★節税ばかにならないで!相続税は高くない。 遺産1億でも実効税率は4%弱

遺言相続

庶民にとって、「相続税」は高くありません
だからあなたが節税ばかになる必要はありません。
相続税が高いと思うばかりに、やらなくてもいい「節税対策」をして、後悔する人がとても多いです。
相続税の速算表を見ると、確かに「6億円超から最高税率55%」。
「遺産が6億円あったら3億円以上も税金に持っていかれちゃうの⁉」と大騒ぎする人がいます。
ウソです。そういうことにはなりません。
皆さんからの相談をお受けすると、あまりにこの手の誤解が多いのです。
相続税の仕組みはややこしく、相続税の計算法も2段構えでとっつきにくいですが、やさしく解説します。
遺産1億円で、こった節税対策をしなくても、実効税率を数パーセントに抑えることは可能です。
どうか素人考えで、無謀で危険な節税対策に走る節税ばかにはならないでください。

 

◎遺産1億円、1次+2次相続で実効税率は3.95%!

まずこの数字を見てください。
正味の遺産額が6億円までの1次相続(配偶者と子2人が相続人)と2次相続(子2人)にかかった相続税額表です。

※「2次相続」の相続金額は「1次相続で配偶者が得た額」、つまり1次相続の半分の額の資産を相続したとして計算してあります。

相続税の実効税率

黄色の枠の数字は「正味の遺産額」を示しています。
妻と2人の子で法定相続分で分けています。妻1/2、子1/4を2人分ですね。
2次相続では「正味の遺産額」は1次の半分、それを子2人で折半します。
※表内の数字の単位は「万円」。実効税率の下の「%」は相続税率(ただし控除額は省きました)。

「実効税率」だけザッと見てください。
正味の遺産額5000万円では1次、2次合わせて10万円、実効税率0.2%にすぎません。
1億円なら4%弱、6億円でも実効税率は26%。
2回の相続を経てこの数字ですよ!
相続税は決して高くはありません

なぜこんなに税額が少ないのでしょうか?
理由を順に説明します。

6億円超の実効税率も示しておきましょう。

「配偶者の税額軽減は税率を下げる2

正味の遺産額10億円で実効税率33%。
50億円でも50%に届いていません。
資産10億円程度までなら、何の対策をしていなくても(相続税として)財産の3分の1程度を納めればよいのです。

”酷税”のように言われながら、この実効税率はかなりユルユル、「高くない」と私は思います。
何も「対策」しなくてもこの数字ですから、適切な節税策を行えばもっと下げることができるでしょう。
私たちのような庶民は大半が「正味の遺産額1億円以下」です。
その実効税率は4%以下!
相続税は、所得税よりはるかに低い「税」なのです。
国税庁もそれなりに「正義」と「合理」の観点からこの税を考えているからです。

なぜ「実効税率」が低くなるのか、相続税の仕組みから解説してみましょう。

◆理由Ⅰ 「正味の遺産額」は”おまけ”がどっさり

先ほどから私が出している数字は、いわゆる「遺産額」ではなく、正味の遺産額」です。
財産のうちから、借金・債務・未払金などのマイナス財産を差し引き、代わりに「生前贈与」の一部を加えたのが「正味の遺産額」です。

いわゆる遺産総額と「正味の遺産額」

さて、「正味の遺産額」で重要なのはここからです。

 

◎「評価」で圧縮した上に「特例」でさらに縮減

プラスの財産はどれも税の対象になります。
しかし、税務上必要になるのは「その財産の評価」です。
現金や預貯金は100%額面そのもの、これは当然ですね。
でも有価証券になるともう”評価法”が必要になってきます。

土地などの不動産はさらにやっかい。
「1物5価」と言われるほど”値段”は違いますから。
宅地の場合は「路線価」が決められている地域なら「路線価✕土地の面積」で評価額を決めます。
おおむね実勢価格の80%程度と言われています。

このように、現金や預貯金以外の財産は評価法が問題になります。
「問題になる」と言っても、大概は買ったときの価格より低い評価になるので、税金を納める側としては有利になります。
「宅地」などの場合、評価額を下げるいくつかの「特例」があり、「正味の遺産」として計上した価額(すでに実勢よりは割安の価額)に対してさらに「特例」を適用することになるので、断然有利になります。

例えば「小規模宅地の特例」を使うなら──
「路線価方式」で1億円と評価した宅地に対し、一定の条件を満たせば80%の減額が可能!
つまり「1億円」の価値がある宅地を「2000万円」として計上できるわけです!!

