2022.01.07
《家族信託は全国対応しています》★信託の契約書作成とコンサルティング/受託者への支援
実家の父が認知症!? 心配だから家族信託をしたいけれど、近くに専門家が見つからない。どうしよう……。 こんな方、少なくないのでは? 誰に相...
2022.01.07
実家の父が認知症!? 心配だから家族信託をしたいけれど、近くに専門家が見つからない。どうしよう……。 こんな方、少なくないのでは? 誰に相...
もっと家族信託! 石川秀樹のブログです
「認知症だから成年後見」と思い込まないで! 老親の認知症問題で悩む家族に、この制度を勧めてはいけません。
ケアマネジャーさんたちを前に名古屋市で、『成年後見と家族信託はこんなに違う!』をお話ししてきました。
介護の現場にいるケアマネさんたちは「成年後見」のことは知っていても「家族信託」は聞いたことがある程度。
まじめで誠実な人ほど家族の不安や惨状に接すると、救いの手を差しのべるつもりで成年後見に導いてしまいます。
それでよい場合は少なく、大失敗になるケースが多々あるのです。
成年後見制度は、後見人になる専門職の考え方や性質に左右され、“後見被害”を生むことさえある仕組みです。
もうひとつ別の選択肢があることを知っていれば、後悔させないでも済んだかもしれない。
家族信託は、認知症で自信を失いかけている本人と家族を救ってくれるツールです。
成年後見の機能と冷静に比較してください。
間に合うなら家族信託を。最後まであなたらしく生きる老後が保障されます。しっかり用意した
(以下、長文ですがレジュメを公開します。下記の「目次」で見出しをタップ、興味がある個所だけでもお読みください)
Table of Contents
この「介護研修会」に呼んでくださってありがとうございます。
介護の現場にいらっしゃる方々、ケアマネジャーさんたちにお話しできる機会を初めていただきました。
私は<家族信託の専門家>ですが<成年後見制度>の専門家ではありません。
それなのにいただいたお題は「こんなに違う!家族信託と成年後見」。
私がここに呼ばれた理由は、ブログや私の著書で(最初の本は『認知症の家族を守れるのはどっちだ!? 成年後見より家族信託』)成年後見制度を強く批判してきたせいか、と思います。
ただ、家族信託の契約書を実際に認知症等でお困りの方のために書くようになって数年たった今は、成年後見制度を叩いてばかりではいけない、と思うようになりました。国が作った制度ですからね、という意味ではなく、この制度を使わないとどうしても救えない人たちがいることも切実に分かってきたからです。
独り身の高齢者でしかも認知機能が落ちてきた。身寄りなく、お金もなく、助けてくれる人もいない。
あるいは精神や知的障がいをもつ人。長年、親御さんが支え続けて、でも高齢になり先行きがまったく見通せない。幸いにも、きょうだい児といいますか、親の後を受けて障がいをもつ兄弟姉妹を懸命に支えてきた人も、こちらも高齢期に入って収入も限られたものになってくる。そうなると、『(きょうだいのことは)もういいのでは?(疲れてしまったよ)』と思う人も出てきます。
そんな時に、バトンを引き継いでくれる人、あるいは制度は「成年後見」しかありません。
みなさんはそういう現実を、生身の出来事として、接してきたのかもしれないと考えると、「家族信託というツールをもっと広げたい」という私の想いだけで、成年後見制度をたたきのめしてはいけない、とも考えるようになりました。
(いかんいかん、回りくどい。はじめにズバッと「結論」を話さなければ)
56枚もイラストを作ってきましたが、たぶん十分に説明しきれないと思いますので、はじめに今日の結論をお話ししておきます。
みなさんは私よりも数多く、認知症でお困りの本人やご家族に接していると思います。
ですからみなさんに、強くお願いしたいのです。
「認知症」と聞いたら「成年後見だ」と思い込まないでください。
認知症で、完全に自分のことも家族のこともわからないなら、やむなく「成年後見制度」を頼みにすることはあるかもしれない。
しかし、「財布がない」「通帳やカードを失くした」「朝、ご飯を食べたのにまた『食事はまだか?』」と言い立てる――程度のことなら、「家族信託契約ができる可能性」はまだ残っています。
ですからみなさんが「んっ、認知症⁉」と思ったときには、成年後見ではなく、《ご家族に、「家族信託のこと」を今すぐ教えてあげなければ》と思っていただきたいのです。
(もうひと押し!)
