2022.01.07
《家族信託は全国対応しています》★信託の契約書作成とコンサルティング/受託者への支援
実家の父が認知症!? 心配だから家族信託をしたいけれど、近くに専門家が見つからない。どうしよう……。 こんな方、少なくないのでは? 誰に相...
2022.01.07
実家の父が認知症!? 心配だから家族信託をしたいけれど、近くに専門家が見つからない。どうしよう……。 こんな方、少なくないのでは? 誰に相...
もっと家族信託! 石川秀樹のブログです
居宅売却家族信託は、今もっとも需要がある家族信託です。
表題の通り、家族信託契約を締結したら居宅不動産(家屋と土地)の名義を[委託者の名→受託者 信託太郎]に変更登記します。
不動産の名義は完全に[A→受託者 B]に換えるわけですから、所有者(委託者になる人)はドキドキするかもしれません。理屈では了解していても。
でも「所有者が換わったように見せる」(正確にいえば、登記上の「権利者欄」に書かれる名前が換わるということですが)というのが、家族信託の最大の特徴であり、本質なんです。
名義が換わるからこそ(AではなくBが権利者として、その不動産を管理処分する人になる)、Aの意思能力や判断力とは切り離されて、その不動産を第三者Bが処分できるようになるのです。民法の下なら成年後見人に代行させるしかなかったことを。
この《信託という方法》最初はとっつきにくいと思いますが、ここが分かれば「家族信託」が理解できるようになります。
Table of Contents
現役時代に長い長いローンを組んでやっと手に入れた自宅は、見方を変えれば“目減りしない年金”です。
ただし、ちゃんと換金できれば――という話です。
有料老人ホームや介護施設に入所するときには大きなお金が必要。だから『いざとなったらこの家を・・・』
多くの人がそう考えますが、実は“落とし穴”も待っています。
老後の最大の敵は、認知症です!
以前はそれほど注目されていなかった敵ですが、今はそんなことを言ってはいられません。
銀行に「口座の名義人が認知症⁉」と見抜かれると口座は凍結、自分の預金なのに下ろせなくなります。
認知症が深刻化すると、契約能力を失ったとみなされる。「だから契約は無効」といわれれば、まあ、その通りですが。
あなたの周りにも1人や2人、認知症の友人・知人がいるかもしれませんね。
なのにあなたは「ひとごと(自分の身には起きない)」と思っているでしょう?
確率の問題なので、誰にでもリスクはあるのに。
(「確率」と書いたのは、こんな研究があるからです。85歳を過ぎると2人に1人は認知症になるわけです)
銀行のこともさることながら、「家を売る」といっていても予定通りにはいかない、というのが今日の解説の出発点です。
ひどい認知症の人は、物事の理解力が落ちますから、「契約能力がない(失われた)」と見られてしまいます。
そこまでひどくなくても、不動産売却などの大きな契約では、契約当事者(売る人・買う人)はピリピリしていますから、相手が認知症で判断能力が怪しいとわかればハンコなんか押しません。また司法書士もプロですから、資格はく奪を恐れて所有権移転の登記を断るでしょう。
なぜなら民法にはこう書いてあるからです。
[法律行為の当事者が意思表示をした時に意思能力を有しなかったときは、その法律行為は、無効とする。](民法第3条の2)
こうなると、いくらあなたが前々から計画していても、家は売れません。
そんなことにならないようにするために最近出てきたのが、「家族信託」という手法です。
家族信託の“黄金法則”は「名義を換える」です。
不動産の場合は、非常に分かりやすい。
家族信託契約が成立したら、すぐに委託者(例えば父)の所有権を受託者(例えば娘)に換えなければなりません。
実務的に言えば、不動産の名義を「父→娘」に所有権移転の登記をするわけです。
『ずいぶん面倒で大げさだなぁ』と思いましたか?
でも、家族信託では、これがルールです。
登記をしなければ信託の効力は発揮されません!
