★コロナと認知症と家族信託、敵を正しく恐れ対策しよう! 出版1年に想う。

家族信託

『認知症の家族を守れるのはどっちだ⁉ 成年後見より家族信託』の出版から、1年がたちました。
世界は一変してしまいましたね。
出版した当時、私が気にしたのは、本の売れ行きと、読んでくれた人の反響だけでした。
今は行き交う人との距離を気にし、「鼻かぜ一つひけない」と緊張の日々。
コロナウィルスの猛威に高をくくっていた“昔”を思うと、冷や汗が出ます。

 

■コロナウィルスは公証役場にも影響

私が出入りする公証役場も、窓を開放しています。
でも面談の席に、ビニールのシート1つあるわけでなく、まだまだ“無防備”。
きっとこの光景も、近々変わるんじゃないかと思います。

 

公証人の先生方は今、「出張」が激増して息つく暇もない様子です。
施設や病院にいる依頼者は、外出なんかできっこありませんからね。
施設側の対応は、日に日にピリピリ感を増しています。
仕事で私が行っても、迷惑そうな顔。外から来る人は嫌われます。
公証人たちも、“命がけ”を実感せざるを得ないような医療・介護現場の空気。
次に公証役場に行くときは、机といすの配置が、一変しているかもしれません。

 

■軽症・無症状にひそむ大リスク

おろかにも、はじめ私は「コロナ騒ぎ」をわらっていました。
「ただのインフルエンザの変種でしょ(なんだ、この騒ぎは!?)」と思っていたのです。
重症化しなければ命の危険はないし、大多数は軽症、または無症状……。
《ただのインフルエンザだって、多い年には1万人が関連死するんだぜ》
そんなラチもない統計を引っ張り出して、人びとの真剣さに水を差していました。

 

しかし<大多数は軽症、または無症状>というこのウィルスの性質こそが、世界パンデミックの誘因だったんですね。
『自分は大丈夫』と不用意に動き回る人を介して、次々“感染”を広げる。
なんと狡猾(こうかつ)なんだろう、このウィルスは‼
いや、ウィルス自身がそんな策略を講じられるわけがありませんよね。
こう言い換えるべきでしょうか、「なんと《自然》は狡猾なんだ!」と。
オリンピックを吹き飛ばし、人々の生活基盤を根こそぎ奪い取ろうとしています。
なにしろ私たちは今、「動くな」「商売をするな」と、言われているんですから。

 

■認知症も狡猾な戦略をもっている!?

「狡猾」と書いていて、「認知症も同じだ‼」と、今さらながら気がつきました。
最初は無症状、もしくは軽症(MCI=軽度認知障害)。
誰もが、見過ごします。
アレッ⁉ と思っても「まさかね」と、悪い予測は打ち消してしまう。
しかし認知症は不可逆、よくはならない。確実に進行する。
(認知症は「感染力」はないから、余計に放置されがち)

 

熱が出るわけでもなく、寝込みもしない。
しかしじわじわと脳は侵され、さまざまな症状がはじめは軽く、
やがて無視できないくらい奇妙な言動が現れ、本人も家族も、異変に気づきます。
それでも多くの人が、「これは大変だ」という反応をしない。
これこそが、認知症の大リスクだ、と私は思います。

 

■「社会的な死亡宣告」に等しい認知症

何が大リスクかって!? この病気を甘く見させ、何も対策させず、
最後には首尾よく(!?)家族を巻き込んだ末、人の命を奪うことです!
認知症の2大要因、アルツハイマー病もレビー小体症も、最後は死亡で終わります。
認知症は慢性病ででありながら「死に至る病」なんですよ。

 

認知症にはもっと怖いことがあります。
死に至る前に「社会的な死亡宣告」を突きつけられてしまう、ということ。
「社会的な死亡宣告」とは何か。預貯金口座の凍結がその顕著な例です。
▼銀行がオカネをおろさせてくれない
▼定期預金を解約できない
▼生命保険の死亡保険金を受け取れない
▼暴走する親の株取引を誰も止められない――
「契約ができない」というのも、社会に生きる資格を失わせます。

 

■コロナに匹敵するあくどい戦略

コロナウィルスは、重症化すれば、人を殺します。
特に高齢者を集中的に(突然変異すれば若者も殺すでしょう)。
認知症は慢性病で、人にうつりはしないが、コロナと同様、致死的。
「致死的」なのに、人は“認知症死”を誰も恐れない。
それこそが、コロナに匹敵する認知症のあくどい戦略と言えませんか?

 

しかも、本当の死亡の前に、認知症は社会的な“破滅”を引き起こす
誰もが知っているはずですよ、やがては「普通でない」行動をとることを。
なぜコロナウイルスのように恐れないんですか?
認知症と診断されても、異変と感じさせるまでには時間がある。
猶予の時間はあるんですよ! なのに、人は何の対策も、用心もしない!
なぜですか!?

