★こんなにある!認知症になるとできなくなること。自己決定権を奪い、その“災厄”が家族を巻き込む

家族信託

認知症になるとできなくなることがたくさんある。 時にそれは、あなたの命をおびやかし、家族に大きな負担をかけることになる。 しかし、多くの人が気づいていない。 自分とは関係がない、と思っているし、“怖れ”を少しも感じていない。 若い人や、老いても健康な人がそう思っているなら、それはそれで仕方ない。 しかし75歳を越えた親がいる人、そしてすでに“高齢者”の仲間入りをしている人は、 認知症になったら自分に、あるいは家族にどういう影響が出るか、を知っているべきだ。 認知症になりあなたに公的後見人が付くと、あなたの自己決定権は奪われてしまう。 成年後見制度に取り込まれると、 人間であることの証左といってもいい「自分のことは自分で決める」が、まったく通らなくなること、 これはとてつもなく重大な喪失だ。 認知症は、自分の「人間らしさ」を殺す! 認知症になると、コレができなくなる。 1つひとつの項目を、目をそむけずに見てほしい。

 

認知症になるとできなくなること

定期の解約/ローンも組めない

銀行

  • 預貯金に関する取引(預貯金の管理、振込み・払戻し/口座の開設・変更・解約)⇒ 「キャッシュカードがあり暗証番号を知っていれば、当面は何とかなる」というのは甘い。なぜなら100万円超の「定期預金」は、カードでおろせないし、代理人では解約できないから。高齢者の大半は、定期預金が大好きで、大きなお金はほぼ確実に定期預金にしている。とても危険だ。自分のお金を使えずに、あなたは生きていけないはずだ。
  • 貸金庫取引 ⇒ 貸金庫を借りることができない、というより、借りて、使っている最中にあなたが認知症になると、大きな問題が起きてくる。本人以外の人がいくら要請しても、貸金庫は開けられなくなるからだ。(預金通帳やキャッシュカード、実印、不動産の権利証(登記識別情報)、宝石・貴金属など“大切なもの”に限って、あなたは貸金庫に入れてしまう。家族はお手上げだ)
  • 保護預かり取引 ⇒ 銀行や証券会社などの金融機関で購入した有価証券の本券を預けておくこと。つまり、銀行や証券会社で株式や債券、投資信託などを売買できなくなる。
  • 融資取引 ⇒ 銀行から融資を受けられない。借入、ローンが組めなくなる。不動産オーナーは、稼働率アップの施策を講じられなくなる。
  • 保証取引 ⇒ 連帯保証人を立てなければならない取引は行えない。
  • 担保提供取引 ⇒ 住宅ローンなどの各種ローンや借入など、担保提供を必要とする一切の取引ができなくなる
  • 為替取引 ⇒ 振込や口座振替ができなくなる。
  • 信託取引 ⇒ 金銭・有価証券・不動産などを銀行に預けて運用してもらうことができなくなる。

【生命保険】

  • 保険契約の締結・変更・解除/保険金の受取 ⇒ 認知症になると保険に入れない。あなたが受取人である保険の、死亡保険金も受け取れない。 日本の高齢者は保険が大好きだ。老後のためにとせっかく貯めてきたお金を、生保や銀行、証券会社にすすめられて、運用利益を得ようと生命保険に回してしまう。いざ自分のためにお金が必要になった時、解約もできないなんて。“保険の掛け過ぎ”を家族らが指摘しても、変更、解約は認知症になっていればできない。 また受取人が配偶者である場合、配偶者の認知症が進んでいると「この人のために」と掛けていたのに、保険金が受け取れない。注意したいところだ。

株式取引が止まらない

【証券】

  • 株券等の保護預かりに関する取引 ⇒(銀行の項で書いたように)株式や債券、投資信託などを売買できなくなる。有価証券はずっと変動し続ける(運転士なしの列車に乗っているみたいだ)。

【年金等/定期的な収入の受領や費用支払いに関すること】

  • 家賃・地代・年金・障害手当金その他の社会保障給付などの受領及びこれに関する諸手続き ⇒ 公的年金は金融機関に振込まれるから問題ないと思えるが、年金を受け取るには需給のための手続きをしなければならない。これは認知症になると至難の業となる。 第一、通帳に振込まれた年金を、誰が引き出すというのだろう。
  • 家賃・地代・公共料金・保険料・ローンの返済金などの支出及びこれに関する諸手続き ⇒ 支払うのもけっこう難儀だ。督促状はしきりに届けられるが、一切(本人に見られることなく、ゴミの山に埋まっている。税金などの滞納だと、いずれ裁判所から競売開始の手紙が舞い込むことにも。でもその意味さえわからない本人は……)。

