★ゆがんでしまった成年後見!《 家族信託と比較してわかったこと》

成年後見

この記事の初出は2018年2月21日。3年もたった記事をなぜ転載してきたのか。
ゆがんでしまった成年後見は、庶民の思いとズレている 」とあらためて感じたからだ。
成年後見制度を全否定はしない。認知症の高齢者や障がいを抱えた人たちの暮らしを守るためには、成年後見と家族信託は補完し合える。しかし、それにしても「成年後見」は法律家と官僚目線が強く高飛車で、私のような生粋の庶民にはつきあいづらい
家族信託と項目ごとに比較したら、“問題な成年後見があらためて浮き彫りになった。

 

そもそも「成年後見」は誤解が多い。私に届く相談の多くは、成年後見という制度の中身をほとんど理解していない。
❶成年後見人が何でもしてくれるような錯覚、❷自分が成年後見人になれるかのような思い込み、❸苦汁をのむようなニガさがあるとは微塵も信じていないような楽観、❹「国の制度だから」と“安心”のうのみ。読んでいてため息が出る・・・・・。
だが、それは無理もない。家庭裁判所が発行しているパンフレットはどれも、「成年後見人に家族が就任することを前提」にして書かれているからだ。

 

成年後見制度は、2000年に制度が発足した当時の、《「親族後見人」を選任し、本人(被後見人)の残存能力を活かすこと、本人の意向を尊重すること》という、“やさしい後見”の理念からはかけ離れてしまった。今やこの制度では、家族は後見人になれず、「不正防止」のために士業後見人ばかりが肩をそびやかす、重苦しい制度に変わっている。
誰の目にも「成年後見の変容」は見て取れるのに、裁判所関係のサイトは今も親族後見人が中心であるかのような記述で埋まっている
私はジャーナリストだから、実態とかけ離れた無責任な情報をいつまで裁判所は流し続けるのかと、すこぶる不満である

 

私は次の記事で「普通の家族は成年後見を使ってはいけない」と警告した。
★使ってはいけない「成年後見」。認知症対策の切り札にはならない‼
この記事は初出以来数十万人に読まれているが、いまだ「大海の一滴」のようであり、
「影響力がある」と言えるほどには注目されていない。
この制度を、普通の家族は使うべきではない。なぜそう思うのか、簡潔に、しかも誰が読んでも分かるように、成年後見家族信託とを比較しながら解説してみたい。
上が成年後見、下の青色表記が家族信託である。

 

目次

■取り下げできない制度は、あってはならない

◆対象者

▽既に意思・判断能力を喪失しているか、喪失しかけている人(認知症、精神障がい・知的障がい者)。
▼現在は健常、または軽度の認知症状が出ている人。高齢で重要な仕事や、これから処分したい財産を持っている人が利用することが多いが、私はむしろ、一家の大黒柱に認知症懸念がでてきている場合は、普通の家族こそが家族信託を活用してほしい、と思っている。

 

◆目的

▽本人の財産を守ること。家族はむしろ本人の財産を狙う”潜在的な脅威”と考える。
▼本人と家族のために最善のことを、現在から未来に向かって実現する。

 

◆申立てする人

▽本人や四親等内の親族。市町村長の申し立ても最近は増えてきている。
▼申立てではなく、本人、または本人の将来を心配する家族が、本人が元気なうちに家族の1人を受託者にして、契約する。

 

◆申し立ての問題点

いったん申し立てたら取り下げできない。家事事件手続法第121条に「(取下げは)家庭裁判所の許可を得なければならない」と明確に書かれているためだ。これは民法の「契約自由の原則」を完全に踏みにじっている。裁判所が”原則”をふみにじってどうする⁈

(申立ての取下げの制限)
家事事件手続法第121条
次に掲げる申立ては、審判がされる前であっても、家庭裁判所の許可を得なければ、取り下げることができない。
一  後見開始の申立て
二  民法第843条第2項 の規定による成年後見人の選任の申立て
三  民法第845条 の規定により選任の請求をしなければならない者による同法第843条第3項の規定による成年後見人の選任の申立て

 

▼家族信託は「契約」なので、委託者と受託者が合意すればいつでも解約できる。

 

