母のすることは最近、危なっかしい
Q
高齢の母(要介護1)と、高次脳機能障害を負った兄が2人暮らししてます。
私は結婚して母の近くに住んでいます。二人の介護をしていますが、
親戚は私を批判することがあっても、全く力にはなってくれません。
母のすることが最近は危うく見えて、還暦が近づいた兄の行く末が心配です。
兄を2番目の受益者にする家族信託
A
お母さんは認知症の初期症状かもしれませんね。
自分のことも分からないほど症状が進んでしまっていますか?
それとも、時々おかしいことはいうものの、人と簡単な会話ならできる、という感じでしょうか?
お母さんのご様子次第では、家族信託の契約ができるかもしれません。
契約ができ、あなたが受託者になれば、お母さんの財産をあなたが管理できます。
この信託の真の狙いは、「お母さんの認知症発症への備え」ではなく、
お母さんが亡くなって以降でも、お母さんの遺した財産でお兄さんの生活を守る、という点にあります。
イラストのようにお母さんが委託者兼当初受益者です。
信託財産はお母さんのマイホームと現金等の金融資産。
お母さんは家に住み続け、毎月あなたから定期金の支給を受けます。
お母さんの受益権は、お母さんが死亡すると兄に移り、定期金は兄がもらいます。
信託財産が枯渇してきたら、あなたが実家を処分してまとまったお金を獲得し、その益金で兄の暮らしを守ります。
家族信託の代表的な活用法の1つで、難しい信託ではありません。
大きなお金を使えるお金に換えておく
この信託にもし難しい点があるとすれば、お母さんが信託財産を作れるかどうかです。
認知症が進んでいない今なら、定期預金の解約や株・投資信託等からの撤退などができると思いますが、どうですか?
「預金凍結」ということを聞いたことがありませんか?
歳を取ったら、大きなお金を”使えるお金”に換えておかないと足元をすくわれます。
今の銀行は、「認知症」に対してやさしい対応はしてくれません。
『いつの間にこんなに”差別的”になってしまったのか』と驚くほどです。
認知症の不安が少しでもあるなら、「定期預金」は即刻やめた方が無難です。
あなたの管理の方がうまくいく!
もしお母さんの認知症が進んで成年後見人を付けてしまったとしたらお兄さんはどうなるでしょう。
成年後見人は「本人(お母さん)の財産を守るため」にしか働きませんから、お兄さんはお母さんから得ていた手厚い保護を受けられなくなります。
お母さんが亡くなると、後見の任務は終了し、遺った財産を兄妹で相続することになります。
その時のお兄さんの財産管理については、お母さんに付いた後見人の仕事ではありません。
お兄さんの問題はお母さんの存命中も死後も、成年後見では何も解決しません。
その点、家族信託なら(生前は)お母さんとお兄さんのために、(お母さんが亡くなった後は)お兄さんのために、お母さんの財産を使うことができるようになります。
財産管理人は受託者であるあなたです。
家族信託は「契約」ですから、お母さんに契約能力があるうちに、使うかどうか検討してください。
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