お金も、株式や債権だって、名義を換えなければなりません。
「お金に名札なんてないじゃないか!」
そうですよね、お金には名前を付けようがない。
だから受託した人は、自分が管理することになる通帳の名義を換えるんです。
このように書くと誤解される方がいらっしゃるので、もう少していねいに説明します。
「委託者:父」の通帳の名義を、銀行が「受託者:娘」と名義書き換えしてくれるわけではありません。
(それをしてくれれば楽なのですが、預金契約には「譲渡禁止」特約があるので無理なんです)
では、どうするか。
父(大木太郎)がまず自分の口座から預金をおろします。
※だから委託者には、大金をおろすという意思がなければなりません。
そのお金を、娘があらかじめ作っておいた銀行の信託口口座の通帳「信託受託者 松田ダリア」名義の通帳に振り込みます。
銀行は公正証書で作った信託契約書をあらかじめチェックすることを要求します。
(銀行との交渉は、信託に精通した専門家に頼んだ方が無難です。銀行もピリピリしており、信託契約のかなら細かな条項の真意などを聞いてきます。契約条項の一つひとつについて内容を理解していないと、銀行法務部の質問に答えられないと思います。)
あなたが家族信託をしたいと思うなら、不動産や預金(現金)について、所有権移転の手続きは必ずしなければなりません。
この時問題になるのは、委託者になる人が<信託するという意味を十分に理解しているか>ということ。
「名義を書き換えたら、そのまま取られてしまうことにならないか⁉」
「父から娘への贈与にならないか?」
「娘は贈与税まで払って私のために動いてくれるか」
と、考えるかもしれません。
財産を“渡す”側としては当然の不安です。
答えは、「取られることにも、贈与したことにもならない」です。
その理由は、こういうことです。
父としては『娘を代理人にすることもなく財産を渡しちゃって、大丈夫か?』と不安なのでしょう。
確かに家族信託は、成年後見制度とは違います。
代理人は立てません。成年後見なら「国が認める代理人」をたてるのに、です。
普通の日本人がよく慣れている法律行為は「代理」くらいしかないでしょう。
「信託」なんて聞いたこともない。
「そんなに不安なら、成年後見制度を使いますか?」
あんまり「心配」「心配」といわれ続けると、こう返したくもなります。
でも、そう思う人が大部分だと思うので、あらためて成年後見制度を説明しておきます。
認知症患者になったら法律行為は何もできなくなる、では困ってしまいます。
だから国は、家庭裁判所という権威のある“重し”を付けて、成年後見を「公的な代理人制度」にしたんです。
それが▼成年後見・保佐・補助という法定後見。
さらには、後見される人が後見役を自由に選べる▼任意後見契約という仕組みも用意した。
これがいわゆる成年後見制度です。
2000年にこの制度が発足して足掛け20年。
今ではいちおう定着して、銀行など金融機関や地域包括センターなどでは、しきりに「この制度を使え」と言って皆さんを困惑させています。
成年後見制度はどこまでいっても「民法」を法規範とする<委任と代理>という観念あっての制度です。
これに対し家族信託は、委任も代理も関係ありません。
人の能力を根拠にしてしまうと、「意思能力が・・・」など言われてしまいますから、信託は財産そのものに着目したんです。
この意味、わかりますか?
民法は財産を見ないで、誰が持ち主か、ばかりに気を取られている。
そして、財産の持ち主(=所有者)のみが財産に対して「財産について使用収益、処分ができる」(民法民法第206条)とした。
だから民法の考えでは、どうしても所有者の代わりとなる人が必要になってしまう。
所有者の意思能力の問題が出てくれば、ついには成年後見人というスーパー(超)公的な代理人まで創った。
「人間」を中心にして法律を考えると、こうなります。
一方、信託法が注目しているのは「財産」そのもの。
不動産やお金や、株式です。
これらにももちろん持ち主がいて「所有権」という権限をもっている。
持ち主だからこそ、その財産に対してどのような処分をしてもいい(ここは民法的に考えている)。
「それなら初めから、持ち主を換えちゃったら⁉」というのが家族信託の発想です。
ただ、「所有権」を人に移せる方法はかなり限られています――交換・売買・譲渡・寄付・贈与・相続・財産分など。
だから簡単に「名義書き換え」などというと、ほぼ間違いなく「贈与」として扱われることになってしまいます。
家族信託の場合は、上げる方(委託者)にしてももらう方(受託者)にしても、本気であげたりもらいたいわけではない。
ただ、父のために財産を処分してあげたいだけ。
所有者のふりをして、あるいは一瞬でいいから所有者になって父が願う処分をしてあげる。
これが目的。ずっと「所有者(名義人)」になりたいということではないんです。
いわば便宜的な持ち主を作るということ。
民法の特別法として「信託法」が、日本でも大正時代になって、できました。
ここから先は理屈で「信託」を解説すると非常に分かりにくいので、本題の「居宅売却家族信託」のシーンを想像しながら、X(父)とY(娘)との対話形式で説明しましょう。
X:不動産の所有者(信託契約の「委託者」)
Y:不動産の処分を頼まれる人(信託契約の「受託者」)
■ □ ■
X:将来、マイホームを売却することをYに頼みたい。私が認知症になったらお前に迷惑をかけないよう私は施設に入る。しかしその時には、私の判断能力は落ちているかもしれない。そうなると私がいろいろな手続きや契約をするのは無理だ。それはお前にやってもらいたい。
Y:わかったわ。でも私は家と土地の所有者ではないから契約できないのでは? 今からお父さんと「代理人」の契約を結んでも、居宅の売却では本人の意思確認が厳重だと聞いています。お父さんが認知症だと、誰も契約しないし、登記もできないと思うわ。
X:だからお前にこの家の所有権を移すのさ。いま私の住まいと土地の名義は「X」。それを「Y」に換えて登記するんだよ。
Y:えっ⁈ それでは私が不動産をお父さんからもらってしまったことにならない? 贈与税がかかってしまうでしょ。
X:そうならないように「標(しるし)」を付けるんだよ。私が不動産をあげるのではなく、娘に不動産を管理・処分してもらいたいために「名義だけを娘に与えた」という標さ。
Y:そんなことができるの?