■「事前相談」という裁判所の大ウソ⁈

◆事前相談

▽家庭裁判所との”事前相談”は一応設定されている。しかし相談は、必ず申立ての数日後に設定されるので、相談の結果、「成年後見は私たちが思っていたことと違うので申し立てを取り下げる」といっても「正当な理由」がなければ許可されない。
正当な理由とは、①悪意の申立者により健常であるのに申し立てをされてしまった、②本人が死亡した──などに限られているので、本人を連れてきて「私は被後見人にされることは拒否する」などという場合でも、許可はおりない。「後見開始の審判が出る前に相談しているのだから”事前相談”だ」と家庭裁判所は言うが、見苦しい詭弁である。民間の感覚を持っている人はこれを「事前相談」とはいわない。後戻りできない事後相談である
▼家族信託の契約書を作成する専門家と家族との事前相談は、何度でも重ねられる。もちろん、家族信託をする、しないは委託者の自由だ。

 

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◆後見人、受託者

▽家族が後見人となる確率は最近とみに低くなり、20%にまで落ちている。70%超は司法書士、弁護士、社会福祉士など職業的な後見人であり、彼らは家庭裁判所から選任される。家族が選任されない理由を家庭裁判所は一応公表しているので(非常に見つけにくいが)、この記事の末尾に掲載しておく。「自分が後見人になれる」と幻想を持たないように、熟読していただきたい。
▼受託者になるのは家族であることが大半だが、友人や親せきなどでも構わない。信頼の置ける人ならOKだ。

 

◆後見人、受託者を決定する人

▽後見人等を決定するのは家庭裁判所。公的職場の最たるものである家庭裁判所が選任するので、公平を旨としているのであろうが、せっかく事前相談を行っているのに裁判官が同席するのはほぼ瞬間だけであ。後は調査官や秘書官等の事務官任せで、結果として家族の希望は聞き置かれることが多い。(大事なことなのだから裁判官自身が聴きなさい!、と言いたいが)
▼誰を受託者にするかは家族が決める。契約書を書く立場である専門家も助言するが、受託者は最も重要な当事者であるので、決定するのはあくまで家族である。

 

◆対家族

▽高齢で認知症の被後見人にとっては、悪い家族に囲まれて財産をかすめ取られる事例もままあった。善意の者でも、多少は自分のためにお金をごまかすことがあるのが人間の本性。というわけで成年後見制度においては、家族は”潜在的・顕在的な脅威”であり、家族を財産に近づけない、財産管理について口出しさせない、したがって管理の実情を家族に報告しない、ということが成年後見制度運用の前提になっている感がある。
▼家族信託は家族の協力によって成り立つものであるから、事前も事後も、家族との連携を旨とする。

 

■離脱できません、死ぬまでは

◆成年後見制度・家族信託契約からの離脱

成年後見制度からの離脱はできない。脱出不能!鬼のような制度である(まったく!)。後見人が(家族から見て)気に食わなくても、そんな理由では到底解任できない。後見人を執念のように監視し抜いて悪事を見つけようやく解任できたとしても、家裁は次の後見人を選任するだけだ。成年後見制度からは、本人が亡くならなければ離脱不能だ。
こんな重たい制度にする理由がどこにあるというのか
金銭管理のおおもとをつくってあげれば、あとは後見人は、さっさと家族後見人と代わって退場すればいいではないか、と思うが、そのような運用にはなっていない!
▼家族信託は契約だから、委託者・受託者が合意すればいつでも終了させることができる。委託者と受益者が同じ場合は(家族信託の大半はこの形)、委託者が「もうやめたい」と言えば、単独でも終わらせることができる。

 

■本人の財産はすべて後見人が握る

◆財産管理

▽本人の財産はすべて後見人の元で管理される。ということは通帳も年金手帳も、不動産の権利証(登記識別情報)もすべて成年後見人が持っていく、ということである。その管理は硬直的で、家族の希望は聞かれないし管理の実態は報告もされない。重要な判断は家裁に上申書を出し決定を待つ。個人の財産が準国家管理のように扱われるわけである。
▼本人の財産のうち「目的実現のために必要な財産だけ」を受託者に預ける。名義は「受託者名」に換わり、以後受託者は受益者のために財産を管理運用し、処分する。受益者は当然に、受託者に注文を出すことができ、不満なら裁判に訴えることもできる。

 