本人に成年後見人を付けてしまうと(家族であろうと弁護士や司法書士のような法律専門職であろうと)、「対策」めいたことはひとつもできなくなってしまいます。
相続対策はもちろん、自分が先に死んでしまったら後に残る配偶者を守るためにこうしてあげたい、子や孫のためにこんなことをしておきたい、という高齢者なら誰しも望むような「誰かのためにこうしたい」ということがほとんど全部、禁じられてしまうのです。
認知症問題は高齢になればなるほど深刻になってきます。
私も含め、生きていられる時間は少ないんです、高齢者は。その貴重な時間を、たかがお金なんかのために、自分の好きなようにすることができない。これは「痛恨だっ!!」と思うんですよ。
(これさえ先に言っておければ成功だ‼)
成年後見制度は、国(家庭裁判所)が後ろ盾になって本人の代理をする「代理人制度」です。
たかだか人のお金を引出し、預かるだけのことですが、「たかだか」と言ったって何しろお金のことだから、不正が起きないように、盗られないように、だまされないようにと「裁判所」という、最も信頼がおけそうで権威がある大きな機関を引っ張り出してきた。そしてこんなこともいう。
<後見人は、被後見人の財産を管理し、かつ、その財産に関する法律行為について被後見人を代表する(民法859条1項)=お金のことについては、「代理」どころか、あなたが「代表」だからね>という大きな権威を与えた。
でもこれを後見を受ける本人の立場から言えば、どれほど苦労し、努力して築いてきた富であっても、本人はなんにも触れられなくなる、自分の自由な意思で、使うことも、人にあげることもできなくなっちゃう、ということです。
本人でさえ触ることが許されないんだから、家族は何もできない。むしろ家族なんて、(公的な後見人たちからは)本人にまとわりつくたかり屋、あわよくば、かすめとって自分のものにしたい卑しい連中、くらいに思われてしまう。
お金のことで「法律専門職」が出て来ると、こういう感覚になってくるわけです。
善人はいっぱいいる。いや、家族の多くは本人のためを思っていろいろしてあげたいと願っている。もちろん中には、邪悪な人もいるでしょう。
しかし、ひとたび「法による管理」を持ち出せば、千に一つも不正は出さない、というところに努力するようになる。
法律家の責任として、そのように考えてしまうのは仕方ないかもしれない。
しかしこの辺は、家族の心情や想いとはまったく異なるベクトルですよね。
でも成年後見制度は、法的な観点から見ればそのように回しているから、知った上で、使うか使わないかを決めるしかない。
今私が話したようなことが不愉快に思うなら、ここは「家族信託という《もうひとつの方法》に頼ってみてはどうでしょう?」というのが、私の提案です。
成年後見制度は、「家庭裁判所がお墨付けを与え、裁判官が職権で後見人を選任する代理人制度」。
だから銀行で、本人に代わって大手を振って、<凍結された口座を解除させる>ことができる。
(さあ、ここからが家族信託の説明です)
それに対し、家族信託の受託者は、凍結された親Aの預金口座を、「私はAの長女のBです。この度、Aと家族信託契約を結び受託者になったので、凍結された父の口座を解除してください」などといっても、相手にされません。行員は首をかしげるばかりでしょう。
鋭い行員なら『そもそも認知症のAさんと娘のBさんは、契約なんてできるのだろうか』と思うかもしれません。
家族信託は、凍結された口座の解除についてはまったく無力です。
でも、「役に立たねぇー!」なんて思わないでください。
成年後見人は、財産管理については本人を代表しちゃうんだから(しかも国のお墨付きで)「凍結を解除してください。以後、この口座は成年後見人の私が管理します」と言える。銀行は拒否する理由がない。