X:できるさ。それが「家族信託」だよ。「所有権移転」の登記と「信託の登記」というのを同時に行う。
Y:「信託の登記」ですか?
X:実物を見た方が早そうだ。信託契約書の“要約版”を登記簿に掲載するんだよ。
X: これが登記事項証明書だよ。大事なことは右端の枠「権利者その他の事項」欄に書いてある。
「順位番号」1に私の名前が出ているだろう? 昭和56年11月18日に所有権保存登記をした。
「順位番号」2を見てごらん。所有権移転と出ているだろう。登記原因は「信託」だ。「松田ダリア」とちゃんと書かれているだろう。
Y:「受託者 松田ダリア」なのね。お父さんの欄だと「所有者 大木太郎」なのね。
X:それが工夫だよ。信託では、ダリアは権利者であるのに「所有者」とは書かずに「受託者」と付けている。本当の所有者とは違うことを表現しているんじゃないかな。ダリアは不動産の処分(売買や賃貸など)権限者だけれども、本当の所有者とはちょっと違うからね。「所有権移転」の原因も「信託」だろう。
Y:なるほどねぇ。信託っておもしろい。本当の所有者はお父さんなの?
X:少なくとも税務署はそのように判断しているようだね。でも本当のところ、[誰のものでもない不動産」というべきだね。<所有>という観念が宙に浮いていて、不安定な財産のあり方だと思う。
Y:注意深く登記を見ないと、お父さんの家が信託されているのか分かりにくいわね。
X:あーっ、その辺は大丈夫さ。ちょっと下を見てほしい。「信託目録」と書いてあるだろう。その後ろにズラズラっと書いてあるのが、信託契約の内容を要約したものさ。相当長いだろう。土地の登記にも家屋の登記にもこの「目録」は付いている。これを見れば、何も事情を知らない第三者でも、この不動産は信託によって権利権が「大木太郎→松田ダリア」に移転したことが一目でわかるだろ?
Y:そうね。でも、「信託」だと本当に私が所有者になっても贈与税はかからないの?
以上のように、家族信託契約と同時に「所有権移転」と「信託の登記」をしておけば、Yはれっきとしたこの不動産の名義人(所有者)となり、Xの健康状態がどのようであろうと、Yはこの不動産の売買などの処分行為を自由にすることができます。
「自由に」というと何でもできてしまうので、信託契約では契約書の冒頭に「信託の目的」を書き、この不動産をどのような時に、どのような範囲で処分していいかを、決めておきます。
登記の理由には、「信託」とはっきり書かれている(上記の赤い丸)。
その下には、デカデカと信託契約の概要を書いた「信託目録」が掲載される。
登記簿(登記事項証明書)にここまで書かれていれば、この建物と土地は「XがYに信託したもの」であることは誰の目にもあきらかです。
一方、売買をするなどの場合の当事者(つまり契約書に署名し実印を押す人)は、「XではなくYであること」までが公示されているのです。
時々、委託者になる方が「土地を盗られるみたいで嫌だ」と、家族信託に反対することがあります。
お金でもそうです。
自分の通帳の預金が空になり、子の通帳にお金が移る。
それは財産を分別管理をするため(親から預かったお金と受託者自身のお金とまぜこぜにしないため)にしていることなのですが、“不安”を押さえられない、という人がいるのです。
そこを超えてもらわないと、信託は成立しません。
この点、不動産については「権利者欄の名前は子に移っている」ものの、<「所有者」としてではなく「受託者」>しかも「信託目録」付きですから、普通の所有権移転とは異なる登記、信託による移転であることが一目瞭然ですから「安心でしょう?」と、私は考えています。
娘Yの最後の疑問にも答えておきましょう。
信託で不動産の所有権を移転しても、新所有者に贈与税はかかりません。
家族信託の当事者は、▼委託者、▼受託者、それに▼受益者です。
「受益者」は信託財産から何らかの利得を受ける人。
今回の例で誰が得をするかというとお父さん(X)。
だからXは委託者であると同時に受益者です。
不動産は元々Xのものでした。
それを将来の処分のためにYに所有権を移したけれども、実質的な利得を受けるのはXだけ。
Xはこれまでと同様“自分の家”に住めるし、マイホームを売って得られるお金も「信託財産」として先ほど紹介した赤い通帳(大木太郎 信託受託者 松田ダリア名義)に保管され、Xの生活費や療養費等として娘から支給されることが決まっています。
自分の財産をいったん預けているけれども、その財産から生じる利得は全部自分に返ってくる。
娘(Y)は、管理・処分の義務だけを負い1円も利得を受けない「財産管理人」にすぎません。