■限られた契約しかできない後見人

◆契約はどこまでできるか

▽金融機関との取引はおおむねできる。不動産についても限られた範囲だが本人に代わって処分行為をすることができる(居宅の売却・賃貸は家裁の許可が必要だが)。身上監護のための契約は任務の一つなので当然することができる。
成年後見制度の本質を知らない大半の人は、お金に関しておおむねこのようなことを成年後見人等が行うのを見て、「後見人等は本人の代わりになんでもできる」と過大にその権限を見がちだが、一般な契約や自社株式の議決権行使などができる、と考えるのは大間違いだ。
ここは議論が絶えないところで、成年後見を規定した民法自体が想定していない「一般的な契約行為まで成年後見人はすることができる」とするのは、極めて危険である。
本来、「契約の当時に意思能力の欠けた者との契約は無効」(民法第3条の2)なのであるから、健常な時の本人の意思を知っているのでない限り、そのような契約を本人に代わってすることができるわけがない。
もっと簡単な例でいえば、上場株式や投資信託等の運用まで成年後見人が責任をもってやれるとでも言うのだろうか。後見人等にかろうじてできることは、株価の変動にさらされない時期を選んで株取引をやめて現金化する程度のことだ。
このように、本人の認知機能の低下によって止まってしまた案件の多くは、成年後見人といえども容易にその”凍結”を解けるとは言えない。
▼信託契約で「する」と決めた契約はすべて受託者が契約できる。「する」と書いてなくても「信託の目的」に照らして委託者が希望するであろうと推測できる契約なら、すべて受託者の裁量または受益者代理人等と相談して、することができる。

 

◆相続対策

▽できない(×生前贈与、×生命保険契約、×養子縁組)。本人の財産を守るのが成年後見の目的だから、生前贈与等は本人から財産を奪う行為に見えるはずである。
▼できることもある(△生前贈与、×生命保険契約、×養子縁組)。生前贈与は委託者(=当初受益者)と受託者の利益が相反することがあるので注意を要する。委託者の意思能力が明瞭にない場合には、無理にやっても税務当局から「贈与」を否認される可能性がある。家族信託なら好き勝手な対策が行える、などとは私も言わない。
そもそも「相続対策」は本人に完全な意思能力があるときにするのであって、高齢で判断力もどうかという時機になってから、家族にせがまれて行うようなものではない。
家族信託こそ、規律をもって行うべきだ。

 

■成年被後見人は身分を失う!

◆身分・地位

成年被後見人は行為無能力者として扱われ、台帳に登記されることになる。医師・弁護士(その他の士業)・会社役員には就くことができない。議員、公務員の場合は失職する。その他、禁じられる職種多数。ただし「被後見人差別だ」という声が上がり、成年後見制度による「欠格条項」は徐々になくなっていく流れにはなりつつある。
▼委託者が認知症になっても社会的な身分は失わない。(とはいえ、人の財産や命を左右するような重要な職にいるべきではないと思う。会社社長の場合は悩ましい。役員としては欠格条項により強制的に役を追われるけれども、大株主としての地位は失わない。その場合の議決権はどうなるのか? 先ほど書いた問題が、現実の問題として立ちはだかる。失職した本人の代わりの新役員さえ決めかねる、ということになりかねない。会社という”舟”は座礁寸前だ。そんな状況になる前に家族信託契約を結び、受託者に自社株式を委ねておくべきだ。社長として、退路を自ら作っておいてほしい)

認知症のおじいさん

■家族を遠ざける成年後見人

◆財産管理等の報告

▽開示請求しても家族には知らされない。家庭裁判所のみが知り、家族は遠ざけられる。
▼関係当事者に年に1回以上は財産管理の現状を報告する。また委託者(受益者)が閲覧請求すれば、受託者はいつでも財産管理の現状を閲覧させなければならない。

 

◆監督方法

▽家庭裁判所の監督に服する。
▼家庭裁判所の監督に服さず、契約で監督方法を決める。家族信託では第一に、委託者(受益者)自身が受託者を監視する人である。さらに、受益者代理人または信託監督人が受託者の仕事ぶりを監視することになる。

 

■成年後見人の身上配慮などどこにあるのか⁈

◆身上配慮

▽熱心ではない。数ヶ月に1回程度の施設訪問でお茶を濁す成年後見人もいる。身上配慮は民法に定められた、成年後見人の義務であるが、現状は著しく軽視されているケースが多い。ちなみに、信条保護の働きぶりは、報酬評価に敏感に影響しているとは言い難い。
施設に赴くのはもっぱら家族に任せ、年に1,2回、家族から被後見人等の現状を聞いて、報告書を作る職業後見人も少なくない。施設や医療従事者もその実態は知っているのに、わざわざ家庭裁判所に上申して、改善を求めるケースはほとんどない。
▼受託者の直接の仕事ではないが、元々が家族であるから身近に接することが多く、施設に入所してからも足しげく通う受託者は多い

