《認知症対策の一覧表》★成年後見と家族信託、できること・できないことを比較 した。よくも悪くもこれが現実!

家族信託

認知症は資産凍結の問題のみならず、さまざまな生活上の差しさわりを引き起こす。認知症対策の方法としては、成年後見制度と家族信託が比較されることが多い。どちらの対策がどのように有効なのか。30項目のテーマについて一覧表を作って比較してみた。どちらも完ぺきに障害を取り除いてくれるわけではないが、それでもかなり有効で使いやすいのは家族信託であった。

『認知症の家族を守れるのはどっちだ!? 成年後見より家族信託』▼▼▼

実は、上記の本の第2章第1項で私はこの問題を扱った。
章のタイトルは「成年後見と家族信託でできる事 家族の役に立つのはどっちだ、全く異なる2つの制度」。
できる・できないを大きな一覧表にして、[◎大いにできる、〇できる、△できる場合もある、×無理]と4段階で判定している。

 

成年後見家族信託を一覧表で比較

本人が認知症になって判断能力を失ったとき、今まで普通にできていたことができなくなります。やり方を忘れてしまったからできない、ではありません。「あなたには判断能力、意思能力がないからやってはいけません」と、第三者に止められてしまう(例えば行員に)から。通帳からお金をおろせない、これが「(口座の)凍結」。現実に起きていることです。
登場人物は3カテゴリー。▼成年後見人、▼家族信託の受託者、そして▼家族。この場合の「家族」は法律用語でいえば<無権代理>といわれます。本来、代理する権利はないのに、慣習的に黙認されることが多い“代理みたいな存在”。実はこの3人以外にもう1のカテゴリーを加えました。それが「▼家族の力」。家族信託の受託者には、たいてい委託者(父親や母親)の子がなります。つまりこの人は家族兼受託者の2役。
家族の力は、意外に強力です。国がすすめる公的な後見人である成年後見人に勝るとも劣らない力を、家族は(結束していれば)発揮することもあるのです。

では「一覧表」をご覧ください。
成年後見」と「家族の力」とを比べると公的制度と、「家族」という存在の優劣(得意・不得意)がわかります。

後見と信託・家族の力

 

■一見、成年後見金融資産に強そうだが

『認知症の家族を守れるのはどっちだ!? 成年後見より家族信託』では、項目ごとに成年後見と家族の力を詳しく解説しましたが、この記事ではポイントだけを簡潔にまとめます。
上から順に―――

<1、2、3、4>不動産関係については、成年後見人は予想外に“成績”が悪い。家族信託は得意中の得意だ。(後述)

◎全銀協指針が出ても、認知症家族は銀行に弱い

<5>預貯金のことになると、今度は一転して、成年後見人が強い。それに比べると、家族はだいぶ分が悪い。2021年の2月に全国銀行協会が「家族の代理引き出しに関する指針」を全国の銀行に対して発表した。大手メディアは「これで口座凍結の問題は解消する」と思い込み、こぞって楽観的な記事を書いた。しかし2年後の今も、認知症家族の心配が解消したとはいえない。 いえないどころかこの1年、成年後見制度に駆け込む人は2,574人も増え(なんと7%増!)4万人に限りなく近づいてしまった(このうち親族後見人は19.8%、5人に1人だ)。理由は明白、金融機関にとっては成年後見制度を使ってもらうのがいちばん安全で安心だからだ。指針を信じて窓口に来た家族の多くが、逆に制度利用を説得される情景が目に浮かぶ。口座凍結の解除と引き換えに、本人及び家族はお金を今まで通りに使う自由を永久に奪われる。成年後見制度のさらなる問題は後述する。

※全銀協指針に関する関連記事▼▼▼ 銀行の本音を喝破しました。

★認知症患者の預金、家族の引き出しOKは本当か!? 全銀協指針、本音は成年後見だ!!

 

◎株取引を止めるために後見人!? コストパ悪すぎますよ!