だからYに贈与税はかからないんです。
今回の「居宅売却家族信託」に合わせてX、Yの関係を示せば、以下のようになります。
実にシンプル。登場人物は2人しかいません。
委託者と受託者、もう1人「受益者」がいるはずですが、委託者が受益者でもある場合が家族信託では圧倒的に多いので、今回のような構成になることがほとんどです。
さて、信託契約を結んでも父の生活は今まで通りです。
受託者のYも当面、することがありません。
※固定資産税は「Y」宛てに届くので、Yはその支払いだけはすることになります。信託財産からそのコストを払います。
お父さんの認知症が進むと、いよいよ施設探し。
同時に父の居宅売却を検討します。
入居一時金は多額で、しかも一度施設に入れば継続的に費用がかかります。
そこでかねての想定通り(契約書に書いた通り)、受託者は父の居宅を売却することにします。
将来の認知症に備え居宅を売却することは家族信託でなければできないのでしょうか。
任意後見契約や成年後見制度を使っても、できなくはありません。
ただ、「家を失う」ことは重大事ですから、成年後見制度の下でこれを行うときは、家庭裁判所の許可を得ることになっています。
家裁は、他に金融資産がなく、居宅売却以外にお金を得る方法がないときに限り許可を出すならいです。
お手軽に「困ったら居宅売却」というわけにはいきません。
さらに、家を売って得られた金銭は、家族ではなく後見人等が管理することになります(これは当然のことですが)。
成年後見制度のうち公的後見(成年後見・保佐・補助)は、家庭裁判所が職権で審判するので本人や家族の希望通りの後見人(多くの人は家族後見を望んでいる)を選べないという難点もあります。
そこで、好きな人を選任できる任意後見契約があります。
この任意後見なら後見人は本人の希望を聞いて適宜のタイミングで居宅を売却してくれるでしょうか?
理論的には「できる」といいたいところですが、任意後見人には必ず任意後見監督人として司法書士か弁護士が付けられるうえ、そのバックには家庭裁判所が存在します。
そう考えると、任意後見監督人に相談、報告もしないで居宅の売却を進めることは、事実上難しいといわざるを得ません。
これは不都合のように見えますが、成年後見であれ任意後見契約であれ、その前提は「依頼者(被後見人)はすでに判断能力を失っている」ということにありますから、本人の代理人が好き勝手に家を売ることを許すと本人に大きな不利益が生じる恐れがあります。
「不自由」であることは本人を守ることにも通じるわけですから、制度的には、やむを得ない制約でしょう。
では家族信託では?
まさにこの事態を想定して家族信託の契約書を作っているのですから、受託者は適宜のタイミングで居宅売却を決定できます。
契約書に「信託目的」として居宅売却のことをきちんと書いておけば、受託者は制約を受けずに行動を起こすことができます。
今回は居宅売却家族信託の解説が主なので「信託目的」を単純化しました。
居宅を売却するときに、移り住む施設を決めるようなことも当然、受託者の仕事になりますが、仕事はそれだけにとどまりません。
実際の信託契約では、受託者にもう少し複雑で多様な仕事をしてもらうこともできます。
例えば、ひとり暮らしの父の「見守り」。
受託者が父親と同居できない事情がある場合、父のためにセキュリティ会社と契約を結び、異変があったときには連絡をもらう、ということが考えられます。
また、父が暮らしやすくなるようリフォームの指揮をとる―—なども任務とすることができます。
さらに、よく質問を受けるのですが、意思能力を喪失した人の医療や介護等の手続きは本人では難しくなります。「だから成年後見を」と言われるのですが、その認識は誤っています。難しい言葉で<身上保護>といわれますが、この保護権は元来、家族が自然の形で担ってきました。今もそれは変わりません。
ですから、家族信託でできることは財産管理だけだから、同時に任意後見契約もしておかなければいけない、ということはありません。
いずれにしても、家族信託の契約書を書くときは、将来、あるいは近い将来に起こりそうなことを想像して、どのような場合でも対応できる契約内容にすることが大事です。
本人や家族がよく話し合って「想像する力」が、よい家族信託契約をするための条件になります。
父が亡くなると、この信託は終了することになっています。
残余財産を得る人は契約で決まっており、「帰属権利者」といいます。
契約により今回の帰属権利者は、受託者のYです。
残余財産?