家族信託の受託者には、そんな権利、1ミリもありません。(普通の家族に過ぎないですからね)
だから、先に手を打つんです。
親A(ここでは「大木太郎」と表記)が元気なうちに、娘B(ここでは「松田ダリア」と表記)がAと信託契約を結ぶ。
契約が成立したら、Aは自分の預金を引き出して、Bが管理する特別な口座=信託口(しんたくぐち)口座に振込む。
※このイラストでは父親の大木太郎さんは委託者兼受益者、娘松田ダリアさんが信託受託者です。
信託口口座の名義人は<大木太郎 信託受託者 松田ダリア>となります。
長々と委託者名と「信託受託者名」を表記することで、この口座は松田ダリアさんの個人口座ではないことを示しました。
明らかに太郎さんの口座から娘ダリアさんの口座に預金を移し替えているのに、税務署さえ「それって、贈与ですよね!」とは言いません。
なぜか。
信託契約書には、「松田ダリアは自分のためには1円も使わず、もっぱら父の大木太郎のためにこの預金を使う」と書いてあるからです。太郎さんは委託者で、大金をダリアさんの名がある特別な口座に振込んだけれど、ダリアさんはお金を管理してくれるだけで、口座のお金はすべて太郎さん自身に返ってくる。
名義だけ移したけれど、財産からの便益はなおも委託者のものになっている。これでは贈与になりません。
銀行としては、太郎さんが認知症になり判断力をまったく失っても、太郎さんのものだった預金はすでにダリアさんの名がついた信託口口座に移っているのだから、この口座を凍結するわけがありません。
成年後見制度では、凍結された口座を、本人(被後見人)に成り代わって簡単な手続きで解除してしまう。
一方、太郎さんとダリアさんが家族信託契約を結べば、そもそも「太郎さんの預金」そのものを別人であるダリアさんが管理する特別な口座(信託口口座)にすでに移してあるから、太郎さんが認知症になろうと何だろうと(しかも太郎さんはもはやA口座に触ることもないのだから)凍結とは無縁になる、というわけです。
太郎さんとダリアさんに信頼関係がある限り、太郎さんの指図で(太郎さんが意思能力を失くしたときには、契約書の「信託の目的」条項に沿って)ダリアさんは信託された預金を、太郎さんのために適正に使っていくでしょう。
たかがお金、されど大切な大切な虎の子のお金を、他人に丸ごと管理されて自分の思い通りにまったくならないようになるという、悲劇というか“老境において知る究極の理不尽”に遭わなくて済む、というわけです。
(ここまでがスライドショー以前の解説。後はスライドを一気に見せていこう)
私のヒットブログです。
https://kazokushintaku-shizuoka.net/how-to-use-an-adult-guardian/
初出 2017/2/7 6年半前 約100万人が読んでくれています。
成年後見をしたいと思った時、まず読んで、覚悟して使うか・使わないで何とか乗り切る策を検討するかを決めてください。
※上の写真をタップ(クリック)してもブログ記事が読めます。
「分断する」とは、すごい表現ですが。
たかだかお金の話なんです。
認知症 ➤ 意思能力がない = 判断力がない とみなされてしまう。
<買い物>だって契約です。意思能力がなければ
民法3条の2 法律行為の当事者が意思表示をした時に意思能力を有しなかったときは、その法律行為は、無効とする。
↑ いきなり「無効」だからね、これはキツイ。
では、認知症の人は買い物してはいけないのか。してますよ、普通に。毎日やってきたことは、アルツハイマー病の人でも、かなりできる。
「できる」と認めてあげなければ、人権じゅうりんだ!
でも銀行は、口座を凍結するようになった。 → 自分のお金なのに使えない!
