★最高裁が親族後見人に方向転換⁉ ぬか喜びは禁物。代わりに後見監督人が幅を利かす図、なんて見たくない!

成年後見

「すごいことが載っている!!」と、起き抜けに妻が言った。
冷静な彼女が珍しい。
「何かあった?」と聞くと、見せてくれたのは朝日新聞だった。
朝刊1面トップに

成年後見「親族望ましい」
選任対象 最高裁、家裁に通知
専門職不評 利用伸びず

 

この問題に関心がない人にとっては、チンプンカンプンの見出しかもしれない。
要するに成年後見制度は、ここ数年、家族が後見人になれないできた。
弁護士、司法書士などの職業後見人が幅を利かせ、家族からは不評で利用が伸びない。
そこで(成年後見制度の運用をつかさどっている)最高裁判所が「家族を後見人にするのが望ましい」と、
今までの方針をひっくり返すようなことを言った――という意味である。

 

家内が「すごいこと」と声掛けしたのは、私が常々「成年後見人は家族後見人に戻すべきだ! 法律バカが居丈高に『やってやる』の姿勢で財産管理を行えば(公的後見の評判が地に墜ち)、制度はかえって立ち枯れてしまうだろう」と愚痴っているので、《あなた、わが意を得たりでしょ!?》と言ってくれたのだと思う。

 

おっしゃる通り。最高裁の方向転換は正しい方向への第一歩だ。
しかし、手放しで喜んではいられない。
世間が「これで成年後見の問題は解決」と早合点したら、逆にまずい。
断然、まずい。この問題、そんなに生やさしくないはずだ。
世間が警戒感を解いたら、また誤魔化されてしまいそうだ。

 

家族後見人が増えても、あなたが後見人になれる保証はない。
「後見から離脱不能」なのも、今と変わらない。
家族後見人が増えれば、後見監督人が増えるだけだ
後見監督人は、今以上に家族後見人を“厳しく指導”するだろう。

士業優遇は変わらない(後見人は「士業が一番」という思い込みは止まらない)
士業のためではなく、本当に家族のための制度になるのはまだまだ先だ。

 

とはいえ、大ニュースには違いない。
折しも私は『認知症の家族を守れるのはどっちだ!? 成年後見より家族信託』という本を書き上げたばかりである。
このニュースに反応しないわけにはいかない。
急きょ、原稿に加筆した。
以下がそれだ。

■   ̻̻■

成年後見の問題、解決ではない!

これは2019年3月19日、朝日新聞朝刊が報じた1面トップのニュース。報道の前日開かれた成年後見制度利用促進のための国の専門家会議で最高裁判所が、「(後見人には)身近な親族を選任することが望ましい」との考えを示した、というのです。本の原稿を印刷会社に渡し一息ついていた私は、「おっ、水面下の情報がついに表に出てきたか」と、注目しました。

 

家族を排除し専門職後見人を増やしてきた最高裁家庭局の成年後見運用を厳しく批判してきた私にとっては、最高裁の方針転換は“大きな前進”です。「民意とのズレにやっと気づいた」という意味で。しかし一方、新聞がこの問題を深く理解しないまま、これでもって「成年後見の問題が一気に解決に向かう」と世間を勘違いさせてしまう恐れもある、と心配にもなってきました。

最高裁判所

成年後見制度の運用で、「成年後見人は親族後見人が望ましい」と従来からの方針を180度転換させた最高裁判所

 

2000年に成年後見制度がスタートした時、民法が当てにした後見人候補は、間違いなく家族などの親族です。それが弁護士、司法書士といった士業にシフトしていったのは“家族の不正横行”とされています。本で触れたように、直近18年の親族後見人は23%にまで減らされ、士業の独占業務になったかと思うほどです。だから成年後見制度が不人気になってしまった、と最高裁も認めたということなのでしょうが、ここが法曹界ならびにこの法律改正に関与してきた専門家たちの誤解だと、私は思うのです。

 

独善運用がソッポを向かせる

一般人の私たちが思うのは、後見不人気は士業後見人が幅をきかせているからではありません。
第一番の理由は、後見人が誰になるかがわからない(家庭裁判所が職権で決める)、「家族の自分がなれるかどうか、どこにも保証がない」ということです。

 

家族にしてみれば、士業が後見人になってしまったら、「それは困る」と、当然思います。
それで▼異議申し立てをしようと思っても、現実はその申立の仕組みさえない。
▼「それじゃあ、やめた」と申立自体を取り消したくても家裁は許可を出さない。
▼所期の目的は達成した(例:定期預金の解約)からと士業後見人にお引き取りを願っても、後見は一生続く。
▼後見人と家族に意見の相違があって後見人を辞めさせたくてもそれが通らない、
▼通ったとしても、次の後見人が選任されてしまうだけ――。
つまり、「しまった」と思っても、いったん後見制度を使ったが最後、その制度から離脱ができない、というのが本人や家族が成年後見申立てをちゅうちょする理由です。士業が後見人になった場合、こんなに不自由、かつコストがかかるようになるのに「自分が後見人になれるか、最後までわからない」。
これでは成年後見に、とてもじゃないが、踏み込めない!!

