★「認知症で預金凍結」は事実だ! 甘えを捨て私たち自身が「対策」を持ち、実践しよう。銀行に改善を求めても事態は変わらない

家族信託

認知症になると、銀行が預金口座を凍結してしまう。
ひどいと思うが現実だ。
「信じられない」なんて、言ってはいられない。
「凍結される」を常識にして、私たちが対策しよう‼

 

認知症は、きわめて特殊な病気だ。
その症状のことより、世間の偏見の強さが、異常だと思う。
認知症」というだけで、その人の預金口座が一方的に凍結されてしまうんだよ
銀行に、いや「金融機関」だから、ゆうちょも証券会社も生命保険の会社も同じ。
右にならえをして「口座は動かせません」「成年後見人を……」という。

 

深刻な“社会問題”である(はずだ)と思うし、こんな対応は、あってはならないと思うが、
いつの間にか「認知症になると預金凍結」は、定着してしまった。
恐ろしいのは、金融業界のこの常識を、世間の人の多くはまったく知らず、甘え気分から抜けだしていないことだ。

 

「そんなこと、あるわけがないじゃないか。自分のお金だよ」
銀行にことを分けて話せばわかってもらえると思い込み、現実を見ようとしない人の方が圧倒的に多い。
普通の家族がある日突然、凍結に遭遇したら、どれほどショックを受けるだろうか。
私はそのことを思って、急いでこの本を書いた。
『認知症の家族を守れるのはどっだ⁉ 成年後見より家族信託』だ。

認知症は、その症状は千差万別。病の軽重も実に幅広い。
完全に意思・判断能力をなくす人もいる一方で、
それと同じくらい、あるいはそれよりはるかに多くの認知症患者は、意思・判断能力を完全喪失してはおらず、意思能力が残存している。
それを「認知症」というだけで、まるでおびえたように金融機関は恐る恐るになり、医師でもないのにテストまがいのことをして(※長谷川式認知症スケールをマネして3問程度質問する)預金者の判断能力を試し、本人が「(預金を)おろしてほしい」と懇願しているのに(つまり、明確な意思表示をしているのに)「お客さまの安全のために口座は凍結させていただきます」と問答無用だ。
これは何事か‼

 

銀行の過剰忖度(そんたく)、過剰防衛である。
忖度、防衛と書いたがどこにむけての忖度、防衛だろうか。
(監督官庁の金融庁は「凍結せよ」などとはいっていない!)
人権という観点で言えば、完全な人権蹂躙。
なぜなら本人が意思表示し、本人は今、目の前で起きていることを理解しているからだ(だから怒っている!)。
銀行の方が巨大だから、「個人」というちっぽけな?存在は無視される。
我さえ(認知症の)悪影響を被らなければいい、といってお金の水源をさっさと止めてしまう
普通の家族は、その暴挙によってどれほどの迷惑を被り、経済的な損失と、心の痛手を負うことか。

 

おろせるおろせない、は銀行が判断することだ。
「認知症だから」というレッテルで、「止めよ」という公の規則(法律)があるわけではない。
(繰り返して言うが、金融庁はそんな通達を出してはいない! 業界をまとめる全銀協も、そんな指針を出しているわけではない)
※【筆者注】金融庁の要請を受けて全銀協は2021年2月に、認知症のお客さまに対応する旨の指針を示した(不十分な内容であったが)。

今銀行がやっていることは、当の銀行を守ることだけ。保身である。
火の粉をかぶりたくない、家族の係争に巻き込まれてはたまらない、裁判に負けて二重支払いを命じられたらどうする!?
と、自行ですべき判断を、都合のよい制度がそこにあるものだから、成年後見制度に丸投げしようとしているだけだ。

■   □

日ごろから私は、成年後見という制度の[運用のまずさ]を指摘している。
そして最近は、認知症による預金凍結を「あってはならないこと」と批判し続けている。
成年後見という制度自体は存在する意義がある、一部の人を救済する、この制度があるおかげで生きていられる人もいる。
しかし、本人の周りに家族がいるふつうの家族にとってはどうだ!?
他人に、士業という煙たい連中に、財布の中に手を突っ込まれたいか!?
本来家族が行ってきた、本人の身上に対する手続きまで士業者に奪われ、施設も自由に選べなくなるなんて、そんな制度を許容したいか⁉
「成年後見」は今やそのような制度になり果てている、といわれても仕方ない面はある。

 

