《家族信託のタイムリミット》★銀行がカギを握っている!認知症との診断ある・なしではない。凍結される前にためらわず行動を

家族信託

認知症との診断が出たら家族信託は無理ですか?」とよく聞かれます。答えは「急げば間に合う」。預金をおろしたり振込ができるなら何とかなります。迷っているより、家族信託をよく知る専門家に相談ください。行動する時機です。

親の行動に『あれっ!?』と思った時こそチャンス!

みんな、親の認知症に悩みます。
『あれっ!?』と思ったら、もう行動すべなのです。以前、こんな記事を書きました。
▼▼▼ ★家族信託の契約「認知症と診断されたら即アウト」ではない!


上の記事では、人の認知症の現れ方は千差万別なので診断書だけで即断すべきではない、と書きました。
認知症が進み「意思能力を失った」と言われるようになるまでには1、2年から数年かかります。
やっかいなのは「認知症」は人の脳が機能損傷を受けなんらかの症状が出て来る状態のことを言うので、軽度でも、重篤でも「認知症」とひとくくりにされがちだということ。

 

●契約能力あり、のケースが多い

症状だから、当然に濃淡(重い・軽い)はある。
だから「認知症」との診断が出ても、契約能力が十分残存している人もいるし、そうでない人もいる。
はっきりいって、「認知症という言葉」だけで<できる・できない>を分けられるわけがない。
そこは、本人の状態を見ながら判断すること。
逆にいえば、冒頭に書いたように「あれっ」と気づけたらチャンスだ。
サインが出ているのだから、行動に踏み出せるはず。

家族信託の実務家として書いているうちに、思ったことがある。
「診断が出たらダメ」「いや、OK」……問題はそこではない、と。
実際に家族信託ができるかできないかを分けるのは、銀行だ!
これこそがポイント。

こと「お金について」いえば、高いカベは「診断書」よりもだんぜん「銀行の判断次第」だと思う。
そもそも、委託者となる人が、自分の口座から預金を受託者が管理する口座に、首尾よく入金できるかがカギ
口座から引き出して振り込むにしろ、銀行窓口を通じて受託者用の口座に振り替えるにしろ、それができなければ信託は始まらない。
ヒント30px<ここがポイント>
信託する財産は、委託者の名義「A」から受託者名義の「B」に換えなければならないんです。
そこで父が「この口座の名義、Aから息子名義のBに換えてください」と言っても銀行は応じません。
銀行とお客さまとの契約には「譲渡禁止特約」が付いているので、ホイホイ受けるわけにいかない。
そこで委託者は一旦自分で預金をおろし、受託者の口座に振込まなければならないのです。

 

●信託財産が空っぽでは何もできない

家族信託の自由度は高いから、認知症対策に絞らなくても、将来の相続を見越して相当な対策を組み込んでおくことができる。
ある意味、家族信託は遺言を超えた最強の相続ツールだと私は思っている。
しかし緻密に練りに練って対策を立てたところで、「信託財産が空っぽ」では何もできない。

だから戦術として言えば、銀行のカベを攻略するのが第一
本人はすでに認知症初期の段階にいる。
症状が相当に進んだら銀行はその名義人(お客さま)の口座を凍結するだろう。
その前提のもとに、あなたに聞きたい。
銀行がお客さまの認知症を知るのは「診断書」だろうか?
違う。銀行は「診断書を見せて」などとは決して言わない。黙って凍結する。
その根拠は何か。
行員の観察眼やATMの“おかしな動き”ですよ!
銀行が疑念をもって口座を凍結したら、家族信託はもうできない。

 

銀行は容赦ないのに あなたはお人好し

家族信託をしたい場合、銀行は間違いなくその成否を左右する存在となる。
ところが、家族の認知症を心配して相談に来る人のほとんどは、銀行のことをこんな風に考えている。

「親自身のお金を預けているのだから、本人の意向も聞かずに銀行が凍結するはずがない」
あるいは「親の通帳(A通帳)の名義を受託者となる私名義(B通帳)に換えさせればいい」

なんというお人好し、楽観であろう。世間知らずにもほどがある。
銀行がそういう親切で気が利く存在である根拠など、どこにもない。
認知症で本人に意思能力がなければ「契約」は成立しないのだから、契約の一方の当事者の銀行が「(この人と取引すると)危ない」と判断すれば、銀行は一存で払出すか否かを決定する。
凍結したらお客さまやご家族が困るだろう、などという忖度(そんたく)は今の銀行には1ミリもない。

一方、頼めばいつでも親の「A通帳」を子の「B通帳」に名義変更してくれる、と思うのはあなたの錯覚だ。
銀行と預金者との契約(消費寄託契約)には「譲渡禁止特約」が設定されていることはポイント解説した通り。
信託に限らず、贈与の場合でも、口座名義換えてくれるなんてことは絶対にない。

 

銀行で「認知症」などと言うな!