一度止めてしまうと銀行は、本人がいっても、家族が交渉しても
「あなたが成年後見人になってください」の一点張り………なれますか? 家族が後見人に
今は19%しかなれない。
大事な大事なお金のことに、赤の他人が介入してくる。「認知症」という病気になっただけなのに。
突然、こんなことに巻き込まれる。
今の日本では、誰でもこんな目に遭う可能性がある。
確率 2分の1 。夫婦なら85歳以上になると、どちらかは認知症になる。
まだ若いと思っているから、ひとごとであってもしょうがない。
85歳なんて、僕だって経験してないからその人の気持ちはわからない。
でも、お金もない。年金暮らしの人が大半。そのお金が止められる。使えない。
銀行は「成年後見」「成年後見」……
今じゃ、銀行員やってるなら、家族がやすやすと後見人になれないことくらい知っている。いや、知ってなきゃあ、ウソだ。銀行が成年後見制度を使えという以上。
認知症になったらできなくなること、はこちらの記事▼▼▼をお読みください。
認知症を抱えて生きることは大変ですよ!
その通り。
あなたは、家族に代理してもらえばいい、と考えますか?
委任と代理。
「家族に代理を頼み、お金をひきだしてきてもらう」
これ、意思能力がまだある人の話ですよ。
しかし今、銀行は……意思能力があったって、こんな感じですよ。
銀行のフロアに、委任状なんか置いてないんです!
窓口に行って「委任状がないの?」と聞かなければならない。
認知症の人にそんなこと、聞けると思いますか?
委任状を実際に使う大変さ、を描いているのがこの10コマ目です。
家族が本人の委任状を持って銀行に行くでしょう?
「生活費として20万円おろそう」と。
窓口の行員はどうするか。
本人に電話をして、意思確認します。
電話は「本人の自宅」というより、契約時に書類に書いた電話番号に掛ける。
引越ししたのに届けなかった、本人が入院、施設に入所している……万事休すです。
「これが本人のスマホの番号です」なんて言っても、相手にされない。
こういう“常識”、そのような目に遭わなければ、知りようがありません。
預金がおろせない、定期預金の解約なんてまったくできない。
(高齢者に限って大金を定期預金にしているというのに)
貸金庫を開けるのも本人がボケたら開かずの扉。
経営が完全に止まる(成年後見人に“経営”なんて無理です!)
相続放棄ができない(放棄するために成年後見人だなんて)
(ここから仕組み図がたくさん出てきます)
家族が後見人になれるのは20%以下。
主に流動資産(お金や預貯金の額)で決まる。東京だと「500万円超」だと専門職が選ばれる。
家族が後見していても、相続でお金が入ったりすると、後見監督人が突然、付けられたり、成年後見支援信託(20万~30万円)を使えといわれたりする。
すべての財産を成年後見人が管理。
家族に報告しない。相談もしない。財産状況を見せろと要求しても開示されない。
任意後見は、本人が元気な時に契約する。判断力が落ちてきたら、任意後見監督人(弁護士か司法書士)の選任開始の審判をして、家裁が選任するとスタート。
いろいろ問題がある。
例えば―――
❶なかなか「任意後見契約」を発効しない → 遅れると成年後見に移行される恐れがあるというのに。
平成27年から令和元年までの5年間の任意後見契約の合計数は60,066件で、年間平均は12,013件です。
ところが、任意後見契約の発効数 年間700~800件 ※1.2%から1.3%
※せっかく契約したのに、任意後見をスタートさせない。この理由、わかりますか?