<6、7>株や投資信託、家族は暴落などを恐れて「何とか取引をやめさせて」と証券会社等に懇願する。昨日まで平気で高齢のお客さまと取引を繰り返してきたくせに、証券会社は「(本人の意思で手続きしない限り)できません」と、にべもなく断る。この状況になった時の「止め役」に成年後見人が出てくれば、会社は直ちに取引を中止。効力は絶大だ。これで安心と家族は思うかもしれない。本人は2度と取引できず、代わりに後見人が運用してくれるわけでもない(株や投資信託、債券の運用は後見人でも不可)。
止め役のはずの成年後見人が、以後、被後見人本人の財産を管理することになるので、コトは株取引中止だけにとどまらない。預貯金も生命保険も住宅や不動産の管理も、全部成年後見人が行なうことになるのは、預金解約のときと同じだ。株取引を止める、預貯金の口座を解約するだけで成年後見制度を使うのは、コストパフォーマンスが悪すぎる!
この点、家族信託の受託者は、止めることも、運用することもできる。(後述)

◎保険金1000万円以下なら家族でも受け取れる

<8、9>生命保険の変更等の手続きは、成年後見なら認められている。
しかし実際には、死亡保険金を受け取るために成年後見制度を利用するのが大半だ。これも極めて痛いっ!他の動機の場合と同様に、成年後見は被後見人が亡くなるまで続く。そんなつもりで頼んだわけでないのに、ランニングコストがかさむ。他に何かやってくれるわけでもない。お金の面の管理が窮屈になるだけで、本人も家族も「ありがたい」という気がしない。
受取人に指定された人が認知症であっても、家族が代わって受け取れないものだろうか。たかが認知症ではないか。法律専門家など必要ない。後見制度を使ってしまった人は後悔しきりだろう。お察しする。
本当に死亡保険金、受取人と指定されていた人(例えば配偶者)が認知症だと受け取れないのか。気になったので、軒並み保険会社に電話して聞いてみた。すると保険金額が1000万円以下の場合は、家族でも法定相続人全員が実印を押せば、本人の口座に振り込んでもらえることがわかった。

◎年金受取口座の凍結が怖い人は、ゆうちょで代理人カードを

<10>公的年金は、受取人本人が指定した口座に2カ月に1度振り込まれる。不幸なことに、本人の認知症などのために年金受取口座が銀行によって凍結されることがないとはいえない。そのような場合でも、年金自体はその口座に振り込まれ続ける。しかし引き出しができない、ということになる。まさに死活問題。なんとかしないと。認知症の家族から相談を受けると私は、「最低限、代理人カード(家族カード)を作っておきなさい。今後は本人ではなく、あなたがATMからおろすようにした方がいいですよ」と助言する。銀行に口座凍結の必要性を感じさせないことが肝要だ(つまり、本人に銀行と距離をおかせる)。
その上で、代理人カードはどこで作っておくか。作ってくれる銀行ならどこでもいいが、ゆうちょ銀行がおすすめだ。ゆうちょでは「本人が指定した人」については、同居などしていなくても代理人カードを作ってくれるからだ。他行の多くは「生計一の3親等内の親族」を条件にしている。今どき、同居する子などがいる家族なんて多くはない。《銀行も現実を知ってサービスの質をあげてくれよ!》といいたくなる。
同じ理由で、年金受取口座もゆうちょ銀行に切り替えることをおすすめしたい。もちろん家族には手間でもATMからの引出は手伝ってあげてほしい。口座凍結リスクを少しでも減らすことは、老親がいる家族では常識だ。

◎配偶者が認知症だと、遺産分割方針が台なしになる

<11、12、13>遺産分割協議や遺留分侵害額請求等の法律手続きは成年後見の独壇場となる。(後述)
あなたに認知症の懸念がまったくないような場合でも、配偶者に認知症の兆しがあるなら、家族信託をした方がゼッタイにいい。最低限、遺言を書いておかないとヤバい。遺産分割協議が必要になるため、配偶者に判断能力が欠けている場合は成年後見人を付けなければならなくなる。付けたら最後、成年後見人は配偶者のために「法定相続分」を主張するので、遺産分割の仕方が硬直的になる。「俺が母の面倒をみるから、父の遺産を少し多めに相続するよ」などという“家族の工夫”が通用しない恐れが出てくるということである。
そのような落とし穴があるので、遺言適齢期の人は(財産を持っている)自分が元気だからわが家は安泰、などと気を抜かないでもらいたい。配偶者の健康状態も気にかけて、財産の引継ぎ方を真剣に考えてもらわなければならない

