★家族信託で親の預金をどう渡す? 受託者が遠くに住んでいても大丈夫、自立支援事業があります!

家族信託

全国の社会福祉協議会が行なっている「日常生活自立支援事業」をご存知ですか?
このサイトをお読みの方にはほとんどなじみがないかもしれません。
でも、老後の財産管理に役立つ家族信託成年後見に次ぐ「第3の道」になるツールかもしれません。

預金を引出し自宅まで届けてくれるサービス

日常生活自立支援事業は簡単にいうと、判断能力が不十分な人でも地域社会で自立した生活が送れるように、福祉サービスの利用を援助する仕組みです。私が書いてきたテーマとつながるサービスとしては、利用者の預金を銀行でおろし自宅まで届けてくれるサービスがあります。

このサービスの対象者は、認知機能が落ちてきた人知的障害者精神障害者などの人、ただし契約能力が残存している人、ということになります。「契約云々」とは微妙な書き方ですが、成年後見制度との兼ね合いを考慮しての表現でしょう。後見制度の3類型でいえば、成年後見相当ほど判断能力が落ちてはいないけれど、補助または保佐相当でできれば公的な支援をお願いしたい人、ということになりそうです。

後見・知的障害と書くと、「ああ、福祉系のサービスね。うちとは関係ない」と無関心になる人がいそうですが、その結論はちょっと待ってください。家族信託を側面支援してくれるのではないかと期待したいツールなんです。

委託者の代わりに生活支援員が銀行窓口に

私はこれまで、「家族信託でいちばんむずかしいのは、信託財産として金融資産を用意すること、そしてそれを受託者が管理する口座に入金すること」と書いてきました。その次に問題なのは、体力や認知機能が衰えた高齢者が、毎月定期的に自分の口座に振り込まれる生活費等のお金をどのようにおろすのかです。同居親族がいれば問題ありません(代理人カードを使えばいいですから)。
信託の受託者が同居していればもっと理想的ですよね。

しかし家族信託では、受託者は別世帯をもっており、しかも遠方にいる、という場合がとても多いです。
そもそも銀行でのやりとりを敬遠して信託したくなるわけです。それなのに必要なお金は委託者の既存の口座に送金では、それをどうやって引き出すのか、という話です。そこでピンときたのが、この事業でした。対象者に認知症高齢者が入っています。しかも《認知症(に近い状態)だけれども契約能力はまだある人》、まさに認知症対策のために行う家族信託の委託者像とピタリと重なります。

静岡市の社会福祉協議会で取材しました

この事業の担い手は、全国1401か所の基幹的社協等にいる3,194人の専門員と15,905人の生活支援員です。(平成30年度末)。
専門員は、本人や家族と面談して「受けたいサービス内容」を聴取します。また本人に契約締結能力があるかも確認し、疑義がある場合は審査会で検討して受任できるかを判断します。
また専門員は、家族や成年後見制度等との関係も調整。
その後、支援計画を作成して契約締結を行うのです。

支援員の指導を行うのも専門員です。
支援員は実働者であり、専門員の指導を受けながら具体的なサービス(援助)を提供することになります。

全国の社会福祉協議会が提供する日常生活自立支援事業

全国の社会福祉協議会が提供する日常生活自立支援事業

ちなみに静岡市を活動エリアとする静岡市社会福祉協議会の専門員は10人。支援員が4人、登録パートも10人います。現在このサービスを利用している人は市内の420人とのことでした。
私は、取材する前には「この制度、銀行の協力を得られない場合もあるそうだし、あまり利用されていないのだろうな(事前に見た銀行系のアンケートでは「対応している」が半分程度でしたから)」と思っていました。だから利用者は「多くても数十人くらいか」と思っていたので、「以前は500人以上が利用していた」と聞いて驚きました。
成年後見制度の全類型の利用者数は静岡県全域で2500人足らずです。
それに比べて自立支援事業は静岡市だけで400~500人ですからね。
私が気にしていた銀行の対応も、「静岡市内の全金融機関が、支援員による代理引出に応じています」というのですから、この事業はかなり定着しています。

支援員は依頼者に預金を手渡し、見守りも

上のイラストをご覧ください。
依頼者の銀行預金を代理引き出しする例です。
契約が決まると社協は銀行に、代理する支援員の氏名を届け出ます。
❶利用者から引出依頼が入ると、❷生活支援員は社協で社協代表印を押した払戻票と通帳・印鑑を受け取り、❸銀行の窓口に行って払出を受けます。❹利用者宅を訪ねて現金を渡し、受領書に本人の署名をもらう――という段取り。引出1回にかかるコストは1,000円(事業の年会費は3,000円)です。