生命保険の死亡保険金や死亡退職金にも「特別ルール」があります。
「法定相続人1人当たり500万円の非課税枠を与える」というルールです。
法定相続人が4人、受取人はその内の1人だという場合、2000万円の生命保険なら「500万円✕4人=2000万円」を控除して「0円の生命保険」として計上できるわけです。

以上2つの特例を使えばこれだけで「8000万円+2000万円=1億円」。
大幅な課税遺産縮減だと思いますが、国は当たり前のように認めています。

◆理由Ⅱ さらに「基礎控除額」を差し引いて「課税遺産総額」に

さらに、相続税を法外に高くしないために、決定的なおまけを用意しています。
相続税の「基礎控除額」という課税価額を圧縮してくれるルールです。
イメージ図はコレ↓。

課税遺産総額

十分に圧縮した「正味の遺産額」から、さらに「基礎控除額」を差し引いたのが「課税遺産総額」になります。
基礎控除額はご存知のように

基礎控除額=3000万円+600万円✕法定相続人数

3600万円超を「正味の遺産額」からバッサリ削ってくれる大サービス。
そのサービスが今年から4割も圧縮された(以前は「5000万円+1000万円✕法定相続人数」)ので、「相続税を納めなければならない人が倍増する」と大騒ぎになっています。

「基礎控除額」が4割も削られたのは痛手ですが、実はそのこと自体は大した問題ではありません。
大事なのは「控除の額」ではなく、「法定相続人」の数なんです。
現行の相続税法では、相続人が1人増えたり減ったりすることの方が相続税額に与える影響ははるかに大きいです。
相続人が1人いると課税価額から「600万円」を差し引ける、という単純な効果だけではありません。
「頭数」そのものに、重大な意味があります(後でもう少し詳しく説明します)。

理由Ⅲ 「法定相続分で分けた」とみなす

「課税遺産総額」が算出されたので、いよいよ相続税の計算に入ります。
相続税の計算法で最もユニークなのは、A家の財産にいきなり相続税率を掛けるのではなく、一度「法定相続人が法定相続したとみなして」各相続人の法定相続分に対して相続税率を掛ける、というところです。
分かりにくいので<図解>しましょう。

相続税の計算手順1

「A家」の例です。法定相続人は配偶者と子2人。
課税遺産総額が6億円ですから、実際の正味の遺産額は「基礎控除額(4800万円)」を加えた6億4800万円です。

課税遺産の6億円を法定相続したものとして各相続人の課税遺産額を割り出します。
妻 3億円
子 1億5000万円
子 1億5000万円

この金額に「相続税率」を掛け、各人の相続税を算出します。
ココは、すごく重大な説明です。
さりげなく「各人の相続税を算出します」と書きましたが・・・・・

相続税の速算表

これが「相続税の速算表」です。
A家の課税遺産総額にこの税率を掛けるのではなく、相続人が相続した(とみなす)額に掛け合わせるのです。
この意味、お分かりですか?
「A家の6億円」にではなく、妻と子が相続したとみなされた「3億円」「1億5000万円」に速算表の数字を当てはめて計算するわけです。

6億円に税率55%を掛けるより、3億円に45%、1億5000万円に40%を掛けて3人分を合計する方が当然、数字は小さくなりますよね。
全体の財産にではなく、相続人に分けた後の財産に税率を適用する、だからこそここでは「頭数(相続人が何人いるか)」が重要になるのです。
先ほど「相続税の計算では(法定相続人の)頭数が問題だ」と言った理由、これでお分かりになったと思います。
割る人数が増えれば増えるほど個々人の税額は減り、A家に掛かる総計の相続税額も減ることになります。