◎家族信託を使えば、遺言より堅固な相続が実現する

<14>財産承継、節税対策となると、成年後見はまったく通用しない。
今、妻の認知症と遺言の関係を書いたが、妻に限らず成年後見人を付けざるを得ない人が家庭内にいる場合、遺言の効力に重大な支障が生じる恐れがある。成年後見制度は(家族の意向より=遺言者の意向も)被後見人の財産を守るための制度なので、成年後見人の判断次第で、遺言より「被後見人の相続人としての権利」擁護が優先されることが起こり得る。極端な例だが、遺言で、ある財産の承継者を決めてあっても、後見人等がその財産を処分してしまうということさえある。
本人の財産なのだから遺言者本人の意思が何より優先されるべきだと思うが、成年後見制度は別の判断基準で動いているので、家族にとっては、まことに始末の悪い結果になることがあるわけだ。
これも知っておいてほしい。成年後見人がいる場合、被後見人の財産を生前贈与に向けることはまったく不可能になる。被後見人の財産を減らすことは不可。「相続対策だ」といってもダメ。ましてや「節税のため」などといえば、「それは相続人の都合でしょ」と一蹴されるだろう。
この点、家族信託の立ち位置はまったく違う。「信託財産」について、家族信託はその承継を遺言よりも堅固に指定することができる。遺言も場合によっては必要だ。信託しなかった財産の承継は、遺言で指示しなければならない。だから家族信託と遺言と、2つのツールを活用してほしい。家族の将来を思い、真剣に相続の形を考えて。そうすれば確実にその願いは叶う。
さらに家族信託を使えば、相続人の次の世代の承継についてまで自分の思いを通すことができる。家族信託にはこのような超遺言機能もあるから、相続を考える場合、必須で最強のツールとなる。
宣伝になって恐縮ですが、下記の本 ▼▼▼ を手に取ってほしい。相続のために家族信託を使うことをテーマにした最新刊。

◎経営や事業の救済に成年後見制度はほぼ無力

<16>特筆すべきは、経営や自社株式のこと。
経営者が認知症になったら成年後見に頼ればいいと大半の人は考えると思うが、成年後見制度に経営や事業を救済する直接的な機能はなく、ほぼ「無力」である。
成年後見制度でできることは限定的で、社長が後継者を決めないまま認知症になったら、間違いなく会社は存亡の危機を迎えることになる。
その反対に、“社長の様子がおかしい”と感じた時に、後継者候補に自社株式を家族信託しておき、会社の将来像を伝えてあれば、後継者は株式を集約でき会社を引き継ぐという難事業を軟着陸させることができるだろう。
社長に意思能力や判断能力が残存しているうちは、株式を離したとしても「指図権者」として受託者の判断をチェックして修正を指示することができるので、後継者の判断力を試しつつ育てていくゆとりも生み出せるだろう。その意味では家族信託は、あわただしく高速で進む時計の針をゆるめ“時間稼ぎ”させてくれるツールだとも言えるだろう。
これに対し成年後見人は、本来は社長個人の財産の管理人に過ぎない。自社株式を有しているとはいえ、「社長」としての機能を成年後見人が果たすことは極めて限定的であり、そもそもそれをこの制度に期待するのは無理というものである。
自社株式の大半を成年後見人が有している場合は、大株主として株主総会を招集して、次期後継者選びを社の幹部らにゆだね、次期社長誕生にまでつなげられれば上出来だろう。
もともと成年後見人の権能は、社長個人のための財産を管理できるにすぎない。会社経営のかじ取りをするなどということは、この制度が想定していないことである。

◎身上保護まで成年後見人の役割、には疑問を感じる

<22~28まで>身上保護や施設・病院関係の項目が並んでいる。成年後見に「○」がつく項目もあるが、職業後見人は弁護士・司法書士・行政書士等の法律専門職が主体なので、必ずしも福祉関係の事務に精通しているとは限らない。社会福祉士も成年後見人候補として重要な地位を占めているが、その視点は家族の視点とは異なるので、こちらも身上保護のプロといい切れるものではない。