「でも、居宅を売った場合と売らなかった場合とでは、残余財産は違うんじゃないの?」
その通りです。
家が残っていればそれも残余財産。
売れていれば居宅はお金に代わり、信託金融資産に追加されています。
家が残っている場合、受託者(長女)は「清算受託者」として、家を現状のまま承継してもいいし、売却して現金に換えてから承継することもできます。
(処分法についても契約書にあらかじめ書いておきます)
家族信託は財産承継にあたっても変幻自在で、柔軟です。
将来を予測していろいろな対応法を用意しておけば、遺言より確実に財産を引き継ぐことができるわけです。
もっとも、予測がきちんとできていないと………
思いがけない出来事により信託契約そのものが暗礁に乗り上げかねませんから、計画はち密でなければなりません。
最後に、今回の家族信託にかかる税金のことに触れておきましょう。
<最終更新:2023/6/11>
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居宅売却家族信託は、今もっとも需要がある家族信託です。
表題の通り、家族信託契約を締結したら居宅不動産(家屋と土地)の名義を[委託者の名→受託者 信託太郎]に変更登記します。
不動産の名義は完全に[A→受託者 B]に換えるわけですから、所有者(委託者になる人)はドキドキするかもしれません。理屈では了解していても。
でも「所有者が換わったように見せる」(正確にいえば、登記上の「権利者欄」に書かれる名前が換わるということですが)というのが、家族信託の最大の特徴であり、本質なんです。
名義が換わるからこそ(AではなくBが権利者として、その不動産を管理処分する人になる)、Aの意思能力や判断力とは切り離されて、その不動産を第三者Bが処分できるようになるのです。民法の下なら成年後見人に代行させるしかなかったことを。
この《信託という方法》最初はとっつきにくいと思いますが、ここが分かれば「家族信託」が理解できるようになります。
現役時代に長い長いローンを組んでやっと手に入れた自宅は、見方を変えれば“目減りしない年金”です。
ただし、ちゃんと換金できれば――という話です。
有料老人ホームや介護施設に入所するときには大きなお金が必要。だから『いざとなったらこの家を・・・』
多くの人がそう考えますが、実は“落とし穴”も待っています。
老後の最大の敵は、認知症です!
以前はそれほど注目されていなかった敵ですが、今はそんなことを言ってはいられません。
銀行に「口座の名義人が認知症⁉」と見抜かれると口座は凍結、自分の預金なのに下ろせなくなります。
認知症が深刻化すると、契約能力を失ったとみなされる。「だから契約は無効」といわれれば、まあ、その通りですが。
あなたの周りにも1人や2人、認知症の友人・知人がいるかもしれませんね。
なのにあなたは「ひとごと(自分の身には起きない)」と思っているでしょう?
確率の問題なので、誰にでもリスクはあるのに。
(「確率」と書いたのは、こんな研究があるからです。85歳を過ぎると2人に1人は認知症になるわけです)
銀行のこともさることながら、「家を売る」といっていても予定通りにはいかない、というのが今日の解説の出発点です。
ひどい認知症の人は、物事の理解力が落ちますから、「契約能力がない(失われた)」と見られてしまいます。
そこまでひどくなくても、不動産売却などの大きな契約では、契約当事者(売る人・買う人)はピリピリしていますから、相手が認知症で判断能力が怪しいとわかればハンコなんか押しません。また司法書士もプロですから、資格はく奪を恐れて所有権移転の登記を断るでしょう。
なぜなら民法にはこう書いてあるからです。
[法律行為の当事者が意思表示をした時に意思能力を有しなかったときは、その法律行為は、無効とする。](民法第3条の2)
こうなると、いくらあなたが前々から計画していても、家は売れません。
そんなことにならないようにするために最近出てきたのが、「家族信託」という手法です。
家族信託の“黄金法則”は「名義を換える」です。
不動産の場合は、非常に分かりやすい。
家族信託契約が成立したら、すぐに委託者(例えば父)の所有権を受託者(例えば娘)に換えなければなりません。
実務的に言えば、不動産の名義を「父→娘」に所有権移転の登記をするわけです。
『ずいぶん面倒で大げさだなぁ』と思いましたか?
でも、家族信託では、これがルールです。
登記をしなければ信託の効力は発揮されません!