(成年被後見人の意思の尊重及び身上の配慮)
第858条 成年後見人は、成年被後見人の生活、療養看護及び財産の管理に関する事務を行うに当たっては、成年被後見人の意思を尊重し、かつ、その心身の状態及び生活の状況に配慮しなければならない。

【身上監護に対する私の主張】
まず、民法のこの規定を読んでいただきたい。

(成年被後見人の意思の尊重及び身上の配慮)
第858条 成年後見人は、成年被後見人の生活、療養看護及び財産の管理に関する事務を行うに当たっては、成年被後見人の意思を尊重し、かつ、その心身の状態及び生活の状況に配慮しなければならない。


民法第858条は、成年後見人に成年被後見人の「身上を配慮」配慮せよと命じている条項とみなされている。「後見される人の意思をおもんぱかりなさいよ」とは言ってはいるが、「身上保護という手続き」そのものを成年後見人がやらなければだめ、とはひとことも言っていない。こんな意味のない(後見人が後見される人の気持ちを汲み取るのは当たり前ではないか)、誤解を招く条文があるために、「契約するには後見人を付けてください」とバカなこと言い出す施設が出てくることになる。本末転倒もいいところだ。成年後見制度の中では、家族が敵のように見られているが、家族以上に熱心に本人の身上配慮をしてくれる成年後見人がどこにいるというのか。

「禁治産者法」と対置するために無理矢理設けたような条文は、はっきり言って邪魔である。
(禁治産者法時代には、それほど禁治産者とされた人の人権がないかしろにされていたということ)
身上保護にまで家族を排除するような悪意の解釈は、即刻中止すべきである。
最高裁判所は、自分の責任で家庭裁判所に、「身上保護の中心は家族である」と通達を出し、曲がってしまった制度運用をただしてほしい。

成年後見制度は超高齢社会をにらんだ財産管理手法であり、それ以上でも、それ以下でもない。
身上保護まで巻き込むなんて、あんまりだ。

 

■本人が死んだらサヨウナラ

◆成年後見・家族信託の効力

▽本人死亡により後見は終了する。成年後見人は死後の事務は一切行わない。
被後見人がひとり身であっても、葬式や供養、死亡に伴う諸手続き等成年後見人の「任務ではない」ということで、手を付けてはくれない。
本人が死亡すれば「身上保護」なぞ論理的にあり得ないことは分かるが、放り投げられたら苦労するのは施設や行政の方々である。
民法の委任は「委任者の死亡により終了」(法653条)という規定のばかばかしい順守を”法律家たち”はどこまで続けるきだろうか?
▼契約した時点から効力を発揮し、委託者死亡後も効力を継続させることができる。本人が独り身の場合、死後の委任事務を信託契約に組み込むことも可能。

死後の委任事務とは
本人(委任者)が第三者に対し、亡くなった後の諸手続や葬儀、納骨、埋葬、法要、部屋の明け渡しなどの事務について代理して行ってくれるよう頼む委任契約である。 

 

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■成年後見人の生涯報酬は1千万円超⁈

◆後見人・受託者への報酬

月額に換算して2万円-6万円本人が亡くなるまでの報酬総計は数百万円-1000万円超にのぼることも珍しくない。平均余命が著しく長くなっている今日、成年後見制度に払うランニングコストは途方もなく高い、と言わざるを得ない。
いや、介護施設などの費用は十数万円から30万円を越える場合もある。それと比べて「月5万円」は「高い」と言えるのか、という反論があるかもしれないが、あくまで費用対効果の比較で考えるべきだ。施設費用を自動振り込みするだけで「数万円」は、どこから見たって「高い」だろう!
▼家族信託の契約書作成とコンサルティング費用は数十万円くらいかかる場合が多いが、受託者の報酬は「なし」が原則である。成年後見とは逆に、家族信託は初期費用のみ高い。

※ 当事務所の家族信託契約書の作成とコンサルティング報酬は、平均35万円くらいである。契約書作成が難しいというより、信託に関係するご家族に信託の本質を理解いただくことに非常に長時間を要することと、金融機関や登記所、行政機関等に契約の中身を周知徹底させ協力を得ることがこれまた困難を極めるためである。また家族信託は、「契約書を作ったらそれでおしまい」というほどなまやさしくない。長期にわたって契約当事者をフォローし続けることを前提とした報酬だ、と考えている。

 