家が売れない、改修もできない

【不動産】

[自宅]
  • 新築・建替え・大幅修繕・改築・部屋のメンテナンス(請負契約の締結・変更・解除)=すべて「契約」が伴うから、オーナーが認知症になっていると何もできない。この苦境は、もちろん「収益不動産」でも同じ。というより、いっそう深刻だろう。
  • 売却や賃貸 所有者が認知症になると自宅は売れない。 これは、不動産が共有されている場合はもっと深刻だ。ほんの数パーセントの持分を持っている人の認知症でも、その不動産は売れなくなる(共有不動産の処分は、共有者全員の意思判断能力が健在でなければ、買主と契約できないし、司法書士に登記を依頼しても断られてしまう)=収益不動産でも同じ
入居者対策がストップ
[収益不動産]
  • 入居者との賃貸借契約の締結・変更(更新)・解除 ⇒ 新規の入居者を確保できなくなる。
  • 資金の借入/担保権の設定/登記/借地契約の締結・変更・解除/借家契約の締結・変更・解除 ⇒ 入居者を確保するために建替えたりメンテナンス、補修をしたくてもできない。借入も登記もできない。
  • 不動産の贈与(名義書き換え) ⇒ 不動産の名義書き換えは、書類1つでできるわけではない。売却か相続か、あるいは贈与という事実がなければ、不動産の名義は換わらない。不動産オーナーが高齢になり、子らに代替わりしたいと思ったら、まず贈与を考えるのではないだろうか。しかし「贈与」は、双方の意思が一致しなければできない。ではオーナーの意思は? 認知症で、確認できない。となると贈与は成立せず、言葉巧みに司法書士に登記させようとしても、司法書士がオーナーの様子を見れば、登記事務を決して引き受けないだろう。オーナーが認知症になると、代替わりしたくても、それは不可能だ

認知症になるとできなくなることは、財産管理だけではない。 以下の事がらができなくなることは、財産管理と同様に“致命的”である。

 

経営が完全に止まる

[経営に関すること]

  • 経営判断 ⇒ (この項はオーナー社長を想定する)認知症が深刻化すれば、もちろん経営判断という「高度な仕事」はできなくなる。社長決裁ができない。
  • 株主権の行使 ⇒ 前段のことと同じことを意味する。会社の最終的な方向性を確定するには株主総会での承認が必要だが、自社株式の大半を持つオーナー社長が認知症になると議決権を行使できない。つまりオーナー社長がボケると経営は止まる。
    • (この点に関してはもう少し書き加えたいので、いずれ新しい記事を書きたい)

遺産分割/放棄もできない

【相続に関すること】

  • 遺言書を書くこと ⇒ 成年被後見人でも一時的に回復したときは、条件付きで可能となる(民法973条)が、実際には難しい。
  • 贈与の実行 ⇒ 贈与は送る側の意思と、もらう側の意思が一致しないと成立しない。認知症が深刻だと贈与は無理だ。
  • 遺産分割または相続の承認/放棄 ⇒ 認知症が深刻だと遺産分割協議に参加できない。これは本人も困るが、実は家族(他の相続人)の方がもっと困ったことになるだろう。なぜなら、遺産分割は「相続人全員の一致」が決まり。1人でも不参加となると遺産の分配が宙に浮く。成年後見の申立てを強いられることになりかねない。 マイナスの財産があった場合の相続放棄にも認知症の影響は重大だ。認知症の本人は、相続放棄もできない。放棄の意思を家庭裁判所で申述しなければならないから、無理なのだ。家族は悩むだろう。まさか認知症の人にマイナスの遺産をひとり負わせられない。となればここでも家族の申立てで、本人に対して後見人等の選任をしてもらうしかない。
  • 贈与もしくは遺贈の拒絶、または負担付の贈与もしくは遺贈の受諾 ⇒ 放棄以上に高度な判断力を要する。
  • 寄与分を定める申立て ⇒ 遺産分割で考慮してもらいたいことを主張できない。
  • 遺留分侵害額の申立て ⇒ 遺言で不利な相続になっても、権利を主張することさえできない。知らないまま泣き寝入りになるか、本人のことを思いやる家族の手で後見人等の申立てをすることになるか、どちらかだ。