 

「措置」の感覚で高飛車な後見人

こんなサービスは、民間では考えられません。
「サービス」と書くと法曹界の人は不満でしょうね。
しかし成年後見の前身「禁治産者法」をやめて成年後見制度に移行した時、法曹界は禁治産者法を「措置」としたことを反省し、本人の残存能力をいかし、本人らしい生き方ができるようそのお手伝いをしようと、法の趣旨を180度変えたのです。措置(取り計らって始末をつけること)から「サービス」への転換、ここにこそ成年後見制度の価値があったのではないですか? だから「強制」の観念は捨てたはず。

 

ところが、捨てたはずの強制感覚が成年後見をとり行う側に色濃く残っているような気がしてなりません。押しつけがましいんです。守ってやる、という高飛車な感覚。一度制度を使ったら「離脱の自由なし」の制度にしているのは、まさに「措置」の発想そこが、普通の人々がこの制度になじめない第一の理由です。

 

何が何でも成年後見を普及させたい!?

2ページ前に書いた「家族が成年後見人になれない15の理由のうち、多くは「もっともだ」とうなずける理由です。しかし2番目の理由「流動資産の額や種類が多い」は家族への偏見です。頭から家族を信じていない。新制度の発足自体、家族を頼みにする前提でスタートしたにもかかわらず「家族はダメ。信用ならない」の決めつけが強すぎます。

※参照記事▼▼▼

★家族が成年後見人になれない15の理由

 ここへ来ての方針転換は、不人気を反省したというのではなく、何が何でも成年後見制度を普及させなければならない、との至上命令があってのことでしょう。家族を急に信用したわけではない。むしろ逆で、家族に後見人をやらせて、不正しないよう監視を強めればいい、との上から目線

 

今後の運用では、親族後見人は確かに増えていくかもしれない。しかし新後見人には「後見支援信託」の利用が強く促され、断れば後見監督人が付けられる。士業後見人が今度は後見監督人として後見人となった家族を指導していく、という図に代わるでしょう。重箱の隅をつつくような見方をしないでほしい、と新監督人には強くお願いしたい。

 

運用を変えるのでなく、制度を変えろ!

本当のことを言えば、運用を変えるのではなく、制度そのものを変えてほしい。措置感覚をきっぱり捨てて、行政サービスの一環としての自覚を持つ制度への転換。離脱の自由がないサービスなんてありえない。財産管理は士業に任せたとしても、身上監護権まで福祉の感覚が薄い者にもっていかれるいわれはない。さらに、現行の後見制度には運用側の暴走を止める仕組みがどこにもない、家庭裁判所がオールマイティのように君臨してしまっている。ここには、物言える第三者機関が絶対的に必要です。

いずれにしても、今後の成り行きに注目ですね。
法律関係者が、ごく普通の家族の感覚を持てるかどうか見きわめる必要があります。そこが変わらないと、自分たちが深く関与している成年後見制度の現行の欠点に気づくことはないでしょう。家族を後見人にしても、締め付けばかりを強めるのはやめてほしい。
(本書で紹介した「回転すし、親の“おごり”はご法度で、親と子は割り勘会計で」という話を思い出してほしい)本人と家族が生計一の家族に“厳正な割り勘”を求めることは、正義とは限らない。世間の人は、それを「野暮」と言うんです。成年後見人が、家族ではなく、家庭裁判所にばかり目が行って、“良い仕事(?)”をしてしまうことを私は恐れます。よい“加減”が大事。最高裁判所が運用を変える」という以上、一般人の力をぜひ信じてください。

<初出:2019/3/19 最終更新:2023/2/24>

静岡県家族信託協会
行政書士 石川秀樹(ジャーナリスト)

 

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この記事を書いた人

石川秀樹 行政書士

石川秀樹(ジャーナリスト/行政書士) ◆静岡県家族信託協会を主宰
◆61歳で行政書士試験に合格。新聞記者、編集者として多くの人たちと接してきた40年を活かし、高齢期の人や家族の声をくみ取っている。
◆家族信託は二刀流が信念。遺言や成年後見も問題解決のツールと考え、認知症➤凍結問題、相続・争族対策、事業の救済、親なき後問題などについて全国からの相談に答えている。
◆著書に『認知症の家族を守れるのはどっちだ!? 成年後見より家族信託』。
◆近著『家族信託はこう使え 認知症と相続 長寿社会の難問解決』。
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