言うまでもなく、<委任代理契約>の方が使い勝手がいいからです。
実は、任意後見の実務では任意後見契約の前段階として、この契約を受任者と結ぶのが普通。
銀行は「ただの委任代理では本人口座からの引出は認めない」というところもありますが、こちらの契約も公正証書で作られるので信用して、家庭裁判所や任意後見監督人の“監視”の仕組みを待たずに、引出を認める銀行もあります。
そうなるとしめたもので、ずっと委任代理を続けたくなる。
“一種の抜け穴”ですが、本格的に委任者がボケたときには、家裁からいきなり成年後見への移行を審判されることもあります。
というわけで、かなり大きな問題含みです。
別の問題―――
❷任意後見人の交代が仕組みの中にない(長期の後見に不向き) → 任意後見人が死亡したりすると、思いがけず公的後見に切り替えられる
❸家裁と監督人が必置なので他人(弁護士・司法書士)の干渉は避けられない
❹任意後見をプロにお願いすると二重出費となり、成年後見より割高になる
任意後見人に管理してもらう財産は、特定の財産に絞れます。
家庭裁判所と任意後見監督人がいるので、家族信託のように“融通の利く管理”はすることができません。
10万円以上の出費は監督人に相談するとか、被任意後見人のお金で家族旅行をするなどのことは許されません。
(やっぱりキュークツな面は任意後見にはつきまといます)
家族信託は、家族の自治による親の財産の管理手法です。
家庭裁判所も監督人もいないので、今までの生活を変えずに老後を過ごすことができます。
本人の財産は、❶信託した財産と、❷信託していない財産に分かれる
(「年金受取口座」はその代表。年金は譲渡禁止のルールなので、直接信託できません)
❶の財産の承継は、信託契約の中であらかじめ書いておく(=つまり、家族信託は遺言として使え、しかも契約なので、本人のみで作成できる遺言より「もっと強力な約束」になります)
❷の信託していない財産は、本人が遺言を書いておくか、相続人全員による遺産分割協議を経て分割する。
この質問を受けることが、実に多くてため息が出ます。
14コマと16コマ。ちょっと見は、実によく似ているでしょう?
しかし仕組みは全然違う。家庭裁判所と信託監督人、二重の監視付きで重苦しい。
「契約能力があるのに、わざわざ成年後見制度を使いたいのですか?」と、逆にお尋ねたいくらい。
すでに相続人間の対立が明瞭な場合は、無理に家族信託に持って行こうとすると受託者が気の毒なことになるので(きょうだいにあらぬ誹謗中傷を受け、1つも得がない。苦労の甲斐がない)、その場合は家族信託をおすすめしませんが。
兄弟姉妹間に対立がある場合は、家族を任意後見人にするのなら、やはり私は任意後見に反対します。
士業の先生とよく話し合って、いっそ成年後見の方がいいのでは? とアドバイスしています。
(専門職後見人が初めから付けば、さすがに家族の横やりは完封できますからね)
さて、私の立場から見て本当に“困った人たち”は―――
金融業界や不動産業者が「成年後見制度を」というのはわかりますよね。
しかし、
• 地域包括支援センター
• 市区町村の福祉課
これ、本当に残念です。もっと行政の人は成年後見制度の現状を知ってほしい!
このうえ、ケアマネジャーさんたちまで“成年後見に誘う人”になってほしくはない。
本気でそう思います。
これはみなさんに関係します。
「家族の非協力」「頼れる家族がいない」 お金を徴収できない。
実際に、「めんどくさい家族」もいますからねぇ。
介護や医療の現場では「本人の意思確認」ができない。→ひとり身だとそうなりますね。家族が遠方にいて、代わりに払う気はない。→ このような場合に「成年後見人を」と思う気持ちはよくわかります。
負担が重い制度ですから(イラストに書いた通りです)
でも、❹病院や施設が本当に困っている場合は、市町村長後見もやむを得ないかもしれません
イラストに描いた通りです。
むしろ介護事業所にとっては、家族が間に入ってくれるのがベスト。
その「家族」と連絡が取れない → それで成年後見 → (分かります。でも)後悔する場合も多いですよ!
紙おむつ1枚使うにも成年後見人の許可が必要!? そんなこと言うやつに限って、事務所に電話してもつながった試しがない。
成年後見人が小役人のようになってしまうと、本当にやっかいです。
一覧表にした通りですが、私がいちばん腹立たしく思うのは、「成年後見制度」は一度後見人等が付けられたら、本人がどんな理不尽な目に遭っても、絶対に制度から離脱できないこと。こんな「制度」は、あってはならない。民法という古くからある日本に根付いた根幹の法律の下で“見えない牢獄”を作り、意思能力を失くした人を死ぬまで縛り付けるとは何たることか!
この運用は、存在してはいけない!!