お金も、株式や債権だって、名義を換えなければなりません。
「お金に名札なんてないじゃないか!」
そうですよね、お金には名前を付けようがない。
だから受託した人は、自分が管理することになる通帳の名義を換えるんです。
このように書くと誤解される方がいらっしゃるので、もう少していねいに説明します。
「委託者:父」の通帳の名義を、銀行が「受託者:娘」と名義書き換えしてくれるわけではありません。
(それをしてくれれば楽なのですが、預金契約には「譲渡禁止」特約があるので無理なんです)
では、どうするか。
父(大木太郎)がまず自分の口座から預金をおろします。
※だから委託者には、大金をおろすという意思がなければなりません。
そのお金を、娘があらかじめ作っておいた銀行の信託口口座の通帳「信託受託者 松田ダリア」名義の通帳に振り込みます。
銀行は公正証書で作った信託契約書をあらかじめチェックすることを要求します。
(銀行との交渉は、信託に精通した専門家に頼んだ方が無難です。銀行もピリピリしており、信託契約のかなら細かな条項の真意などを聞いてきます。契約条項の一つひとつについて内容を理解していないと、銀行法務部の質問に答えられないと思います。)
あなたが家族信託をしたいと思うなら、不動産や預金(現金)について、所有権移転の手続きは必ずしなければなりません。
この時問題になるのは、委託者になる人が<信託するという意味を十分に理解しているか>ということ。
「名義を書き換えたら、そのまま取られてしまうことにならないか⁉」
「父から娘への贈与にならないか?」
「娘は贈与税まで払って私のために動いてくれるか」
と、考えるかもしれません。
財産を“渡す”側としては当然の不安です。
答えは、「取られることにも、贈与したことにもならない」です。
その理由は、こういうことです。
父としては『娘を代理人にすることもなく財産を渡しちゃって、大丈夫か?』と不安なのでしょう。
確かに家族信託は、成年後見制度とは違います。
代理人は立てません。成年後見なら「国が認める代理人」をたてるのに、です。
普通の日本人がよく慣れている法律行為は「代理」くらいしかないでしょう。
「信託」なんて聞いたこともない。
「そんなに不安なら、成年後見制度を使いますか?」
あんまり「心配」「心配」といわれ続けると、こう返したくもなります。
でも、そう思う人が大部分だと思うので、あらためて成年後見制度を説明しておきます。
認知症患者になったら法律行為は何もできなくなる、では困ってしまいます。
だから国は、家庭裁判所という権威のある“重し”を付けて、成年後見を「公的な代理人制度」にしたんです。
それが▼成年後見・保佐・補助という法定後見。
さらには、後見される人が後見役を自由に選べる▼任意後見契約という仕組みも用意した。
これがいわゆる成年後見制度です。
2000年にこの制度が発足して足掛け20年。
今ではいちおう定着して、銀行など金融機関や地域包括センターなどでは、しきりに「この制度を使え」と言って皆さんを困惑させています。
成年後見制度はどこまでいっても「民法」を法規範とする<委任と代理>という観念あっての制度です。
これに対し家族信託は、委任も代理も関係ありません。
人の能力を根拠にしてしまうと、「意思能力が・・・」など言われてしまいますから、信託は財産そのものに着目したんです。
この意味、わかりますか?
民法は財産を見ないで、誰が持ち主か、ばかりに気を取られている。
そして、財産の持ち主(=所有者)のみが財産に対して「財産について使用収益、処分ができる」(民法民法第206条)とした。
だから民法の考えでは、どうしても所有者の代わりとなる人が必要になってしまう。
所有者の意思能力の問題が出てくれば、ついには成年後見人というスーパー(超)公的な代理人まで創った。
「人間」を中心にして法律を考えると、こうなります。
一方、信託法が注目しているのは「財産」そのもの。
不動産やお金や、株式です。
これらにももちろん持ち主がいて「所有権」という権限をもっている。
持ち主だからこそ、その財産に対してどのような処分をしてもいい(ここは民法的に考えている)。
「それなら初めから、持ち主を換えちゃったら⁉」というのが家族信託の発想です。
ただ、「所有権」を人に移せる方法はかなり限られています――交換・売買・譲渡・寄付・贈与・相続・財産分など。
だから簡単に「名義書き換え」などというと、ほぼ間違いなく「贈与」として扱われることになってしまいます。
家族信託の場合は、上げる方(委託者)にしてももらう方(受託者)にしても、本気であげたりもらいたいわけではない。
ただ、父のために財産を処分してあげたいだけ。
所有者のふりをして、あるいは一瞬でいいから所有者になって父が願う処分をしてあげる。
これが目的。ずっと「所有者(名義人)」になりたいということではないんです。
いわば便宜的な持ち主を作るということ。
民法の特別法として「信託法」が、日本でも大正時代になって、できました。
ここから先は理屈で「信託」を解説すると非常に分かりにくいので、本題の「居宅売却家族信託」のシーンを想像しながら、X(父)とY(娘)との対話形式で説明しましょう。
X:不動産の所有者(信託契約の「委託者」)
Y:不動産の処分を頼まれる人(信託契約の「受託者」)
■ □ ■
X:将来、マイホームを売却することをYに頼みたい。私が認知症になったらお前に迷惑をかけないよう私は施設に入る。しかしその時には、私の判断能力は落ちているかもしれない。そうなると私がいろいろな手続きや契約をするのは無理だ。それはお前にやってもらいたい。
Y:わかったわ。でも私は家と土地の所有者ではないから契約できないのでは? 今からお父さんと「代理人」の契約を結んでも、居宅の売却では本人の意思確認が厳重だと聞いています。お父さんが認知症だと、誰も契約しないし、登記もできないと思うわ。
X:だからお前にこの家の所有権を移すのさ。いま私の住まいと土地の名義は「X」。それを「Y」に換えて登記するんだよ。
Y:えっ⁈ それでは私が不動産をお父さんからもらってしまったことにならない? 贈与税がかかってしまうでしょ。
X:そうならないように「標(しるし)」を付けるんだよ。私が不動産をあげるのではなく、娘に不動産を管理・処分してもらいたいために「名義だけを娘に与えた」という標さ。
Y:そんなことができるの?