■後見は「措置」なのか、「サービス」なのか

この際だから言っておきたい。
成年後見制度は「措置」なのか「サービス」なのか?
この制度を立案した者、運用を決めている者、実際に後見業務に携わっている者たちは決して「措置」とは言わないだろう。
では「サービス」なのか?
これも「サービスだ」とは言わないだろう

 

■1000万円稼ぐ仕事がサービス「0」とは⁈

しかし、はっきり言っておく。
成年後見制度は、間違いなく「サービス」でなければならない
運用当事者たちにはこの意識はまったく欠けているが、考えてもみよ!
本人が亡くなるまで終わることなく定期収入が保証されている、
解任されることもなく、怠慢を責められることもなく一定の報酬が保証されるどころか、
たった1人から生涯にわたって数百万円も1千万円超も稼げるおいしい仕事がどこにある!

 

1千万円も稼げる仕事が「サービス業」でなくて何なのだ。
1千万円も出してくださる方は、まごうことなく「お客さま」である。
そういう自覚が後見当事者にないから、こんないびつな制度が存在し続け、ますます偏狭で息苦しい、居丈高な制度に変わっていこうとしているのだ。
裁判所も職業後見人たちも、サービスという視点をまったく欠いている。
成年後見制度が、鉦や太鼓を鳴らし、「後見制度利用促進法」という法律まで作って躍起に「この制度にいらっしゃい」と誘っても、見向きもされないのはそのせいである。

 

■タクシーで乗り付ける士業後見人

◆成年後見人・受託者の不正

▽残念ながらしばしばある。家族後見人の不正が頻繁にあったため家庭裁判所は、運用をどんどん厳しくし家族後見人の比率をどんどん下げているが、全体の7割を超す職業後見人でも不正は散見される。また、身上監護のために施設に赴くような時に、電車に乗れば30分で着くような所に、タクシーで乗り付ける士業後見人がいる。これは”不正”とまでは言えないが、心の中に「しょせん人の金、節約することはない」との思いがあるのであろう。家族(親やきょうだい)の財産を他人に預けっぱなしにする家族から見れば、そんな実態が明らかにされれば腹わたが煮えくり返るのではないだろうか。
「本人の財産を守る」という法の趣旨が、足元から崩れている
制度設計者、並びに最近の後見制度運用にかかわってきた者たちの弁を聞きたいところだ。
▼不正を防ぐために受益者代理人や信託監督人に家族がなり、チェックを行う。「甘い!」という人もいるだろうが、家族信託は元々「信なき家族」なら導入すべきではない。受託者が何を行っても目くじらを立て文句を言い募る家族がいるなら、どうぞ成年後見に! 成年後見人はきっちり本人の財産を守ってくれるだろう(ただしその実態をあなたは見られないが)。

 

◆成年後見・家族信託をすすめる人

▽銀行・生保などの金融機関、また認知症家族の相談に乗っている地域包括支援センターなど。
ああ、この人たちは「成年後見」の運用実態を知ってお勧めしているのだろうか。
実態を知らずにすすめているとしたら「無責任」を通り越し「罪」というべきである。
▼家族信託への正しい知識があり、成年後見制度の長所・短所を知っている人は、認知症対策、相続や承継対策の切り札としてこれを強力に推奨するだろう。

 

■家族が成年後見人になれない15の理由

2 次のいずれかに該当する場合は,後見人等候補者以外の者を選任したり,
成年後見監督人等を選任する可能性があります。
(1) 親族間に意見の対立がある場合
(2) 流動資産の額や種類が多い場合
(3) 不動産の売買や生命保険金の受領など,申立ての動機となった課題が重大
な法律行為である場合
(4) 遺産分割協議など後見人等候補者と本人との間で利益相反する行為につい
て後見監督人等に本人の代理をしてもらう必要がある場合
(5) 後見人等候補者と本人との間に高額な貸借や立替金があり,その清算につ
いて本人の利益を特に保護する必要がある場合
(6) 従前,後見人等候補者と本人との関係が疎遠であった場合
(7) 賃料収入など,年によっては大きな変動が予想される財産を保有するため,
定期的な収入状況を確認する必要がある場合
(8) 後見人等候補者と本人との生活費等が十分に分離されていない場合
(9) 申立て時に提出された財産目録や収支状況報告書の記載が十分でないなど
から,今後の後見人等としての適正な事務遂行が難しいと思われる場合
(10) 後見人等候補者が後見事務に自信がなかったり,相談できる者を希望したり
した場合
(11) 後見人等候補者が自己または自己の親族のために本人の財産を利用(担
保提供を含む。)し,または利用する予定がある場合
(12) 後見人等候補者が,本人の財産の運用(投資)を目的として申し立てている
場合
(13) 後見人等候補者が健康上の問題や多忙などで適正な後見等の事務を行え
ない,又は行うことが難しい場合
(14) 本人について,訴訟・調停・債務整理等,法的手続を予定している場合
(15) 本人の財産状況が不明確であり,専門職による調査を要する場合