平成から令和に時代は動いているのに、人々の銀行についての姿勢は昭和のままだ。
何も考えずにうかうかと、銀行の言いなりになっている。
”理不尽な対応”があり得るなんて、露ほども感じていないのではないか。
だから銀行の窓口で、平気でこんなことを言ってしまう。

母親の通帳と印鑑と、母の委任状を持参して、「母の定期預金を解約してください」。
例えば500万円の定期預金、そのまま質問一つすることなく解約手続きをしてくれる銀行があるなら、教えてほしい。
(第一、今どきの銀行、フロアに解約のための書類、もっといえば委任状を備えている銀行はほとんどない)
「代理で定期を解約したいので書類はどこにあるのか」と窓口かフロア係の行員に尋ねれば、「定期預金ですか? ご本人でなければ解約できません」とにべもなく答えるに違いない。
(定期預金を解約できるのは本人だけ。厳正なルールが今は確立しているのだから)

それでも『なんとかなる』と思っているあなたは不用意に「母は近ごろ物忘れが激しくて……」と発言するかもしれない。
余計な一言が、銀行の用心深さにスイッチを入れることになる。
詳しく様子を聞かれ、認知症だと疑われれば、口座はその場で凍結されてしまいかねない。

 

銀行の成年後見誘導、真に受けてはならない

認知症と話せば、委任状があるし対応してくれるはず」と思った自分の甘さを恨むしかない。
「口座を止められたら母の死活問題です。銀行が責任を取ってくれるんですか!?」
と息巻いても、行員はこう言うだろう。
「大丈夫ですよ。成年後見人を付ければ解除できます」

うのみにしてはならない。
行員その他、幹部、役員まで含め、成年後見という制度を熟知している“銀行の人”はほとんどいない。
だから「あなたが成年後見人になってください。そうすればおろすことができますよ」などと、現実離れしたことを平気で口にする。
(家族が成年後見人になれる確率は20%を切っている。流動資産額が1000万円以上あれば親族後見は無理、というのが現実だ)。
行員が繰り返す「成年後見制度」がどんなものであるかは、コチラをお読みいただきたい。

▼▼▼ ★使ってはいけない「成年後見」。認知症対策の切り札にはならない !!

《完全版》★使ってはいけない「成年後見」。認知症対策の切り札にならない。その災厄は家族を巻き込み、離脱できず苦悩が続く!

 

軽々しく「認知症」というな

銀行はもはや、昭和の時代の親切な「みなさまの窓口」ではない。
だから、「認知症」への対応で家族を思いやって何とか融通を利かしてくれるどころか、「認知症」と聞けば身構え、口座を“凍結”しにかかる。

銀行に限らず、こんりんざい、他人に「母が認知症なので」などと話してはいけない。
友達にも近所の人にも、郵便局や、保険の営業員にもだ。
認知症であるかどうかは、今や究極の個人情報だ
言って得することは1つもない。わざわざ触れて回る情報ではない!

 

カードがあれば安心、も幻想

カードを持っていれば大丈夫だと思っている人がいる。
大勢の人がそう思っているはずだ。「親の代わりにいつでも引き出せる」と。
これも現実を知らない、”危険な楽観”だ
最近の銀行は、特殊詐欺事件の横行もあって、キャッシュカードによる不自然なお金の動きに目を光らせている。
ATMで1日の限度額いっぱいを連日おろすようなことをすれば、銀行が電話を掛けてきて「何にお使いですか?」と大金をおろした理由を聞くだろう。

そんなことがなくても、磁気不良やICチップが壊れて使えなくなることもある。
高齢者は、カード“紛失事故”を起こすのが大の得意だ。
仏の顔も三度まで。
銀行はすでに2回目までに『この人、認知症なのでは?』と疑っている。
しかしあなたが本人に代わって銀行と交渉するようなことは避けた方が無難だ。
「ご本人様ですか?」から始まり、言葉巧みにお宅で起きている事情を探られる。
カード1枚の再発行が、高齢者にはとても高いハードルになりかねない。

 

●社長の認知症で会社はストップ

ついでなので、これも説明しておきたい。
次のようなことが、認知症になるとできなくなる。

  1. 定期預貯金の解約
  2. 生命保険の契約条件変更、あるいは保険金の受取
  3. 上場株式などの解約、取引の中止
  4. 本人名義の不動産の売却、建替え、賃貸
  5. アパート・マンションなど収益不動産の契約更新や補修
  6. 会社の重要事項の意思決定

なぜかと言えば、1―5までは「契約行為」、6は「自社株の議決権行使」だから。

契約行為はすべてストップすると思っていい。
建設工事などは長期に渡り、その間、契約し直すこともしばしば。
その要(かなめ)の人が認知症になれば、工事は止まってしまう。
会社のオーナーで自社株式を多数持っている場合はもっと大事を引き起こす。
認知症が深刻化すれば(それが社内の誰もがわかるほど深刻なら)議決権を無理やり行使すれば社内を揺るがす混乱を招くし、行使しなければ何も決められず社業は宙に浮く。
社長の認知症は会社を機能停止に追い込む。