グラフで一目瞭然ですが、士業による専門職後見人は増え続け、一方、2000年の成年後見制度発足時点ではほぼ9割を占めていた家族による後見人は一貫して減らされ続け、最新の令和4年統計ではわずか19.3%にまで落ちている。
家庭裁判所(それを指揮している最高裁判所民事総局)は、家族への信頼をやめてしまったようにさえ見える。
これほど家族は成年後見制度から遠ざけられているのに、ほとんどの人がその事実を知らない。
政治家もマスメディアも同様である。無関心なのだ。
見た通りですが、読みにくいですね。
ここは解説するより、私のブログ記事を読んでもらった方が早そうです。
主に、本人(成年被後見人)の所有する流動資産の額で決められています。
さらに、「家族が成年後見人にはなかなか選ばれません。私に任せてもらった方が……」という士業の本音が、専門職後見人を増やしているのかもしれません。
見出し家族信託をもう少し深掘り
ここまで結局、「成年後見」の比重が高かったので、家族信託の原理的な話を少ししてみたいと思います。
ちょっと31コマに進ませてください。
先ほど(この記事の冒頭部分で)大木太郎さんと娘の松田ダリアさんを引き合いに出して、「家族信託でなぜ、民法の委任と代理のようなことができるのか」を解説しました。
先に財産(預金)を口座から出して娘の名が入った通帳に振込んでしまうからだよ。財産の名義を娘の名に換えてしまったから、娘は“所有者”として預金の出し入れを自由に行えるようになるんだ、と解説しました。
この話は、「名義の云々」を除けば、父が娘に現金を渡し娘の口座に入金させる(あるいは、父が自ら娘の銀行口座に大金を振込んだ)ということです。
この父娘の行為をはたから見ていれば、まぎれもなく「贈与」と一緒です。
上のイラストでいえば、左から右に向かう太い赤色の矢印は「贈与」行為にも見えます。
だだ斜め左上を指す細い矢印があるので「もらったお金を一部返しているのか」というようにも見えます。
まさにその通りで、この「財産の持ち主に返す」という特殊な行為がなければ、信託は贈与そのものになってしまう。
「この“返還行為”を(信託が終了するまで)継続させる」ことを契約書に明記してあるので、この行為は「贈与」ではなく「信託だ」と認められました。
このような特異な行動は、何か印をつけなければうやむやにされそうなので、信託法では「名義を換える」という思い切った方法を採用しました。
名義変更の工夫の実践例は先ほど、記事の最初のイラスト「33コマ」でお見せした通りです。
不動産についても、実務ではうまく工夫しているので紹介しましょう。
不動産の登記事項証明書では「所有者」の情報を、権利部の左端「権利者その他の事項」で書いています。
登記原因が、売買・交換・相続・贈与の場合は、その不動産について権利がある人のことを「所有者」として住所・氏名を紹介しています。
ところが「信託」による所有権移転の場合は、書き方を変えます。
登記原因は「信託」。
権利者欄には<受託者 (住所) 松田ダリア>と表記されます。
さらにその下の段落では、「信託財産目録第▼▼号」として表記を追加し、別枠でデカデカと「信託目録」を載せているのです。
このようなお話をしたのは、誰しも自分の資産を第三者に預けることには不安や疑いが生じがちだからです。
たとえ信じて託す相手が、信頼する息子や娘であっても、“絶対的な安心”は得たいものです。
ましてや信託は、相手に管理・処分権限を付与するために、所有権の証明である「名義」をわざわざ相手の名に換えているのですから。
見える形で財産を手離す委託者に「安心ですよ、特別に預けただけ」と示したものと思われます。
家族信託の実際例を話していませんでした。
これから説明するのは「老後の夫婦を守る受益者連続信託」というものです。
研修会の冒頭でお話ししたように、85歳を過ぎれば認知症になる確率は50%です。
長生き夫婦のどちらかは認知症になっても不思議ではありません。
そういう時代背景の中、老夫婦のための連続信託は典型的な家族信託の形といってよいでしょう。
委託者は父親のS、受益者は当初はS自身、Sが死亡したら妻Rが2番目の受益者となりSがのこした信託財産からの受益を得ることとします。