 

■認知症を甘く見てはいけない

認知症を甘くみるからです。
「床につかなければならないような病気じゃない……」
話もできるしATMも使える、さっきのことは忘れても、つじつまは合わせられる。
このごろちょっと調子が悪いけど、今まで通りに、ひとりでも暮らせる。

 

認知症という病いは「自分を軽い存在に見せかける」ことにたけていますね。
これは、見事な戦略だ。
コロナウィルスのように、いきなり重症化させて人の命を奪ったりはしない。
静かに進行して、徐々に行動を変容させ、正常・異常の間を揺れ動かせる。

 

加齢現象、と思わせるのも認知症の戦略だ。
人は歳を取れば誰でも弱ってくるし、もの忘れをする。
「そうだよ、歳を取れば誰でも衰える、僕は、そんな現象のひとつだよ」
《そんなことはない。何とかしなくちゃ》と人は分かっているのに、不安を抑え込んでしまう。

 

■世界を殺すコロナ、家庭を壊す認知症

コロナウイルスは、ごく短い時間に人々の生活基盤を壊してしまった。
「動くな」と言われて動かなければ、コロナは衰えても、生活は壊れる。
世界中が恐慌に巻き込まれるかもしれない。
降ってわいたような不幸で、天災に近い。

 

認知症は総がかりで世界を殺すことはないが、個々の家庭の生活を脅かす。
休業補償をもらえるどころか認知症は、自分のお金さえ金融機関に止めさせてしまう。
虎の子のオカネが使えず、契約できないからと家も売れず、家族の代理も認められない。
どちらの病気も深刻で破壊的だ。
容易ならざる敵だ、と思わざるを得ないですよ。

 

■コロナ一色の今も、認知症は進む

1年前、この本を書き上げたとき、こんな世界になるなんて思いもしませんでした。
認知症の影響は深刻とは言っても、何とか救いの道はある、と思っていた。
「成年後見」という使いづらい制度があり、一方には「家族信託」という斬新な代案があった。
これで認知症の問題は、(少なくともオカネに関しては)何とかなると思っていた。

 

しかし、どんなに劇的な効果をもたらす手立てがあっても、手遅れになったらおしまいだ。
コロナの怖さは伝染するが(今はみな、“突然死”を恐れているでしょう!?)
認知症の怖さは、なかなか浸透しない。
コロナ一色の今でも、認知症は確実に「深刻化」へと進行しています。
今ならなんとか契約書を理解できる、かみ砕いて丁寧に説明すればわかってくれる、
そういう瀬戸際の人に、今は、日に日に会うのが難しくなっているんです。

 

■危険があるのに軽く見る私たちの楽観

《時間が零れ落ちていく……》本当に契約ができるのか、冷や冷やしています。
認知症を抱えた高齢者がけがや病気をすると、転げ落ちるように悪化することも。
《もっと早く(ご家族が)動いてくれていたら……》と考えざるを得ないのです。

 

コロナ対策で必要なのは正しい知識と行動でした。
「3密(密閉・密集・密接)」は避け、顔を近づけて会話しない。
認知症も同じです。あれっ?と思ったときに、迷わず行動。
友達や隣人にこぼすのをやめ、
専門家と相談してください
行政や司法書士、弁護士に相談すると「成年後見」が出てくるでしょう。
うのみにしないで、家族信託の可能性を調べてください。
初期の頃ならいきなり家族信託でなくても、財産管理する方法はたくさんあるんです。

 

■コロナ、認知症を正しく恐れる

コロナウイルスと同様、認知症問題も、正しく恐れましょう。
認知症を甘く見るな、影響は大きい、致命的ですよ‼
何度となく、警告してきました。
それでも大半の人は聞き流し、行動しませんでした。

 

コロナ騒ぎの初期、私もそうでした。
しかし今は、とても多くの人がコロナを正しく恐れている。
「重症化すれば、命を運に任せるしかない」ことを、皆が知っているから。
理性と合理的思考で、リスクと欲望抑制とを、ハカリにかけているから。
こういう思考が大事です。自分の周りに起きることをこのようにとらえられれば、
日本は強権の発動なしに、コロナウイルス禍を克服するでしょう。

 

■人生第5コーナーの敵は認知症

認知症は、歳を取ればとるほど広がっていきます。
85歳以上になれば、2人1人は発症することがわかっている。
統計的に分かっているのに、今までは社会事象にならなかった。
世の中が、まだまだ生産人口主流で動いてきたから。
若い人が(認知症に)無関心なのは仕方ない。
でも、100年人生ですよ! 今後、問題とならないわけがない‼

 

100年人生とは、第4コーナー(80歳)を回ってもまだ先がある、ということ。
第5コーナーのリスクの中心は、間違いなく認知症です
認知症リスクへの対策は、第4コーナーでやっておかなければなりません。
コロナ禍を克服するのは、油断ではなく、理性。計算です。
認知症克服も同じ。予測し、正しく恐れ、事前に手を打っておくこと!

 

家族信託の本」刊行から1年、夜明けを迎えたい、と強く思っています。

<最終更新:2020/4/28>

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この記事を書いた人
石川秀樹 行政書士

石川秀樹(ジャーナリスト/行政書士) ◆静岡県家族信託協会を主宰
◆61歳で行政書士試験に合格。新聞記者、編集者として多くの人たちと接してきた40年を活かし、高齢期の人や家族の声をくみ取っている。
◆家族信託は二刀流が信念。遺言や成年後見も問題解決のツールと考え、認知症➤凍結問題、相続・争族対策、事業の救済、親なき後問題などについて全国からの相談に答えている。
◆著書に『認知症の家族を守れるのはどっちだ!? 成年後見より家族信託』。
◆近著『家族信託はこう使え 認知症と相続 長寿社会の難問解決』。
《詳しいプロフィールは「顔写真」をクリック》

 

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