X:できるさ。それが「家族信託」だよ。「所有権移転」の登記と「信託の登記」というのを同時に行う。
Y:「信託の登記」ですか?
X:実物を見た方が早そうだ。信託契約書の“要約版”を登記簿に掲載するんだよ。
X: これが登記事項証明書だよ。大事なことは右端の枠「権利者その他の事項」欄に書いてある。
「順位番号」1に私の名前が出ているだろう? 昭和56年11月18日に所有権保存登記をした。
「順位番号」2を見てごらん。所有権移転と出ているだろう。登記原因は「信託」だ。「松田ダリア」とちゃんと書かれているだろう。
Y:「受託者 松田ダリア」なのね。お父さんの欄だと「所有者 大木太郎」なのね。
X:それが工夫だよ。信託では、ダリアは権利者であるのに「所有者」とは書かずに「受託者」と付けている。本当の所有者とは違うことを表現しているんじゃないかな。ダリアは不動産の処分(売買や賃貸など)権限者だけれども、本当の所有者とはちょっと違うからね。「所有権移転」の原因も「信託」だろう。
Y:なるほどねぇ。信託っておもしろい。本当の所有者はお父さんなの?
X:少なくとも税務署はそのように判断しているようだね。でも本当のところ、[誰のものでもない不動産」というべきだね。<所有>という観念が宙に浮いていて、不安定な財産のあり方だと思う。
Y:注意深く登記を見ないと、お父さんの家が信託されているのか分かりにくいわね。
X:あーっ、その辺は大丈夫さ。ちょっと下を見てほしい。「信託目録」と書いてあるだろう。その後ろにズラズラっと書いてあるのが、信託契約の内容を要約したものさ。相当長いだろう。土地の登記にも家屋の登記にもこの「目録」は付いている。これを見れば、何も事情を知らない第三者でも、この不動産は信託によって権利権が「大木太郎→松田ダリア」に移転したことが一目でわかるだろ?
Y:そうね。でも、「信託」だと本当に私が所有者になっても贈与税はかからないの?
以上のように、家族信託契約と同時に「所有権移転」と「信託の登記」をしておけば、Yはれっきとしたこの不動産の名義人(所有者)となり、Xの健康状態がどのようであろうと、Yはこの不動産の売買などの処分行為を自由にすることができます。
「自由に」というと何でもできてしまうので、信託契約では契約書の冒頭に「信託の目的」を書き、この不動産をどのような時に、どのような範囲で処分していいかを、決めておきます。
登記の理由には、「信託」とはっきり書かれている(上記の赤い丸)。
その下には、デカデカと信託契約の概要を書いた「信託目録」が掲載される。
登記簿(登記事項証明書)にここまで書かれていれば、この建物と土地は「XがYに信託したもの」であることは誰の目にもあきらかです。
一方、売買をするなどの場合の当事者(つまり契約書に署名し実印を押す人)は、「XではなくYであること」までが公示されているのです。
時々、委託者になる方が「土地を盗られるみたいで嫌だ」と、家族信託に反対することがあります。
お金でもそうです。
自分の通帳の預金が空になり、子の通帳にお金が移る。
それは財産を分別管理をするため(親から預かったお金と受託者自身のお金とまぜこぜにしないため)にしていることなのですが、“不安”を押さえられない、という人がいるのです。
そこを超えてもらわないと、信託は成立しません。
この点、不動産については「権利者欄の名前は子に移っている」ものの、<「所有者」としてではなく「受託者」>しかも「信託目録」付きですから、普通の所有権移転とは異なる登記、信託による移転であることが一目瞭然ですから「安心でしょう?」と、私は考えています。
娘Yの最後の疑問にも答えておきましょう。
信託で不動産の所有権を移転しても、新所有者に贈与税はかかりません。
家族信託の当事者は、▼委託者、▼受託者、それに▼受益者です。
「受益者」は信託財産から何らかの利得を受ける人。
今回の例で誰が得をするかというとお父さん(X)。
だからXは委託者であると同時に受益者です。
不動産は元々Xのものでした。
それを将来の処分のためにYに所有権を移したけれども、実質的な利得を受けるのはXだけ。
Xはこれまでと同様“自分の家”に住めるし、マイホームを売って得られるお金も「信託財産」として先ほど紹介した赤い通帳(大木太郎 信託受託者 松田ダリア名義)に保管され、Xの生活費や療養費等として娘から支給されることが決まっています。
自分の財産をいったん預けているけれども、その財産から生じる利得は全部自分に返ってくる。
娘(Y)は、管理・処分の義務だけを負い1円も利得を受けない「財産管理人」にすぎません。
だからYに贈与税はかからないんです。
今回の「居宅売却家族信託」に合わせてX、Yの関係を示せば、以下のようになります。
実にシンプル。登場人物は2人しかいません。
委託者と受託者、もう1人「受益者」がいるはずですが、委託者が受益者でもある場合が家族信託では圧倒的に多いので、今回のような構成になることがほとんどです。
さて、信託契約を結んでも父の生活は今まで通りです。
受託者のYも当面、することがありません。