※東京家庭裁判所と東京家庭裁判所立川支部が平成26年作成した「成年後見申立ての手引」11ページから引用

 

■お金で釣ってクモの巣に引っかける後見制度

成年後見の申し立て理由第1位は「預貯金の払出しと解約」。
不変のダントツ1位で、申し立て理由の83.7%を占める。
「生命保険金の受領」も多く、両者を合わせれば全体の91.5%にもなる。
要するに「本人のお金を使いたいのに使えない」、そこでやむなく(もちろん金融機関の窓口で「成年後見人をつけてください」と言われてだろうが)申し立てをしてしまい、後見制度がスタートしてから「しまった」と臍(ほぞ)を噛む。

 

これが「成年後見の今」の実態だ。
お金で釣って、クモの巣に引っかけているのと変わらない。
天下の裁判所がそんな実態を少しも恥じていないことが、不思議でならない。

 

■あなたは「後見人」になれません‼

悪口はともかく、今の後見制度で『自分が後見人になれる』と思って申立てするのは非常に危険だ。
(2)の理由、「流動資産の額や種類が多い」の目安は公表されていない。
裁判官の目分量かもしれない、秘書官の申し立てした家族への印象も重要視される可能性もある。
「どの金額から」とは言えないが、本人の金融資産が「1000万円~2000万円」を超えているようなら、まず家族は後見人になれないだろう。

 

その他、(1)~(15)までをご参考に。
成年後見に反対する家族がいる場合は、まるで裁判所の意趣返しのように家族は成年後見人に選ばれない。
注意喚起の筆頭に書かれているから、これを甘く見てはいけない。

 

■成年後見は制度が大仰過ぎ、運用にも問題

山ほどの成年後見制度批判になったので、さぞお聞き苦しかったと思う。
批判する立場で書いているから、その点を割り引いて解釈してくださっても結構だし、
成年後見人を引き受ける士業者も特に悪意の人が多いわけではないことを言っておく。
しかし私は、人間性や個々の考え方の違いではなく、成年後見制度自体の物々しさと、運用に問題がある、と指摘しているのだ。

 

超高齢社会、激増する認知症患者という現実を前に、2000年に「介護保険制度」と共に民法に「成年後見」の規定を設けたことは悪くない。
しかし「家族後見人」を前提にした制度が、”(家族)成年後見人”の不正頻発にたじろいで、(法を根本的に練り直すことなく)運用を変えることでまったく別の制度にしてしまったことが問題である。
立法権を持たない最高裁判所の民事総局という一官僚組織が「法の根幹」を揺らしているなど、あってはならないことだ。

 

■「家族が家族を支える」制度に戻れ!

成年後見制度は認知症800万人時代に中核となるべき制度である。
だが現実には、制度の実態を知った人は「ゼッタイに使うものか」と思っている。
この制度に関係する者たちは、この声に謙虚に耳を傾けなければならない。
運用を制度創設当初に戻し、「家族が家族を支える」制度に切り替えるべきだし、
死ぬまで成年後見人を付すなどという”重装備”はやめて、順次家族に引き継ぐなどカジュアルで柔軟な制度に変えてくべきだ。

 

庶民が使いたくない制度など、存在している意味がない。
この問題は官僚ではなく、国会が法改正をして対処すべきであることを言い添えておく。

<最終更新:2022/11/24>

この記事を書いた人
石川秀樹 行政書士

石川秀樹(ジャーナリスト/行政書士) ◆静岡県家族信託協会を主宰
◆61歳で行政書士試験に合格。新聞記者、編集者として多くの人たちと接してきた40年を活かし、高齢期の人や家族の声をくみ取っている。
◆家族信託は二刀流が信念。遺言や成年後見も問題解決のツールと考え、認知症➤凍結問題、相続・争族対策、事業の救済、親なき後問題などについて全国からの相談に答えている。
◆著書に『認知症の家族を守れるのはどっちだ!? 成年後見より家族信託』。
◆近著『家族信託はこう使え 認知症と相続 長寿社会の難問解決』。
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