身上保護 介護保険の手続きや福祉サービスの契約、施設入退所の契約手続きなど、被後見人の生活の状況に配慮して法律行為などを代行することをいう。
手続については法律専門職の大得意であることは確かだが、「家族としての視点」に欠ける面もあり、なんでもかんでもやってもらえると思うのは、成年後見制度の買いかぶりというべきである。財産管理には熱心でも、身上保護の義務を煩わしいと軽視する職業後見人もいないわけではない。家族や介護福祉・医療の現場では、後見という仕事に意欲のない職業後見人は「いるだけ迷惑」という存在であるから、専門家だからと甘やかさず言行をよくチェックしておくべきである。(後述)

 

成年後見制度は手遅れになって使う制度

結論めいたことを端折って書いたが、肝心なことを言い忘れていた。
優劣を比較するなら、「比較」の前提を説明しておかなければいけない。

言うまでもないが、成年後見は、手遅れだからやむなく使う制度である。
認知症がひどくならなければ、誰だって、自分のことは自分でする。
少々意地悪な言い方だが、(本人や家族)手を打てるときに手を打たず、状況を甘く見たから後見利用に追い込まれた。
つまり成年後見人の権能とは、本人が判断力を失ってしまうという“異常時”に、法の権限でもって「本人を代理する」ということにすぎない。
(後見人に特別な権能を与えたわけではない。あくまで本人の代理である。本人ならできることを、代わってするだけ)
それも、いわば緊急避難的な措置であるから、できることは限定される。
30項目も一覧表に書き出して「してもらいたいこと」を示したが、成年後見人ができるのは14項目だけである。

一方、家族信託は「追い込まれる前に危機に気づき、本人が健常か、認知症状の軽いうちに家族と契約する」という手法であり、成年後見とは使い方も発想も、まるっきり違う。
家族信託の受託者は、本人(委託者)から財産を信託され(信じて託された)、それを管理し、処分する。
なぜその権限があるかといえば、委託者が信託したときに財産名義を委託者名から「受託者たる自分名義」に換えるから、所有者としての権限を有することになるわけである。
一覧表で受託者に「○」がつくのは、託されて管理処分ができる財産についてのみだ。
(預貯金の解約は、いまだ委託者名義の財産なのだから、受託者の立場で行なえるわけがない。
それでも、受託者ができることとして14項目に「○」がついた(後見人は13項目の「○」だった)。

 

■「家族の力」はけっこう強い!

家族ができることは、本人の財産については(本人がボケてしまった以降は「代理」がきかず)ごく限られてしまう。
しかし身上保護的な項目(21以下)については家族の独壇場だ。
成年後見人が付されない限り、これまでは家族が身上保護の重責を担ってきたのだから、当然である。
家族信託家族の力が加われば、認知症対策としては“最強”と言える。

受託者兼家族、つまり「家族の力」でできないことは、一覧表の左隅に「⇒(矢印)」を付けた項目だけであろう。
金融資産関係では、預貯金のことと生命保険の変更だけ(保険金は受け取れる)。
その他4つの緑色矢印は、法律が絡んだ項目であり、これは仕方がない。

一覧表にして、[◎、○、△、×]と[⇒]を付けてみると、「どうしても成年後見制度に頼らなければならない項目は何か」がはっきりしてくる。
緑[⇒]の4項目だけである。
この中で、「遺産分割協議」だけは悩ましい。
遺産分割協議は法定相続人全員の一致でなければ決まらないので、意思能力がない人が相続人の中にいると「法定後見を」ということになりがちだ。
しかし以下の場合は、遺産分割協議なしでもOK(後見も不要)になる。
①遺言通りに分ける
②遺産が現金と預貯金のみ
③遺産に不動産が含まれていても、不動産は法定相続分で共有する
※②③で税務申告が必要な場合は、分割協議書が必要になります。
その他の場合は、本当に成年後見制度が必要かどうか、専門家とも相談して慎重に決めてほしい。

 

■定期預金解約の「先」を考えて!

