《家族信託事例》★受託者が遠方でも家族信託はできますか?大丈夫、社協の自立支援事業と連携しましょう

家族信託

《事例》  
Iさん(45)はSさん(72)と母一人子一人です。40代で結婚したので娘はまだ幼く、頻繁に実家に帰省するのはむずかしい状況です。
しかしこの頃、母から頻繁に電話がかかってきます。内容は他愛ないもので、以前教師をしていた頃の母のイメージとまるで合いません。
心配になって、1日会社を休み、娘のことを夫に頼んで帰省して脳神経内科にSさんを連れていき、診察してもらいました。
結果は、「MCI(軽度認知障害)の状態」との診断でした。

遠くにいるお母さんが心配

それ以降、「いつ銀行に母の口座を止められるかわからない」と気が気ではなく、家族信託を調べるようになりました。
この場合、私の見立ては「任意後見契約よりも家族信託をする方がベターかなぁ」でした。
今のSさんの状況なら、任意後見でも信託でも契約は問題なくできますが、最後は“距離の問題”が大きな障害になるかもしれないと考えました。
Iさんは新潟、Sさんは静岡。新幹線2つを乗り継ぐのは時間的にも経済的にも負担となりそう。
私はSさんから事情を細かく聴きました。

●委託者の気持ちを第一にしてツールを選ぶ

まずSさんの成年後見制度へのスタンス。「絶対に使いたくない」でした。元教師のSさんは自尊心が強く、制度への忌避意識が強いようでした。Sさんの場合、流動資産が多くかつ後見人等の候補となる長女は遠方にいるので、地元の専門職が後見人等に選任される可能性が高くなるでしょう。
症状が軽いですから、当初は成年後見人ではなく補助人または保佐人が選任されそうです。症状が重くなってから申立てた場合、運よくIさんが後見人や保佐人に選ばれても、監督人が付されることになるでしょう)

任意後見ならIさんが任意後見人になれますが、裁判所は「頻繁に通えそうもないことに、首をかしげるかもしれません。周囲の状況が悪化すると、将来的には法定後見への移行を促される可能性があります。いずれにしても任意後見には司法書士か弁護士が監督人についてスタートするので、Sさんの意向には反してしまうことになります。

成年後見制度を使わないとなると、家族信託一択になります。
ただ、<受託者にもしものことがあったら>という懸念があります。
Iさんの希望は、後任受託者は夫ではなく、まだ未成年の娘を充てたいとの意向。それ以上の事情は知る由もありませんが、成人するまでには後10数年。その“空白”は心配なので、私が信託監督人としてこの信託に関与することにしました。のっぴきならない事態になった時には、つなぎの受託者を親類縁者の中から探すか、あるいは信託を終了させる。そのときにIさんが意思能力を失っているときには親族を促し、法定後見に移行させる。このような任務です。

 

●支援員はお金を、親の家まで届けてくれます

受託者が遠くにいるため親の面倒を毎月みるわけにはいかない、という事情については、地元の社会福祉協議会と相談して、日常活動自立支援事業を中心として、▲ホームヘルプサービスや入浴サービス、▲買い物や▲配食サービスも状況に応じて受けることにしました。
≪代理引き出しはこのように行われる≫
❶社会福祉協議会と利用者との契約が成立すると、利用者は社協に印鑑と通帳を渡す。
❷社協はこれを受け、銀行に代理する支援員の氏名を届け出る。

全国の社会福祉協議会が提供する日常生活自立支援事業

❸利用者(Iさん)から連絡が入ると、支援員は社協に赴き、通帳と印鑑と社協代表印を押した金融機関の払戻票を受け取る。
❹支援員は金融機関に行き、預金を払い戻す。
❺利用者宅を訪問し、通帳を見せ、現金を渡す。受領書に本人が署名する。
注目すべきは、支援員は払出したお金を契約者の自宅まで届けてくれる点です。

●自立支援事業には《見守り》効果もある

ひとり暮らしの親を心配する家族が最もほしい情報は、≪親は元気だろうか。病気やけがをしていないか。生きていてくれるか≫です。
以前、「高齢者こそLINEを使え!」という原稿を書いたことがあります。LINEトークには「既読」というユニークな機能があるので、これを家族が見れば少なくとも“生存確認”はできると思ったのです。
今では、WEBカメラや郵便局の「みまもりでんわサービス」、本格的にはセキュリティー会社の安否情報システムなど、いろいろな手段がありますが、支援員が実際に家に行き本人と会ってくれるというのは大きな安心です。
今回の例は、委託者は軽度の認知症でしたが、知的・精神障がい等の人も対象になります。ただしこの事業は「契約」なので、一定の判断能力は必要です。
ということは今回の福祉型信託にピッタリ当てはまる!

●半数の人が最後は独り、心して対策を!

通帳と届出印を社協に預けておくので、一部の人は「支援員の信頼度は?」と気にするかもしれないですね。どうしても心配なら次のようにしてください。
・母の信託財産受取口座は常に少額にしておく。
・公的年金の受取を同じ口座で行なっている場合は、時おり(50万円を超えたら、などとルール化して)信託の口座に追加して、親の地元の銀行口座の預金額は一定に保つ。
・帰省するときは社協を訪ね、支援員と会話を交わす。互いの存在を尊重するのがいちばんの“良薬”です。

高齢で独り暮らしの親をどう守るかは、ほとんどすべての子世代の人にとって大きな問題です。
今は65歳以上の人がいる世帯の主流は以下のようになっています。
単身世帯 28.8% ▼夫婦のみの世帯 32.0% 
2つの世帯を合わせると6割を超えます
いうまでもなく夫婦はいずれ死別し独り身に。

あなたは親と近居していますか?
すぐに駆け付けることができますか?
「むずかしい」と思った人は、他人ごとにしないで対策をぜひ実践してください。

(初出:2024/5/18)

静岡県家族信託協会
静岡県遺言普及協会

行政書士 石川秀樹(ジャーナリスト)

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この記事を書いた人

石川秀樹 行政書士

石川秀樹(ジャーナリスト/行政書士) ◆静岡県家族信託協会を主宰
◆61歳で行政書士試験に合格。新聞記者、編集者として多くの人たちと接してきた40年を活かし、高齢期の人や家族の声をくみ取っている。
◆家族信託は二刀流が信念。遺言や成年後見も問題解決のツールと考え、認知症➤凍結問題、相続・争族対策、事業の救済、親なき後問題などについて全国からの相談に答えている。
◆著書に『認知症の家族を守れるのはどっちだ!? 成年後見より家族信託』。
◆近著『家族信託はこう使え 認知症と相続 長寿社会の難問解決』。
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