たってみてください。
会話してみれば、登記を請け負っていいか、危ないかは司法書士が見当を付けます。
その上で『いけそうだ』と思えば専門医への受診を勧め、「診断書を見て判断します」というでしょう。

土地を家族信託しておけば、安心

このケース、専門医を受信してMCIと診断されたり「認知症の初期段階」といわれた場合は、急いで家族信託を実効した方がいいでしょう。
お父さんに読み書き、会話や計算ができる今のうちに、「質問者」のあなたと信託契約を結ぶのです。
▼委託者兼受益者:父、▼受託者:あなた、▼信託財産:換価予定の不動産と金融資産)。
家族信託は契約行為なので、その成否はお父さんの事理弁識能力次第です。
家族信託する場合の意思能力判定4重のハードルです。
●1 契約書を作成する専門家の目(当然、委託者の常況を確認する)
●2 銀行の目(個人の預金を受託者が管理する口座に振込む必要がある)
●3 司法書士の目(信託財産に不動産が含まれる場合、所有権移転と信託の登記を行う)
●4 公証人の目(契約は公正証書で行なうので、公証人は契約書を委託者と受託者に読み聞かせ、理解力を確認する)

不動産の売買は大金が動きます。だから売り手=一般人、買い手=不動産業者だけ金銭の受け渡しはしません。
登記と同時にお金を渡すという方式。その場には銀行側の司法書士が立ち会います。
先に書いた民法第3条の2規定があるので、無効とならないよう業者も司法書士も銀行も契約者の意思能力に注意を払います。
緊張したお父さんでは心もとないですが、家族信託をしていれば契約当事者は受託者のTさんになります。

Tさんが受託者なら意思能力の問題はありませんから、売買交渉が長びいても心配はありません。
また買い手の業者も、相手の判断能力を危惧する必要がないので、契約の安全度は増すでしょう。

<初出:2019/1/28 最終更新:2023/10/29>

 

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この記事を書いた人

石川秀樹 行政書士

石川秀樹(ジャーナリスト/行政書士) ◆静岡県家族信託協会を主宰
◆61歳で行政書士試験に合格。新聞記者、編集者として多くの人たちと接してきた40年を活かし、高齢期の人や家族の声をくみ取っている。
◆家族信託は二刀流が信念。遺言や成年後見も問題解決のツールと考え、認知症➤凍結問題、相続・争族対策、事業の救済、親なき後問題などについて全国からの相談に答えている。
◆著書に『認知症の家族を守れるのはどっちだ!? 成年後見より家族信託』。
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