Sは87歳の今も心身とも良好です。しかし妻Rに認知症の傾向が出てきているため、Sは「妻に相続しても何もできなくなる」と心配でなりません。
それであえて自分を委託者にして財産を信託して、妻が受益権を引き継いだ時には娘にお金の管理をしてもらおうと考えたのです。
信託財産の管理・処分を委ねるのは長女T。受益者を守るためにTの行動をチェックする役目は弟(長男)Bが受益者代理人になって引き受けます。
SとTが署名捺印して家族信託契約が発効したら、Sは預金を引き出し(あるいはあらかじめ用意した現金)をTが管理することになる信託口口座に振込みます。
また自宅不動産も信託するので、受託者Tと共に司法書士に依頼して所有権移転と信託の登記をしてもらいます。
このように「信託財産」を作るときにはS自身も行動しなければならないので、Sの意思能力が確かでなければなりません。
(判断能力が落ちている場合、信託を実際にスタートさせること自体が“大仕事”になってしまいます。)
信託した財産の名義が「S」から「Sの信託受託者T」に換わるのは先に解説した通りです。
Sは今のところ元気ですが、信託以降、預金の引き出しはTに任せ、毎月届けてもらうようにしています。
Tはこれまで以上に両親の暮しぶりに関心を持つようになりましたが、お金をSに渡した以降のお金の使い方には口出ししないようにしています。
委託者のSが亡くなります。
この信託の受益権は妻Rに移りますが、信託財産の管理(=毎月、定額を給付すること)はTが引き続き行います。
ここでちょっと注意が必要です。
信託は終了しない、相続手続きは発生する
今回の事例のように、当初受益者の他に受益者の死亡後に新たな受益権を得る人がいる場合は、委託者が死亡しても信託は終了しません。
受託者は、次の受益者のために残余の信託財産を給付し続けます。
一方、ここはすごくわかりにくいのですが、委託者が死亡した場合、当然にその委託者の相続手続きは行なわなければなりません。
信託財産を含め、その人の全財産が相続の対象財産となるからです。
信託財産も、Sの遺産の一部であり、「相続の対象財産」になります。
家族信託をしたからといって、信託財産が相続対象から外れるわけではありません。
税務署は、「妻Rは夫Sから残余の信託財産(信託口口座の預金残高と自宅不動産)を全部相続した」とみなします。
※受益の割合は契約で指定するので、例えば自宅を妻と子で共有する形で受益を受けることも可能です。その場合は、子も第2受益者として指定しておきます。
この事例では、Sは遺言を書いておいた方がいい
父Sが信託しなかった財産(例えば、信託に組み入れなかった預金や金地金など)は、Sが遺言を書けば遺言で、遺言がない場合は相続人全員(RとT、B)の遺産分割協議により、分け方を決めます。遺産分割協議は相続人全員が一致しなければ結論を出せないので、Rの意思・判断能力はここでも問題になります。認知症が進んでいたりすると遺産分割協議自体ができなくなります。
そのような最悪事態を避けるよう、この事例でSは、信託契約を結ぶのと並行して遺言を書き、信託していない財産すべての相続指定をしておくべきです。
父Sが生きていた頃、受託者のTはS夫婦のために信託財産から毎月、定期給付してきました。
父の死亡後は、残っている信託金融資産からRの生活費や療養看護費等に支出してきたので、当初と比べると信託口口座の預金はだいぶ目減りが目立つようになってきました。
母の認知症は深刻になり、自宅でひとり暮らしを続けるのはむずかしくなりました。
そこで受託者Tと受益者代理人の弟Bが相談して、Rを介護施設に入所してもらうことにしました。入居一時金が高額であったことと、月々の費用もかなり高額であるため、ふたりは父と母が暮らした実家を売却して資金を得ることにしました。
自宅売却は、受託者Tが不動産会社と交渉し金額も決め、契約書に署名して実印を押しました。つまりTは純然たる不動産の所有者として行動しているわけです。
(なお念のため言い添えますが、不動産の受益権は父から母に移っていますが、登記上の「権利者欄」の表記は<受託者 T>で変わりません。受益者の変更は、「信託目録の中で表記される」のみです)