さて、「5.預貯金口座の開設や解約、取引」について、もう少し解説したい。
受託者は一覧表では「×」とした(任務外であるから)。
家族の立場で銀行と交渉すれば、預金引き出し、ごくまれだが定期預金の解約も、応じてくれる場合がある。
また銀行のキャッシュカードによっては、100万円以下の定期預金なら解約できる。

ただ、ここで書きたいのはそんなことではない。
解約できなかった場合の家族の対応についてだ。
「5.」で大事なのは、入り口でなく、「その後」のことなのだ。
成年後見人は預金をおろせるし、定期預金も解約できる。
これにより、本人のお金を療養介護費に回すことができて家族は助かるが、
しかし成年後見を申立てるということは、①財産管理と②身上保護(病院・施設等の手続きなど)は以後、他人に任せる、ということである。
定期を解約した大金は、家族の手には渡らず、後見人が管理することになる。
その通帳だけでなく、すべての金融資産、不動産、動産、権利を成年後見人に渡さなければならない(実印もだ)。
さらに老いた親にどのような療養看護をしてもらうかについても、家族は口を出せなくなる。

お金のことで追い込まれると、こういう重大な結果が待っている!
ということを、皆さんはご存じだっただろうか。
それが、『認知症の家族を守れるのはどっちだ!? 成年後見より家族信託』
を、私が書こうと思った最初の動機である。

ここまで踏み込んで成年後見制度を説明する専門家は少ないと思う。
私のもとに「こんな制度だと知らなかった」というメールが再三届く。
親に認知症のきざしが見えてきたとき、この制度を使うかどうかについて、前もって家族で十分に情報共有をしておかないと、皆が“混乱の渦”に巻き込まれる可能性がある。

 

■その先、を考えるなら家族信託

預貯金の問題について家族信託の受託者は、その入り口では分が悪いように見えるので、これも解説しておきたい。
金融機関に凍結された口座は、本人か、公的後見人でなければこじ開けられない。
信託受託者の権能は、名義が受託者名になっていれば100%発揮できるが、受託者の出番は、解約請負人としてではなく、(もともと親の財産で、今は受託者名義になっている財産の)将来にわたり恒久的な管理人になることである。

無事に親の財産を管理する権限を得られたら、後は他人や家庭裁判所に介入される恐れはない。
そのポジションを獲得するために、家族には「先を読む目」が問われる。
親に認知症発症の恐れがあるなら、大きなお金は(崩しにくい)定期預金などにはさせない。
してしまったものは、元に戻しておく(定期を解約して普通預金にするよう懇願する)。
定期と同様、銀行にすすめられ生命保険にした、投資信託にしたお金は、これも普通預金に戻させる。
わずかな利子や利益より、今のあなたには「動かせるお金」を持っていることの方が大事、と親を説得する。
行員に頼まれればやすやすと「定期」にしてしまうお人よしは、もうやめて!
老後を計算できる人になろうよ、と親子でよく会話する。

<親に無関心なあなた>だと、認知症という一つの病気によって、家族が大混乱に巻き込まれる。
認知症の怖さは、そこにこそあるんですよ!
85歳以上になれば2人に1人は認知症になる(厚労省の2013年推計)。
誰も「うちとは関係ない」とは言えない超高齢社会に私たちは生きている。

 

後見と信託・家族の力

 

■不動産管理、成年後見人には荷が重い

重要な項目だけもう一度細く解説しよう。
(もう一度、上の一覧表を見てほしい)
2.不動産の売却、補修、賃貸、その他処分について
本人が行う場合と、成年後見人が管理する場合では様変わりする。
成年後見人は不動産管理については素人であり、かつまた、投資的な運用を家庭裁判所から止められているから。