言葉が過ぎているかもしれない。
士業の中でも、一所懸命、被後見人のためになろうとしている人もいる。
しかし、いかんせんそういう人は少ない。
宝くじみたいに神頼み、占いのように『当たるも八卦、当たらぬも……』じゃ、困るのだ。
十中八九人はありがたくて後見人を拝みたくなるような制度でなければならない、と私は思う。

 

こういう声が「家庭裁判所」にはまだ届いていないと見える。
私の声は蟷螂之斧(とうろうのおの)に過ぎないが、この制度の担い手たちは、本当にしっかりしてほしい。

 

と言っても、この制度のまずさを反省して、運用を実際にあらためるまでには、まだ多くの時間が費やされるだろう。
だから言いたいのだ!!
ふつうの家族がこの制度を使わなくても済むように、現実を知ってあなたに先回りしてほしいのだ。
認知症になったらお金は止められる、銀行は預金を凍結する。
これは現実だ!
悪夢なんかじゃない。
楽観、のほほんも、いい加減にしといた方がいい。
そういう目に遭ってから「なんとかして!」じゃあ、全然遅い。

 

高齢家族のお金は、家族が守ってほしい。
その肝心かなめの家族が、「まさか」と目をむいたり、「自分のお金が使えなくなるなんて、あるわけがない」など息巻くより、さっさと定期預金を解約してきなさい、と言いたい。
その難しさ、やってみればわかる!!

 

私が言っていることは、とても重要なことだ。
でも、世間の耳に、まだまだ、全然届いていない。
だからいつもやきもきしている。
「本気で聞いてくれよ!」と。

 

そんな思いの一端も
認知症の家族を守れるのはどっちだ!? 成年後見より家族信託』という本には投影した。
もちろん、ここに書くほどに激しくは書けなかった。
冷静に、論理的に、しかしわかりやすく書いたつもりだ。

 

私の想像以上に早く、「認知症」は世間によって、特殊な病気扱いされるようになった。
みんな目をさましてほしい。
私も、あなたも、85歳を超えて生きれば、半分以上の確率で認知症の症状が出てくる。
認知症は特殊どころか、老化に伴うごく当たり前の、普遍的な病気に過ぎない。
にもかかわらず、ことお金に限って言えば、まるで罰を受けてるみたいに認知症というだけでひどい目に遭うようになってきた。

 

きのうまでは他人事(ひとごと)だった。
誰もがそうだ、私もあなたも。
そんな目に遭うなんて夢にも思っていない。
しかし本を書いていて分かった。
自分も(認知症に)なるんだよ、と言い聞かせて、(なっても)困らない対策を取っておかなければいけないんだ、と。

 

社会はまだまだ「認知症」に慣れていない。
慣れてくれれば、もっと上手な付き合い方が出てくるはずだと思う。
でも今は、まだその時期じゃない。

 

先週この記事を書いていた時私は、こう「まとめ」を書くつもりだった。
《金融の最前線にいる銀行、生保、証券会社はもっと認知症を勉強せよ!
そしてきちんと、論理的に、自社の判断で認知症患者の症状や病の軽重に合わせた対応マニュアルをつくるべきだ。》
しかし、この結論はピンぼけだ。

 

銀行、生保、証券会社に何を言っても、何も変わらない。
大きな図体の会社が、庶民のために変われるわけがない。
変わらなければならないのは私たちだ。
企業なんかに「変わってもらう」なんて甘い! 論外だ!!
変われない非をいつまで言い立ててもムダ。
こっちが変わればいいだけのことだ。
凍結されないように、こっちが先に手を打つしかない。

 

それが世間の常識になるように、私は言い続けるつもりだ。

(初出:2020/1/17 最終更新:2023/10/28)

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静岡県家族信託協会
行政書士 石川秀樹(ジャーナリスト)

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この記事を書いた人

石川秀樹 行政書士

石川秀樹(ジャーナリスト/行政書士) ◆静岡県家族信託協会を主宰
◆61歳で行政書士試験に合格。新聞記者、編集者として多くの人たちと接してきた40年を活かし、高齢期の人や家族の声をくみ取っている。
◆家族信託は二刀流が信念。遺言や成年後見も問題解決のツールと考え、認知症➤凍結問題、相続・争族対策、事業の救済、親なき後問題などについて全国からの相談に答えている。
◆著書に『認知症の家族を守れるのはどっちだ!? 成年後見より家族信託』。
◆近著『家族信託はこう使え 認知症と相続 長寿社会の難問解決』。
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