そしてさらに家族を困惑させることと言えば―――
「遺産分割協議」が行えなくなること!
協議成立には、法定相続人全員の署名と実印による捺印が必要。
捺印は「納得しました、異議はないです」と言うことだから、本人が意思表示できなければ形式的なハンコが打たれていても協議書は無効だ。
(全員で口裏を合わせれば、ですか? 全員が協議に納得していれば可能かもしれないが、不満があると“造反”はいつでも起こり得る)
遺産の分割が永久にできないのでは困ってしまうので、成年後見人を立てることになる。

 

成り行き任せでは何ともならない!

以上のように「たかが認知症(ただのよくある病気のひとつ)」にすぎないのに、この病気の影響は極めて甚大だ。
世の中の権利関係を律する法律は「民法」だが、その民法は、人が正常な判断能力を持っていることを前提にしている。
その「前提」を根本的に揺るがす病気が認知症だ。
だから、家族の中に認知症の人がいるということは、介護が大変になる、ということだけでは済まない重大事になる。

ところが、あなたの対応はどうだろう、そこまで深刻だと思っていただろうか。
お母さんやお父さんの様子がおかしい、と感じたら、見過ごしてはいけない。
(先日も書きましたが---)

★認知症対策に3つの選択肢。「間に合ううちに家族信託」がベストだ!

  1. 「何もしない」ことも策の1つではある。しかしそのためには、間に合ううちにそれなりの対策を講じる必要がある
  2. 公的後見制度を申し立てることを覚悟する
  3. 家族信託使うべきケースか、よく考える

認知症は必ず進行するので、成り行き任せで何とかなる、ということは決してない。

 

預金を動かせなければ、即アウト!

結論が最後になってしまった。
家族信託認知症対策としてベストな選択だと私は思うが、手遅れになれば(契約行為だから)契約自体が不可能になる。
「まだ契約できる」という基準は何か?

至極単純なこと。
銀行で「定期預金の解約を断られる(つまり「凍結」される)」ようなら、家族信託は、したくてもできなくなる。
家族で綿密に打ち合わせ、完ぺきな家族信託の契約書を作ったとしても、意味がない。
信託するお金を用意できないわけだから。

銀行に行くおじいさん

銀行に定期預金の解約に行くおじいさん

現代人は驚くほど手元に現金を持っていない。
銀行で積み立てをしてしまう。
何百万円かたまると、時機を計っていたかのように「定期預金に」と行員は声を掛ける。
さらには「生命保険を」「投資信託はどうですか?」とたたみかける。
大きなお金がみすみす「動かせないお金」に変わってしまっている!

 

70歳を過ぎたら家族信託

私は、70歳の私と80歳以降の私では、「同じ人間でいられない」と思っている。
いつまでも元気で、判断力にも衰えなし、なんて人はいないだろう。
自分だって例外ではない、と思っている。

だから、行動を起こすとしたら70歳代前半だ。
自分の基準をもって、「お金のことは子に任せる」べく手を打とうと考えている。
さしあたって家族信託契約で憂いを除き、遺言も書いてすべての「落とし穴」をふさいでおく。
成り行き任せでは、認知症あり、脳梗塞ありの「人生100年時代」を乗り切れない
わずかな運不運で寝たきりになり、意思能力を失う恐れもあるこの時勢、安閑とはしていられない。

元気なうちにあなたも賢明な判断を。
お金を抱え込んで離さない生き方は、得策ではないですよ。
あなたの判断能力が落ちたら、そのお金、凍結されてしまうのだから!
そうなれば、救済のための最強ツールである家族信託をすることもできなくなる。
銀行で定期預金を解約できるうちに、どうすれば安全かを考えてください。

<初出:2018/12/20 最終更新:2024/2/26>

静岡県家族信託協会
行政書士 石川秀樹(ジャーナリスト)

 

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この記事を書いた人

石川秀樹 行政書士

石川秀樹(ジャーナリスト/行政書士) ◆静岡県家族信託協会を主宰
◆61歳で行政書士試験に合格。新聞記者、編集者として多くの人たちと接してきた40年を活かし、高齢期の人や家族の声をくみ取っている。
◆家族信託は二刀流が信念。遺言や成年後見も問題解決のツールと考え、認知症➤凍結問題、相続・争族対策、事業の救済、親なき後問題などについて全国からの相談に答えている。
◆著書に『認知症の家族を守れるのはどっちだ!? 成年後見より家族信託』。
◆近著『家族信託はこう使え 認知症と相続 長寿社会の難問解決』。
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