★家族信託で、親の老後を守る“もう1つのポケット”を!

家族信託

家族信託で、もう1つのポケットを作っておきませんか?
親の老後を守る、親から託されたお金を管理するもう1つのポケット。
他の方法ではなぜ「不合理」か、私の失敗談をお話ししたい。

 

家族信託の相談を受けていたのに、あれよあれよという間に委託者候補の認知症が悪化して、もはや信託契約の内容を理解するのは難しい状態になってしまったことがある。
がく然とした。
5000万円の金融資産と、評価額3000万円の自宅不動産が宙に浮く。
そうならないよう、家族信託もう一つのポケットを作ろうとしていたのに。

 

■思いがけない認知症の悪化

事情を細かく聴くと、まだ家族との会話は成り立つという。
うわごとのように「今のうちに、お前たちに財産を分ける」と言っているそうだ。
《「贈与」ができるなら、少しは道が開けるか………》

 

しかし贈与税は、相続税に比べると、格段に高い!
1000万円の贈与でも210万円、2000万円なら635万円かかる。
5000万円だと[5000万円×0.55-640万円=2110万円]だ。
5000万円使えるはずが、右から左のポケットに移すだけで2890万円に減ってしまう。
これは、痛すぎる‼ 本当に痛い。

 

■老後のための5000万円が使えない!

父親には5000万円の金融資産と3000万円の不動産がある。
相続人は妻と子1人。相続税なら法定相続しても70万円しかかからない。
しかも、生前の5000万円は夫婦の老後資金だから、生活費としてかなり目減りする。
仮に2000万円費消すれば、相続税はゼロ円になる。

 

ところがこの5000万円、これからは使えなくなってしまう、という話なのだ!
さて、どうしようか。

 

すぐに思いついたのは、相続時精算課税の活用だ。
2500万円の贈与が一気に行える。
この2500万円は相続の時に、「遺産」として持ち戻されるが、先ほどの計算によれば70万円の相続税で済む。
(精算課税方式ではなく普通に生前贈与すると、贈与税は860万円発生する!)
これを「もう一つのポケット」として妻が管理すれば…………。

■次善の策は「相続時精算課税」

いや、待って待って。精算課税は妻には適用されない(直系尊属から直系卑属への贈与が対象)。
ならば、そうだよ、長男に贈与して、「親のために使って」と頼んでおけばいい。
しかし、贈与されたお金だ、「親のために使うお金」として預かったわけじゃない。
息子が父のために使ったら、これって、贈与にならないのか?
「親→子」「子→親」へとお金のキャッチボールをすると、二重に贈与税が発生してしまう⁉
そんなばかな‼

 

一瞬、「ウッ」となり、税務署に問いただした。
よかった。子が扶養義務の範囲として(例えば、介護施設費用をこのポケットから)払っても、子から親への贈与にはならないそうだ。
そりゃそうだよね。日本の税制も、そこまで理不尽じゃない。
しかし、親の介護のために東京―静岡を往復する、親に頼まれてエアコンやテレビを買う。
そんなことまで「扶養義務の範囲」で通るのか? 微妙だ。
全部が「非課税」として通るかどうかは、わからない。

 

ではやらないのか。
やらないわけにはいかないよね。
老後のために使えると思っていた5000万円が全部使えない! それでは、両親は暮らしていけない。
せめて半分は使えるようにしないと。
本当は、860万円の贈与税を払ってでも、残る2500万円まで贈与しておきたい。
でもさすがに依頼者は、「その分は自腹を切ります。2500万円は温存しておく」と判断した。

 

■家計に「もう1つのポケット」を‼

歳をとれば、親の判断力は多かれ少なかれ落ちていく。
85歳以上になれば2人に1人は認知症状を示すようになる。
そうなった時に、家計に「もう1つのポケット」があったら………。
それをシンプルに実現してくれるのが、家族信託だ。

 

■家族信託でそれを実現

家族信託で、「父のポケット」にあるお金の一定額と自宅不動産を、「息子のポケット」に移し替えておけば………。
信託法はそれを実現してくれる。
贈与税を1円も払うことなく、「お金と不動産」は子の名義に換わる。
子は、自分のポケットに入った財産を、契約の目的に従って父のために使えばいい。
契約書に、「私が施設に入り、母がお前と同居したときには家を売れ」と書いておけば、それもできる。

 

そういうことが分かった上で信託の相談を受けていたのに、今回は間に合わなかった。
痛恨だ!
高齢者の認知症は、転倒や脳梗塞などで寝たきりとなると一気に加速することがある。
その結果は、今書いた通り。

 

■動かせるお金、という工夫

私はこの相談を受けたとき、真っ先に
①定期預金の解約
②不要な生命保険の解約→現金化
③有価証券の即座の売却
を、依頼者にお願いした。
すぐさま動いてくれたので、動かせるお金として5000万円の現金が残った。
そして父親には「贈与」の意思があった。

 

だから「もう1つのポケット」は実現できた(当初描いた計画の50%足らずではあるが)。
不便だけれど、何とか老後生活を乗り切ってほしい、と切に願っている。

<最終更新:2020/7/18>

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この記事を書いた人
石川秀樹 行政書士

石川秀樹(ジャーナリスト/行政書士) ◆静岡県家族信託協会を主宰
◆61歳で行政書士試験に合格。新聞記者、編集者として多くの人たちと接してきた40年を活かし、高齢期の人や家族の声をくみ取っている。
◆家族信託は二刀流が信念。遺言や成年後見も問題解決のツールと考え、認知症➤凍結問題、相続・争族対策、事業の救済、親なき後問題などについて全国からの相談に答えている。
◆著書に『認知症の家族を守れるのはどっちだ!? 成年後見より家族信託』。
◆近著『家族信託はこう使え 認知症と相続 長寿社会の難問解決』。
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