◎使いづらい成年後見制度

しかし申立てしようと思っても、現行の成年後見制度をよく知っている人は、申立をちゅうちょするだろう。 「遺産分割」でも「相続放棄」でも「寄与分申立て」でも、そして「遺留分申立て」でも、公的後見人を立てるということは、本人が亡くなるまで後見は続く、ということを意味するからだ。 所期の目的を達成すれば後見人は退場、というなら使い勝手のよい制度だが—— 日本の成年後見制度は、本人が亡くなるまで「後見人のお世話になる」という制度だ。 自分の財産の使い方、医療・介護施設の選択などを、自分で決められない(自分代わりに家族が決めることもできない)状態が一生続く。 そういう状態で生きていく(活かされていく)ことを意味する制度だからだ。

【医療に関すること】

    • 医療契約の締結・変更・解除及び費用の支払い ⇒ 手術も医療側との契約。したがって本人の認知症が深刻なら、手術への「同意」が成立しない。 ※よく誤解されているが、成年後見人等も手術の同意権を有してはいない。家族も同様だ。しかし医師は家族に同意を求め、家族がいなければ後見人等に可否を求める。元気なうちに「自分の意思を書いておく」ことが大事だ。
    • 病院への入院に関する契約の締結・変更・解除及び費用の支払い

【介護契約その他の福祉サービス利用契約等に関する事項】

  • 介護契約(介護保険制度における介護サービスの利用契約、ヘルパー・家事援助者等の派遣契約等を含む)の締結・変更・解除及び費用の支払い
  • 要介護認定の申請及び認定に関する承認又は異議申立て
  • 介護契約以外の福祉サービスの利用契約の締結・変更・解除及び費用の支払
  • 福祉関係施設への入所に関する契約(有料老人ホームの入居契約等を含む。)の締結・変更・解除及び費用の支払い
  • 福祉関係の措置(施設入所措置等を含む。)の申請及び決定に関する異議申立て

成年後見ではカバーしきれない

◇この記事は、「任意後見の代理権目録」;任意後見契約に関する法律第3条の規定による証書の様式に関する法務省令(附録第1号様式)を参考にした。 だから、ここに書いた「本人にできないこと」は、おおむね成年後見制度(成年後見人・保佐人・補助人・任意後見人)を使えば「何とかできる」という範囲を示している、とされている。

 

法曹関係者はそう思っているし、そのように「成年後見」を印象付けているが、実務家の私から見ると、それは事実とは違っている。 「できる」とされている多くのことが、成年後見制度を使っても(この限られた範囲のことでさえ)「すべてできる」とはいいがたい。 上記の項目のうち、成年後見人を付けてもできないことを、黄色のマーカーを付けて示しておいた。 深刻に、「これはできない!」と警告すべき項目については赤系のマーカーを付けて警告した。 (今回は「成年後見でもできないこと」の解説は控えた。いずれ別記事で紹介したい)

 

“光”を求めるなら家族信託

成年後見制度は「万能」どころか、あくまで緊急避難であり、認知症の人本人が生きるための最低限のことをカバーするにすぎない。逆に後見人等がつくことにより、人間にとって何より大切な「(自分のことは自分で決める、という自己決定権」を奪われてしまうことを、覚えておいてほしい。

 

成年後見とは別の発想から生まれた財産管理法である「家族信託」なら、マーカーをつけた項目のうち財産管理については、受託者を通して大半が行えるようになる。 株式や不動産の売買が行えるし、ローンを組み、担保を提供することもできる。 さらに、委託者に代わって、経営そのものもできることは、成年後見をはるかに凌駕する家族信託の利点だ。

 

<最終更新:2022/11/3>

静岡県家族信託協会
行政書士 石川秀樹(ジャーナリスト)

 

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この記事を書いた人

石川秀樹 行政書士

石川秀樹(ジャーナリスト/行政書士) ◆静岡県家族信託協会を主宰
◆61歳で行政書士試験に合格。新聞記者、編集者として多くの人たちと接してきた40年を活かし、高齢期の人や家族の声をくみ取っている。
◆家族信託は二刀流が信念。遺言や成年後見も問題解決のツールと考え、認知症➤凍結問題、相続・争族対策、事業の救済、親なき後問題などについて全国からの相談に答えている。
◆著書に『認知症の家族を守れるのはどっちだ!? 成年後見より家族信託』。
◆近著『家族信託はこう使え 認知症と相続 長寿社会の難問解決』。
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