自立支援事業は後見・信託と隣り合う第3の道

支援員はこんなこともやってくれます。
預金の払い出しについては、気まぐれに何回もということではなく、専門員と支援計画を立てるときに、おおまかに出金項目はリストアップされます。
このほか▼福祉サービスを利用、またはやめるために必要な手続き▼住宅改良、▼居宅の賃貸、▼日常生活上の消費契約や▼住民票の届出など行政手続きに関する援助などもしてくれます。

社会福祉協議会は、日常生活自立支援事業以外にも、在宅の高齢者や障害者を訪問して直接サービスを提供するホームヘルプサービスや入浴サービス、昼間に在宅の高齢者や障害者を受け入れて、入浴やレクリ エーション、リハビリテーションなどのサービスを提供するデイサービス、在宅介護サービスのコーディネートや家族への介護指導を行う在宅介護支援セン ター、在宅で医療的なケアが必要な高齢者や障害者を訪問して看護を行う訪問看護ステーションなど、さまざまな事業を行っています。

このように社協が行なう日常生活自立支援事業は、家族信託の受託者の事務とも成年後見人等の後見事務とも違う“第3の支援事業”といってもいい。利用者の条件も<意思・判断能力は少し欠けているが、ないとは言えない人>であり、この点は家族信託の委託者=受益者はまさに対象になりそう。

認知機能が落ちつつある親の様子は気にかかりますが、毎月のように帰省するのもままならないという人も多いのではないでしょうか。
「社協の自立支援事業を活用できるのでは?」というのは私の直感でした。
日ごろ親の生活を目配りできない人にとっては、自立支援事業を利用するのをきっかけに介護や福祉関係の助言をもらえるよい機会になると思います。

支援事業は、「成年後見と直結」ではない

『自立支援事業を利用すると、最後は成年後見制度の利用を促されるのではないか?』と心配する人もいるかもしれませんね。
実は私もそう考えました。
「預金を引き出して自宅で渡してくれるのはありがたい。見守りにもなるし」と思う半面、「成年後見相当にまで認知機能が衰えたら公的後見を受けないとサービスを継続してくれないかも」と。
その時は、さすがに「自宅」→「介護施設等」に入所する機会に誘導されてしまうだろうな・・・。
それで専門員の方に尋ねました。

親の状態を専門員は熟知しています。
独り暮らしはむずかしくなった、さすがに施設に入った方がいいと判断した場合、
「入所手続きは成年後見人にお願いしてください、と言いますか?」
余計な気を回されると、せっかく自立生活支援事業を使ったのに、それが成年後見への呼び水になってしまう・・・。

すると専門員は、「(手続きは)ご家族がやられたらいいと思います。私たちは継続的に月1回程度、施設を訪問してご様子を確認させてもらいますから」と答えてくれました。
「? ? ?」
言葉の意味がとっさには分かりにくかったので首を傾げたところ、
「在宅の場合はいろいろ訪問の機会がありますが、施設に入ると会える機会が減るので支援員が定期訪問します」という意味でした。
『よかった。社協とは末永くつながっているんだ。公的後見と交代、ということではないらしいですね』
と安どした次第です。

家族信託をしたいけど、受託者は遠くに住んでいる。それでも信託できるだろうか??
と悩んでいるご家族は、一度地域の社会福祉協議会を訪ね、いろいろ相談に乗ってもらうといいと思います。
遠方にいる受託者がお金の管理をしている場合、家族だけで完結しなければと思い詰めず、地域に根を張って活動している社会福祉協議会は老後の親の福祉を考える場合、得難いリソースの一つだと思います。

支援員は、生活費を銀行でおろして自宅にまで届けてくれる。
委託者と必ず会って手渡ししてくれますから、見守り役も果たしてくれる
社会福祉協議会は基本、弱い者を支援しようとして活動している組織です。
私は家族信託と連携できて《おすすめできる》と思いました。

(初出:2024/5/17)

静岡県家族信託協会
静岡県遺言普及協会

行政書士 石川秀樹(ジャーナリスト)

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この記事を書いた人

石川秀樹 行政書士

石川秀樹(ジャーナリスト/行政書士) ◆静岡県家族信託協会を主宰
◆61歳で行政書士試験に合格。新聞記者、編集者として多くの人たちと接してきた40年を活かし、高齢期の人や家族の声をくみ取っている。
◆家族信託は二刀流が信念。遺言や成年後見も問題解決のツールと考え、認知症➤凍結問題、相続・争族対策、事業の救済、親なき後問題などについて全国からの相談に答えている。
◆著書に『認知症の家族を守れるのはどっちだ!? 成年後見より家族信託』。
◆近著『家族信託はこう使え 認知症と相続 長寿社会の難問解決』。
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