2022.01.07
《家族信託は全国対応しています》★信託の契約書作成とコンサルティング/受託者への支援
実家の父が認知症!? 心配だから家族信託をしたいけれど、近くに専門家が見つからない。どうしよう……。 こんな方、少なくないのでは? 誰に相...
2022.01.07
実家の父が認知症!? 心配だから家族信託をしたいけれど、近くに専門家が見つからない。どうしよう……。 こんな方、少なくないのでは? 誰に相...
もっと家族信託! 石川秀樹のブログです
家族信託の契約は、医師から「認知症が出ているね」と言われた瞬間に《もう無理》になるわけではありません。
よく聞かれるんですよ、家族信託するかどうかで迷っている人から。
認知症の症状は、本当に千差万別です。意思能力や判断力の低下にもさまざまな段階があります。
今すぐ決断すれば何とかなるケースは多いです。
でも私の印象では、いつもギリギリで飛び込んでくる人ばかり。
すべての問題を解決する理想的な契約書が書けるよう、早い時期からご相談ください。
目次
下のイラストを見てほしい。
青のグラデーションが「認知症」の常況を示している。
症状が重くなればなるほど「黒」に近づくように表現した。
見て分かる通り、「認知症」は実に幅広い。
「a」地点でも認知症だし、「d」地点でも認知症。
「a」地点は、家族から見て「あれっ、ちょっとおかしいな⁈」という程度の段階。
一方、文字が読みにくくなっている「d」地点では、症状が進んでしまっている。
患者さんはもう、”あらぬ世界”に行っていて、家族のことも、自分が誰かさえ分からない状態。
あるいは”準植物状態”とでも言うのか、人間らしい反応はほぼできない常況だ。
ところが実際は、「a」から「d」までが同じように、「認知症」と呼ばれている。
「d」にいる人を、「(こうなったら)成年後見ですね」というのは正しいと思う。
認知症がここまで進んでしまえば、財産管理を自分では行えないだろうから。
家族は、自腹を切って本人の療養費に回すか、それが無理なら成年後見を申し立てるか、を決めなければならない。
法定後見(成年後見人・保佐人・補助人)を使うかどうかは、家族の自由。
自由とはいえ、法定後見に頼らない限り財産凍結は解除できないから、どちらにしても辛い決断になる。
認知症がここまで進んでいない場合、「a・b」の地点にいる人にまで公的後見の網をかぶせる必要があるかどうかは、微妙だ。
(実際にこの制度を使っている認知症の人は症状がある人の5%程度にすぎない)
はっきり言って、「ふつうの家族に<成年後見>なんかいらない」と私は思う。
ところが、この制度を作った側は、そうは思っていないようだ。
「a→d」までの患者すべてを公的後見制度の下に置くもの、と考えている。
いかにも法律バカ的であり、現実知らずの乱暴で権力的な発想だ。
本人も、家族も、そんなことを望んでなんかいない! !
制度を作った国会議員も法曹界も、制度を担う張本人である士業の先生たちも、以下のような現実を直視してもらいたい。
a→b→cの常況にいる多くの人は、自分を「認知症」と認めていない。
赤の他人に財産を任せたいなどとも考えていない(そんなこと、想像だにできない!)。
この点、成年後見制度を作った人たちの感覚とは大違いだ。
制度を利用する側の私たちは、①使う必要があり、かつ②使いやすく、③経済合理性があれば使うだろう。
どれか1つでも欠けていれば使わない。要するに、コストパフォーマンスが悪い制度では使えない。
まして全部が欠けているなら、使うわけがない!
--と私は考えるが、間違っているだろうか。
まあ、私の感想はともかく、いま多くの人が、非常に多くの家族たちが、「成年後見は使いづらい。使いたくない」と思っているのは事実だ。
専門家の先生たちに厳重な財産管理をしてほしいのではなく、ただただ、家族が本人のお金を管理できるようにしてほしい。
もっと言えば、銀行に「へ理屈いっていないで、お客様に必要なお金は出してあげなさいよ」と、誰かに言ってもらいたいだけなのだから。
重たい話はこれくらいにして、認知症の現れ方をもう少し解説しよう。
私はこれまで認知症を「aからdまでの段階」でとらえ、「多様な現れ方がある」と説明してきた。
病の初期から現れる症状もあるし、認知症が深刻化した結果として現れる状態もある。
書いて説明すると長くなるので認知症の症状を「図」で示そう。
昔は認知症のことを「痴呆症」と呼んでいた。
まったくの誤解だ。
認知症の「中核症状」のうち「失語・失認識・失行」というのは分かりにくいが、いわば周りの”空気を読めない”状態のこと。
「周辺症状」も「異食」などと書かれるとなんのことだか分からないが、「自分のウンチを食べたりする」こと。
表の言葉をわかりやすい表現に変えよう(右から時計回り)────
このほか
慣れない人が親のこんな状態を見るとショックを受けてしまう。
「狂ってしまたか⁈」と思う。(私も祖母を見てそう思いました)
深く傷つき、そしてあわてる。
怒りが湧いてくるかもしれない。
症状の中でも、特に「疑り深くなる」は家族にとっては最悪だ。
「この家には頭の黒いネズミがいて財布を持って行ってしまう」
などと言われたら、お嫁さんは震えるほど怒りたくなるだろう。
しかしこんな言動も、本人の性質がねじ曲がってしまったからではない。
脳のどこかの機能が狂って(機械で言えば”誤作動”を起こして)言っているのだ。
認知症は”脳の誤作動”!