実家は元々信託財産になっているので、売却で得た金銭は、信託財産として信託内に組み込まれ、受託者Tが今までと同様に管理することになります。
このイラスト、実は信託の重要なメリットを表す非常に重要な説明図です。
写真説明に書いたように「信託した財産は、父の死亡により母が継承し、母の死亡により子2人が取得する」ことになります。
何がすごいかって、民法の遺言では決して指定することができなかった「母死亡後の2次相続のこと」まで信託契約で決めている、ということです。
信託財産の形が変わっても、相続に影響なし
父が死亡した1次相続では、母Rが受益権の全部を得ました(契約書通りです)。
娘Tは受託者として第2受益者の母Rのために財産管理を行い、かつ「Sらの自宅売却」という大仕事もやっています。
自宅はお金に変わり(財産の形態がまったく変わった!!)、このお金も信託財産に組み込んでTは財産管理を続けました。
そして第2受益者のRが亡くなります(いわゆる2次相続の発生)。
Tはあわてることなく、契約書に示されている通りに信託財産として残っている信託金融資産を、姉弟に折半で給付します。
つまり信託契約を結んでおくと、
➀1次相続も2次相続も、契約書で決めた通りの相続を実現できる。
②財産の形態が「不動産」から「お金」に変わっても、問題なく相続の対象財産とすることができる。
※Rの元々の財産は信託に組み込まれていませんから、姉弟で遺産分割協議を行い分けることになります。
家族信託をしたおかげで父Sは、夫なき後の妻の老後を自分が遺した財産と、受託者Tを生み出したことで守ることができ、しかも姉弟が争わないように、2次相続における分け方まで指定して「理想的な相続」を実現することができたのです。
これが、信託のみができる離れ業です。
一般論ですが、ご注意あれ!
父親は、生前の子たち(兄弟姉妹)の姿しか見ていないので、「うちは仲がいいから、相続のために何もしなくても大丈夫」と思いがち。
でも父親がいない相続って、当たり前のことですが
<母親と子とは、夫の遺産をめぐっては“利益相反する”間柄>なんですよ!
法定相続分は「強行規定」ではないので、相続人が一致すればどのように分けても構わないですが、「遺留分」については「相続人の権利」と認められてしまったので、裁判を起こされたら「負け」です。
父親がいないと「黙ってろっ!」と一喝できる人がいないので、母親が気弱だと泣きを見ることになりかねません。
草葉の陰で気がついたって遅い!!
あなたが生きているうちに、自分なき後の設計図を描き、ストーリーに乗っけなければなりません。
そのシナリオを書くツールとして最強なのは家族信託。遺言ではありません。
成年後見制度を間違ってあなたの生前に組み込むと、せっかく書いたシナリオも台なし。
遺言は、吹き飛ばされてしまう恐れもあります。
適切な時期に家族信託を組み込んでおけば、そもそも成年後見に頼む必要なし。
心して妻を守り、子らをリードして、よい相続を実現してください。
<初出:2023/9/11>
あなたの家でお悩みの問題をお聴かせください。
成年後見制度に委ねるより、家族信託という手法を使う方が悩み解消につながるかもしれません。
家族信託は委託者と受託者の契約ですから、すべての事案でオーダーメイドの対策を講じることができます。
成年後見人は意思能力を失った本人の代理なので、将来へ向けての「対策」は一切できないのです。
家族信託なら財産管理から相続対策のことまで、契約の中に盛り込むことができます。
《このようにしたい》という想いがあれば、受託者に動いてもらえます。
実際にあなたはどのような問題を解決したいですか?
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石川秀樹が専門家としてご家族にとって最良の解決方法を考え、お答えします。
※異変に気づいたらすぐにご相談ください。相談は無料です。
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