上の図表に数字を書き入れました。
6億円に適用したら「2億5800万円」になりました(でも「この数字」は使いません)。
相続人ごとに適用して合算すると「1億9400万円」。
まとめて速算するより個別に式をあてはめた方が6000万円ほど”節約”になりました。
この「1億9400万円」がA家のこの相続における「相続税の総額」です。

なぜこんなめんどくさい計算方法を採るのでしょう。
それはバサッと全体の額に税率を適用すれば相続税額が大きくなりすぎますし、個別に掛け合わせるときに実際に相続した額にいきなり適用してしまうと、各相続人の相続額次第で税額が乱高下し、同規模の遺産に対する相続税なのに税総額に差が出てきて不公平になるからです。
そこで、どのように相続しても総額が変わらないよういったん「法定相続分で分けた状態」をつくり、それを基準にしました。

◆理由4 最後に「配偶者の税額軽減」がある!

前の項で「相続税の総額」を算出しました。
この後、「相続税の総額」を相続人たちが実際に手にした相続額で按分して、相続人ごとの相続税額を割り出します。
ここでは実際に「法定相続分で分けた」ことにして計算してみます。

相続税の計算手順2

相続税の総額は1億9400万円でした。
妻はその1/2だから9700万円。
子2人はそれぞれ母の半分の4850万円。

ところが母が相続した額はピタリ「法定相続分」なので「配偶者の税額軽減」の特例により、「9700万円 → 0円」になります。
子2人は算出された税額通りに支払います。
よってA家の相続における相続税額は子2人が払う9700万円になります。
実効税率は「9700万円÷6億円✕100=16.16%」。
最高税率「55%」よりはるかに内輪の額ということになりました。

なお、「相続税の総額」は最大限に徴収されてその金額になるという、いわばその相続における上限額です。
単純に考えて、配偶者の取り分が多いほど相続税額は下がり、取り分が少ない(他の相続人の取り分が多い)ほど税額は上がっていきます。

■「配偶者の税額軽減」はとてつもない特例

「配偶者の税額軽減」の特例は、なにしろ遺産がいくらあっても半分の財産は非課税というとてつもない恩典です。
「民法」は、夫婦の財産は2人で築いたもの、と考えているんですね。
また、配偶者に高い相続税を課すと、自宅を売って相続税を払うような事態が起こらないとも限らず、それは避けたいという思いもあるのでしょう。

それはともかく、この特例は実は、「遺産の半分を非課税にする」という効果だけではありません。
配偶者がいるだけで、「相続」全体に影響が及び、税負担は必ず軽くなるという効果が伴います。
「配偶者の税額軽減」は間違いなく「相続税は高くない」とするための中核的な特例です。
この辺は項をあらためて「配偶者の税額軽減とは」を書き、そこで解説したいと思います。

◇相続税にはさまざまな「数字」が出てきますが、一通り説明しました。
数字の意味が分かったら、ぜひ実際に相続税の計算をしてください。
相続税は高いか、高くないか、自分の手で確認してほしいのです。
「計算方法が今一つ分からない」という人でも、相続税計算アプリを使えば大丈夫です。
これなら使えるというアプリをコチラ↓で紹介しました。

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石川秀樹

石川秀樹(ジャーナリスト/行政書士) ◆静岡県家族信託協会を主宰 ◆『認知症の家族を守れるのはどっちだ!? 家族信託より成年後見』の著者 ◆新聞記者40年。61歳で行政書士試験に合格。 ◆「お悩みを聴かせてください。大丈夫、解決できますよ」が信念。

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石川秀樹(ジャーナリスト/行政書士) ◆静岡県家族信託協会を主宰 ◆『認知症の家族を守れるのはどっちだ!? 家族信託より成年後見』の著者 ◆新聞記者40年。61歳で行政書士試験に合格。 ◆「お悩みを聴かせてください。大丈夫、解決できますよ」が信念。

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