成年後見の目的は「本人の財産を守る」こと。
空室率を減らすため、経営者なら補修を行うところ、後見人はそれをしない。
稼働率が落ち込み採算割れになると、成年後見人は不動産を売って現金にすることを考える(本人なら、そんな愚かな判断はしない)。
不動産をお金に換えてこれ以上の赤字を止め(損失を確定)れば、手持ち現金は増えるので後見人の報酬が上がる(不動産売却の労を取ったことでボーナスも出る)。
ことほど左様に、本人が経営していた通りに後見事務が進むわけではない。
「○」はつけたものの、成績表としてつけるなら「×」か、甘くつけても「△」にしたいような「財産管理」がまかり通る。

一方、家族信託の受託者は、委託者の意向通りに仕事をするから、本人の文字通りの“分身”となる可能性が大いにある。
補修のためのローンも、後見制度の中では家庭裁判所に許可されないだろう。
しかし受託者なら、信託不動産を担保にして果断に実行できるので「◎」を付けてもいいくらいだ。

 

■証券大手が家族信託を始めた

80歳過ぎの人でも、株が大好きという人が男女を通じて少なくない。
しかし家族からすると「危なっかしくてしょうがない」
「ほぼ証券会社の言いなり」「買った株のチェックもしていない」
「なんとかやめさせたい」という声もよく聞く。

認知症が進み、家族が困って証券会社に「口座凍結」を頼むと
「本人の意思能力が……」と言を左右にして応じない。
「どうしても止めたければ成年後見人を」という。

こういう相談を受けると、私は本当に怒りたくなる。
「昨日まで老人に投資を勧めていたのは誰か!? どの口が『成年後見人を』と言うのか」
こんなとき、私は金融庁の相談窓口の電話番号を教えることにしている。
とはいえこのような場合、家族が交渉しても、株を止めることさえ難しい。

証券会社が「家族信託口座」を作ってくれれば、話は一気に解決する。
しかし証券会社は「借名口座」で金融庁に責められているから、『それは無理だろう』と思っていた。
ところが昨年、大阪のエース証券と、証券トップの野村証券が相次ぎ家族信託口座を始めた。
大英断である!! ※最近は大和証券でも家族信託口座を開設できる。
それまでは、有価証券投資で受託者ができることは何もないから「×」だと思っていたのに、
今度は委託者に代わって運用までできるようになり、いきなり「◎」となった。

これらの会社以外で証券運用をしていた場合でも、「移管」という方法で両社に商品を移せば上場株式の家族信託が可能になる。
ただしこの場合、本人が、取引をしていた証券会社に移管を指示しなければならない。
委託者の認知症が進んでいると断られる恐れがある。
早めの決断が肝要だ。
ここでも老後は待ったなしである。

 

■職業成年後見人の身上保護は監視せよ!!

比較の最後に、身上保護について触れたい。
身上保護とは、「22. 介護契約や要介護認定の申請
24. 福祉関係施設への入退所や病院との入退院に関する契約
25.福祉施設等の処遇に対する監視・監督」がそれにあたる。

2000年の民法改正により成年後見制度が誕生し、それに伴い、「身上保護」は「財産管理」と並び成年後見人の仕事となった。
後見対象の中心は認知症の高齢者だから、入院や施設入所となる人が少なくない。
「だから成年後見人がしっかり面倒をみてやってね」というのが法の趣旨だったと思う。
そういう制度なのに、もったいないことに、多くの職業後見人は身上保護に不熱心である。
年に1度しか施設を訪れない後見人がいる。
中には、後見人に就任以来1度も本人に会ったことがない、という後見人さえいる。

だから身上保護については、家族が「しっかり働いているかどうか」後見人を監視しなければいけない。
多くの士業後見人が福祉に関心がない。
社会福祉士も最近、後見人になることが増えてきたが、彼らが手厚く本人の様子をみていてくれるかは定かでない。
私は複数の人から、身上保護の後見人に選任された社会福祉士の“不熱心ぶり”を聞いている。
大半の後見人は熱心で、けしからんのは“例外”である、ということを祈るほかない。

 

■身上保護権は家族に返してもらいたい!