決して痴呆になっているわけではない。
知的レベルの逓減はあっても、知能がないわけではなく、誇りもある。
そして「感情」は消えずにいつまでも残っている。
脳は、認知症を取りつくろい正常なふりをする等、巧妙な働きを見せることさえある。
専門医でさえ、脳の多様性については《知り尽くせない》と考えている。
「認知症だ」と診断されても、どこまでを「契約OK」と考えるか?
答えを言えば、一番上のイラスト「a」「b」までなら大丈夫だろう。
「cの後期」まで来るとかなり難しい。
当てずっぽうに「a」だの「b」だのと言っているのではい。
私は先般、A4サイズ24ページの「家族信託解説のためのパンフレット」を作った。
そのうちの2ページを使って以下のような[委託者さまの常況ヒヤリングシート ]を作っている。
※これは家庭裁判所に後見審判の申し立てをする際に医師に求める「診断書」を独自にアレンジしたものだ。
[判断能力判定についての意見]
これは身近にいる家族に書いてもらう。
「a」は正常。
「b」は補助相当。
「c」は保佐相当。
「d」は成年後見に相当します。
「d」常況の人は契約する意味を理解できないだろうから、この人と信託契約を結ぶのは無理。
「c」相当をどう判断するかが悩ましいが、ほぼ難しいだろう。
そこで裏面。
「発語」できなくても意思能力には関係ない。
しかし、「意思疎通」ができなければ契約書の理解は難しい。
「見当識」が危ういのも危険な兆候だ。
家族信託の契約できるかどうかで重要なのは、赤字で書いた3項目。
銀行でお金をおろせなければ、そもそも「金銭を信託財産にする」ことができない。
お金に執着があると「(人に財産を)委託すること」は難しそう。
受託者は際限もなく「〇〇(=受託者)にお金を盗られた」と非難されかねない。
また親しい人の言葉が耳に入らなければ、信託は成り立たない。
(最低限、自分のためにお金を管理してくれている、という理解が必要)
紙の表裏2枚だけでも、相当な情報が得られる。
要するに体の機能はどんなに衰えていても大丈夫だが、
自分がしたいこと、自分のために家族がやろうとしていることが理解できないようなら、契約は難しくなる。
こんなことがあった。
私の父のこと。
父は2年前の正月3日、脳梗塞で倒れた。
その半年ほど前から食べこぼしや、トイレに間に合わなくなることが多くなっていた。
『さては認知症になったか?』と脳神経外科に連れていき、問診を経て父は認知症と診断された。
脳梗塞で父が倒れて5日目、医師が「鼻からチューブの経鼻栄養を施すか」と私に尋ねた。
父は間もなく満90歳、『延命のこと?』と戸惑った私は、父のベッドを見た。
すると父の強く鋭い視線にぶつかった。
『父はまったくあきらめていない。生きる気満々だ』
と、すぐにわかった。
退院してリハビリテーション病院でリハビリに励んでいた時、マイナンバーカードの申請書が届いた。
「お父さん、どうする?」と筆談で尋ねると、「ほ・し・い」。
市役所で父に代わって手続きしていると「本人の意思を確認をしたい」と担当課長が言う。
「車いすでも来られないんですよ」と説明しても、「確認したい」の一点張り。
やむなく「あなたが父の病室に来て確認しなさい」と私は言った。
結局、課長は病室にやってきた。
「今日は何日?」「生年月日は?」、その後「マイナンバーカードを作りたいですか?」と聞く。
父は「はい」とばかりに、強くうなずいた。
1か月後、老人健康保険施設に転院した父はここでも健康診断を受けた。
病院付きの高齢の医師はカルテを見ながら、「お父さんは認知症ですかぁ?」と私に尋ねる。
同じことを感じていた私は「なんか、違うみたいですね」。
医師:「お父さんは認知症じゃないですよ。理解できてるものね」
つまり、「診断書」の字面ではなく、その時の本人の状態。
それこそが契約できるかどうかの条件なのだ。
振り返ってみれば、父が「認知症」と診断書に書かれた理由は、私の言葉だった。
父と私とを問診したのは脳神経外科の開業医。
そこで私は自分の見立てをとうとうと語り、医師はそれを逐一パソコンに打ち込んでいた。
私自身が医師に”刷り込み”をしてしまったのかもしれない。
