★子のない夫婦。夫の妹夫婦に”遺産”を狙われている/[遺言を書いておく]が今できる対策

家族信託

姪まで使ってあれこれ接近


子どものいない夫婦です。
夫は65歳、私が60歳。
調子ばかりよい、夫の妹夫婦から財産を狙われているような気がします。
姪まで使って、私の老後感まで詳しく聞いてきます。
どうやら、私たちが遺すマンションや現金が狙われているようです。

私たちの希望は、以下の2つです。
①一方が亡くなった時は、他の親族に一切の相続をさせめず、夫または私に全て相続させる。
②残された者が亡くなった時は、他の親族に一切相続させず、社会福祉の基金に全財産を寄付する。
このようにするには、どうしたら良いでしょうか。

兄弟姉妹には「遺留分」なし


質問者の親御さまもご存命ではありませんね。
それなら、あなたの希望は「遺言」を書くことで、難なく実現します。

あなたたちご夫婦が共に亡くなられた時の法定相続人は、<相続人関係図>で見る通り、夫の妹ただ1人です。
あなたが先に亡くなったときは、あなたに兄弟姉妹がいなければ、夫がすべての財産を受け取ります。
あなたに兄弟姉妹がいる場合は、あなたの財産のうち夫が3/4、あなたの兄弟姉妹が残り1/4の法定相続分を得ます。
一方、夫が先に亡くなると、あなたは夫の財産の3/4、夫の妹もまた1/4の法定相続分を得ることになります。

しかし「被相続人(亡くなった人)の兄弟姉妹」は第3順位の法定相続人ですので、(第1順位の「子」、第2順位の「親」と違い)遺留分がありません。ですからあなたの夫が「妻に全財産を相続させる」という遺言を書きさえすれば、夫の妹や姪(姪の場合は、夫の相続が発生した時点において母が亡くなっていた時には、代襲相続人になる)の野心を、封じることができます。
※遺留分=第1、第2順位の法定相続人が持つ「法定相続分のうちの一定額」を取り戻せる権利。
あなたの両親がご存命ではなく、かつあなたに兄弟姉妹がいない場合、あなたは遺言を書かなくても、あなたの財産はすべて夫に相続されます。

さて、あまり考えたくないことですが、あなたが夫に先立つ可能性がないわけではありません。
その場合には、夫の全財産は「社会福祉の基金」に寄付する予定でしたね。
これを実現するには「予備的な遺言」として、

遺言執行者は必ず指定しておく

[もし妻○○が私に先立って死亡していた時には、私のすべての全財産は「社会福祉基金△△△△(代表者名、所在地)」に遺贈するものとする。]
と書いておく必要があります。

なお財産の表記は、「全財産」「財産の半分」「財産のうち3分の1」などと大雑把に書く場合もあるし、
一つひとつ個別に網羅していく書き方もあります。
今回は「妻が先立ち、私も死亡したときに遺っているすべての財産」という書き方でよろしいと思います。

また一般的に、遺言を書く時には必ず「遺言執行者」を指定しておいてください。
この指定がないと、財産の分配時にもめる可能性が残る可能性があります。
遺言執行者は、身内でも、遺産を現に相続する人、または第三者の専門家等でも構いません。

さらに付け加えるなら、福祉団体・組織によっては、遺贈を受ける財産を「金融資産のみ」としているところもありますから、事前に情報を得ていた方がよろしいでしょう。
遺言執行者に、換金性のない財産を適宜に処分する権限も与えておくことも、遺言の技術の1つです。

<初出:2019年1月29日>
行政書士/ジャーナリスト 石川秀樹(静岡県遺言書協会)

 

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この記事を書いた人

石川秀樹 行政書士

石川秀樹(ジャーナリスト/行政書士) ◆静岡県家族信託協会を主宰
◆61歳で行政書士試験に合格。新聞記者、編集者として多くの人たちと接してきた40年を活かし、高齢期の人や家族の声をくみ取っている。
◆家族信託は二刀流が信念。遺言や成年後見も問題解決のツールと考え、認知症➤凍結問題、相続・争族対策、事業の救済、親なき後問題などについて全国からの相談に答えている。
◆著書に『認知症の家族を守れるのはどっちだ!? 成年後見より家族信託』。
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