いずれにしても、家庭裁判所に以下のように提言したい。
本人の近くに家族がいるなら、職業後見人に「財産管理」とワンセットにして「身上保護」を担わせることはない、
家族に行ってもらえばいいではないか(特段の事情がない限り)、と。
家族の方が本人のことをよく知り、気持ちも添っている可能性が高いからだ。

弁護士だから、司法書士だから、知能が高いから家族より信頼できる、という思い込みはやめてほしい。
知能の高さは、人間性とは別である。
成年後見人は(本人ではないのだから)手術の可否や、延命について判断してはならない。
医師から延命措置について判断を求められても、答えてはいけない。
にもかかわらず、医師側をそんたくしてか、「延命(措置)は必要ないでしょう」と答えた成年後見人もいる

その後見人において、命の問題が軽い。軽すぎる!!
傲岸不遜である。
この一事で、後見人解任理由として十分である、と私は思う。
家族がいないなら、医師の責任において判断させるべきだ。
家裁が「解任」にちゅうちょするなら、「辞任」を求めればいい。
※私がこの問題に激しく怒るのは、延命について特別の思いがあるからだ。
 以下、参考記事(本テーマとは少しズレるが)▼▼▼

★「延命のための延命は拒否」でいいですか!? 最期の医療めぐるおかしな”空気”

こういうことがあるから家族は、職業後見人をよくよく監視しなければいけない
えらい先生だから何も言えない、などと縮こまっていては、認知症の人の悲しさ、つらさ、肩身の狭さは永久になくならない。
この点は、医療従事者、介護従事社において同じだ。あなたたちは少なくとも、職業後見人に比べ医療において、介護において、プロであるはずだ。知識のない者に指示を求めるのは間違いである。彼らは「家族」とは違う。命の問題を判断させてはならない!!!

成年後見制度は、本人の残存能力をいかし、本人らしく生きてもらう支えになろうとして発足した。
成年後見の実態が、少しでもそこからズレてきているなら、声を出して「運用を改めよ」と促さなければならない。

 

■だから成年後見より家族信託!!

成年後見家族信託の「できる・できない」徹底比較のつもりが、身上監護について触れたらエンジン全開になってしまった。
成年後見と言うと「財産管理」の話題一辺倒になりがちなので、一石を投じた。
皆さんには、「成年後見=財産の問題」だけではないことを知ってもらいたい。
成年後見を選択することは、(現行の運用だと)家族による身上保護権まで投げ出すことにつながる。
実に悩ましい問題であることを、実は私も、家族信託の本を書き進めていくうちに気が付いた。

言いにくいことだが、はっきり書いておかなければならない。
成年後見は、使ってしまえば途中で離脱できない(本来、成年後見は「サービス」であるはずなのに、法の執行者はいまだに「措置」の感覚が抜けないので、<家庭裁判所の許可>を条件とし、本人や家族の懇願を封殺する)。
こうならないためには2つの道がある。
何もしないか、家族信託契約を結ぶか。
いずれにしても早く親の異変に気づくことが第一。
気づかなければ何も始まらない。親の生活に関心をもってください。

<関連記事>◆◆ 家族信託のことがもっと分かる関連記事
認知症対策や相続を乗り切るために家族信託という手法がなぜ必要かを解説しています。

★やっぱり家族信託。認知症対策の切り札。後見に代わって親のお金の管理問題を解決します!!

 

<初出:2019/4/28 全面改訂:2023/1/29>

静岡県家族信託協会
行政書士 石川秀樹(ジャーナリスト)

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この記事を書いた人

石川秀樹 行政書士

石川秀樹(ジャーナリスト/行政書士) ◆静岡県家族信託協会を主宰
◆61歳で行政書士試験に合格。新聞記者、編集者として多くの人たちと接してきた40年を活かし、高齢期の人や家族の声をくみ取っている。
◆家族信託は二刀流が信念。遺言や成年後見も問題解決のツールと考え、認知症➤凍結問題、相続・争族対策、事業の救済、親なき後問題などについて全国からの相談に答えている。
◆著書に『認知症の家族を守れるのはどっちだ!? 成年後見より家族信託』。
◆近著『家族信託はこう使え 認知症と相続 長寿社会の難問解決』。
《私の人となりについては「顔写真」をクリック》
《職務上のプロフィールについては、幻冬舎GoldOnlineの「著者紹介」をご覧ください》

 

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