医師はその後、脳の画像診断(MRI)を行い「認知症」と診断書に書いた。
脳の血流調査は行わなかったから、印象としての「認知症」診断であったのだ。
やぶ医者とは言わないが、専門医でも確たるものがあるわけではなく、「印象」を優先するんだな、と思った。
だから私は、「カルテに認知症」と書いてあるだけでは「家族信託の契約は無理です」、とは言わない。
あくまで本人に、これから作る契約書の目的と内容を理解してもらえるかが重要だ。
この点に関しては、平成19年7月19日に行われた「東京法曹界・第1回実務研修会」において類似の事例が語られている。
「任意後見契約」がテーマだった。
任意後見契約は必ず公正証書で作るが、この契約についても被任意後見人の意思能力がビミョーで契約成立が危ぶまれる場合があり、「契約の有効性」が議論になっていた。
こういう場合、「公証人による審査」がカギを握る。
公証人は、①本人の判断能力と、②任意後見契約締結の意思、を確認するために本人と面接する。
(家族信託契約の場合だと、公証人は委託者と受託者に面談して読み聞かせを行い、契約の理解度を観察する。)
この日の研修会の結論は、「軽度の認知症・知的障がい・精神障がい等の状態である場合でも、契約締結時において意思能力を有する限り、任意後見契約を締結することが可能」、だった。
私の実務上の経験からも、この結論はうなずける。
私が家族信託の契約書を作成した案件で、公証人からストップをかけられたことは、これまで1度もない。
「だからご安心ください」、と言いたいところだが、実は私は次のような対応をしている。
委託者候補に対し、「定期預金の解約をしてきてください」と相談者を介してお願いする。
これは私にとって、非常に重要な”試金石”だ。
最近の銀行窓口は内規で指示しているせいか、「認知症」に対して神経質だ。
高齢で高額な定期預金を解約しようとしている人に対しては、「本人の意思確認」を厳重に行う。
この場合、「家族による代理」という手続きを認めていない。
だからこそ、高齢の委託者ご本人に、定期解約のために銀行に行ってくださいとお願いする。(私がそのようにお願いしなくても、本人が銀行窓口に出向かない限り数百万円、数千万円の預金を現金にしたり、他行の口座に移し替えることはむずかしい !! )
ここで「家族信託の信託財産にするのでおろしたい」などと、本人が銀行側とやり取りできないようでは、「家族信託をする理由を理解しているとは言えない」ともいえる。
通帳(口座の契約)には譲渡禁止特約が付いている。
信託財産として契約書に「何々銀行△△支店の普通預金通帳」と書いても、銀行は通帳の名義を「委託者→受託者」に換えてはくれない。
委託者は、1度は通帳の数字を現実のお金に換えて、現金で信託財産に加えるか、銀行窓口に書類を出しと共に説明して受託者の信託口座に振り込んでもらうしかない。
これが私の「家族信託適応基準」だ。
※銀行が事実上、家族信託契約ができるかどうかの基準になっていることは、以下の記事で詳しく書いたので参照してほしい。
<初出:2019/10/29 最終更新:2023/11/3>
あなたの家でお悩みの問題をお聴かせください。
成年後見制度に委ねるより、家族信託という手法を使う方が悩み解消につながるかもしれません。
家族信託は委託者と受託者の契約ですから、すべての事案でオーダーメイドの対策を講じることができます。
成年後見人は意思能力を失った本人の代理なので、将来へ向けての「対策」は一切できないのです。
家族信託なら財産管理から相続対策のことまで、契約の中に盛り込むことができます。
《このようにしたい》という想いがあれば、受託者に動いてもらえます。
実際にあなたはどのような問題を解決したいですか?
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石川秀樹が専門家としてご家族にとって最良の解決方法を考え、お答えします。
※異変に気づいたらすぐにご相談ください。相談は無料です。
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