※固定資産税は「Y」宛てに届くので、Yはその支払いだけはすることになります。信託財産からそのコストを払います。
お父さんの認知症が進むと、いよいよ施設探し。
同時に父の居宅売却を検討します。
入居一時金は多額で、しかも一度施設に入れば継続的に費用がかかります。
そこでかねての想定通り(契約書に書いた通り)、受託者は父の居宅を売却することにします。
将来の認知症に備え居宅を売却することは家族信託でなければできないのでしょうか。
任意後見契約や成年後見制度を使っても、できなくはありません。
ただ、「家を失う」ことは重大事ですから、成年後見制度の下でこれを行うときは、家庭裁判所の許可を得ることになっています。
家裁は、他に金融資産がなく、居宅売却以外にお金を得る方法がないときに限り許可を出すならいです。
お手軽に「困ったら居宅売却」というわけにはいきません。
さらに、家を売って得られた金銭は、家族ではなく後見人等が管理することになります(これは当然のことですが)。
成年後見制度のうち公的後見(成年後見・保佐・補助)は、家庭裁判所が職権で審判するので本人や家族の希望通りの後見人(多くの人は家族後見を望んでいる)を選べないという難点もあります。
そこで、好きな人を選任できる任意後見契約があります。
この任意後見なら後見人は本人の希望を聞いて適宜のタイミングで居宅を売却してくれるでしょうか?
理論的には「できる」といいたいところですが、任意後見人には必ず任意後見監督人として司法書士か弁護士が付けられるうえ、そのバックには家庭裁判所が存在します。
そう考えると、任意後見監督人に相談、報告もしないで居宅の売却を進めることは、事実上難しいといわざるを得ません。
これは不都合のように見えますが、成年後見であれ任意後見契約であれ、その前提は「依頼者(被後見人)はすでに判断能力を失っている」ということにありますから、本人の代理人が好き勝手に家を売ることを許すと本人に大きな不利益が生じる恐れがあります。
「不自由」であることは本人を守ることにも通じるわけですから、制度的には、やむを得ない制約でしょう。
では家族信託では?
まさにこの事態を想定して家族信託の契約書を作っているのですから、受託者は適宜のタイミングで居宅売却を決定できます。
契約書に「信託目的」として居宅売却のことをきちんと書いておけば、受託者は制約を受けずに行動を起こすことができます。
今回は居宅売却家族信託の解説が主なので「信託目的」を単純化しました。
居宅を売却するときに、移り住む施設を決めるようなことも当然、受託者の仕事になりますが、仕事はそれだけにとどまりません。
実際の信託契約では、受託者にもう少し複雑で多様な仕事をしてもらうこともできます。
例えば、ひとり暮らしの父の「見守り」。
受託者が父親と同居できない事情がある場合、父のためにセキュリティ会社と契約を結び、異変があったときには連絡をもらう、ということが考えられます。
また、父が暮らしやすくなるようリフォームの指揮をとる―—なども任務とすることができます。
さらに、よく質問を受けるのですが、意思能力を喪失した人の医療や介護等の手続きは本人では難しくなります。「だから成年後見を」と言われるのですが、その認識は誤っています。難しい言葉で<身上保護>といわれますが、この保護権は元来、家族が自然の形で担ってきました。今もそれは変わりません。
ですから、家族信託でできることは財産管理だけだから、同時に任意後見契約もしておかなければいけない、ということはありません。
いずれにしても、家族信託の契約書を書くときは、将来、あるいは近い将来に起こりそうなことを想像して、どのような場合でも対応できる契約内容にすることが大事です。
本人や家族がよく話し合って「想像する力」が、よい家族信託契約をするための条件になります。
父が亡くなると、この信託は終了することになっています。
残余財産を得る人は契約で決まっており、「帰属権利者」といいます。
契約により今回の帰属権利者は、受託者のYです。
残余財産?
「でも、居宅を売った場合と売らなかった場合とでは、残余財産は違うんじゃないの?」
その通りです。
家が残っていればそれも残余財産。
売れていれば居宅はお金に代わり、信託金融資産に追加されています。
家が残っている場合、受託者(長女)は「清算受託者」として、家を現状のまま承継してもいいし、売却して現金に換えてから承継することもできます。
(処分法についても契約書にあらかじめ書いておきます)
家族信託は財産承継にあたっても変幻自在で、柔軟です。
将来を予測していろいろな対応法を用意しておけば、遺言より確実に財産を引き継ぐことができるわけです。
もっとも、予測がきちんとできていないと………
思いがけない出来事により信託契約そのものが暗礁に乗り上げかねませんから、計画はち密でなければなりません。
最後に、今回の家族信託にかかる税金のことに触れておきましょう。
<最終更新:2023/6/11>
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