
2022.01.07
《家族信託は全国対応しています》★信託の契約書作成とコンサルティング/受託者への支援
実家の父が認知症!? 心配だから家族信託をしたいけれど、近くに専門家が見つからない。どうしよう……。 こんな方、少なくないのでは? 誰に相...
2022.01.07
実家の父が認知症!? 心配だから家族信託をしたいけれど、近くに専門家が見つからない。どうしよう……。 こんな方、少なくないのでは? 誰に相...
もっと家族信託! 石川秀樹のブログです
任意後見か家族信託か、本当にお悩みの人が多いですね。
こんな質問をいただきました。
Q:
「昨年、父が亡くなり母(85)が熊本の自宅で独り暮らし。気落ちからか要介護1から2へと進行して、来月から介護施設に入所することになりました。母の暮らしは、父が遺した蓄えと遺族年金で賄っていますが、生活費が乏しくなってきたときは実家を売却するしかないと思っています。
司法書士の知人に相談すると任意後見契約をすすめられましたが、家族信託ではダメなのでしょうか。
兄は東京で定年間近、私は福岡、妹が母の近くに暮らしています」
さて、任意後見か家族信託か、答えはどっちだ!?
なんて言われてもね、私も正直言って困るんです。
答えはね、制度のよしあしなんかじゃない、と分かっているので。
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A:
いただいた情報が中途半端すぎるんですよ。
任意後見か家族信託か、決め手は3つ。
➊お母さんの意思→たぶん、本人はどちらもご存じないから決められない。
❷自宅(母の居宅)を処分できるかどうか→どちらの契約でもいちおうは可能です。
❸家族の意見が一致しているかどうか→肝心かなめのこの情報が欠けている。
いつも見過ごされているのが、❸の視点です。
「どんな家族か」っていうのが、本当に重要です!!!
認知機能が落ちてきた親の問題をなんとかしたい家族の「あるある」はこんな感じでしょうか。
A 親本人が、どっちも嫌だと言い張る(つまりお金を手元から離したくない)
B 気が弱く(または人が好く)近づいてくる子のいいなり(ものすごく危ない状況です!)
C 親のことを真剣に考える子は1人。他のきょうだいは無関心か、文句しか言わない
(こういう家族は少なくない。たぶん後見にも信託にも向かない)
皮肉な言い方をして申し訳ありません。
Aのケース、BもC3も<問題ありっ!>て、わかりますよね。
家族信託でも任意後見でも、制度の違いを比較するだけでは“答え”は出ません。
結局、決め手になるのは「どんな家族なのか」です。制度よりも、関係性。
私が家族信託を勧めない場合があるとすれば、それは――
家族関係が、うまくいっていないとき。
例えば「家族の関係性」をもう少し詳しくいうと──
このような場合、どんなに立派な信託契約書を作っても、受託者となる人がつぶれてしまいかねません。
「何をやっても文句を言われる」「裁判沙汰にされたら……」と悩むことになる。
そんなときは、信託も任意後見も飛び越えて、法定後見しか選択肢はないんです。
これはもちろん極端な言い方、というより投げやりな結論です。
家族がバラバラ、好き勝手にしか行動しない場合——、
強力な制度である成年後見制度(法定後見=成年後見や保佐)に委ねたとしても、決してうまくはいきません。
家族は後見人や家庭裁判所から、“本人にとっての障害(後見制度からは“邪魔者”)”としかみなされず、情報が遮断されるだけです。
家族から見えないところで「本人(つまり判断力が落ちた親)」が守られるのです。
家庭裁判所が判断し、成年後見人が中立的に財産を管理するするから、確かに本人(及び財産)は守られる。
――それって、うれしいことですかねえ、本人にとって。
では、逆にどんな家族なら「家族信託が向いている」のでしょうか?
たとえば、次のようなケースです。
このような家族には、家族信託は「最適解」になります。
受託者が母の希望に沿って、柔軟にお金や不動産を動かすことができる。
認知症になっても、口座は凍結されず、自宅の売却もスムーズです。
任意後見制度がスタートしてから20年以上が経ちますが、実際に「任意後見監督人が付き、機能している任意後見契約」は全体の2%くらいしかありません。
多くは、契約しただけで発効せずに終わっています。
その理由は――
「本人の判断能力が落ちたのに、家族が裁判所に申立てをしたくない」から。
「後見監督人なんか要らない。家族で何とかできればそれでいい」と本音では思っているからです。
まあ、これが普通の人の感覚です。
でも、これはズルい。
任意後見は「成年後見制度の一部だから」、信用の根拠)は家庭裁判所にある。
そこを無視して“私的管理=勝手な管理”で最後までやり続けようとする。
強くその想いがあるなら、はじめから家族信託という選択肢があったのに。
「家族だけで何とかしたい」とほぼ全員がそう思うのに、それができなかった理由は明白。
『うまいこと任意後見で切り抜けられた』と思っていた家族のうち、少なくない人が任意後見監督人の審判を後ろ倒しにし続けた挙句、家庭裁判所から「法定後見への移行」を指示される結果になっています。
任意後見が抱える大きなリスク、というより当然のペナルティーと言えます。
ちょっと「家族関係」に絞りすぎました。
ご相談者は“精神論”を今さら聞かされても、説教されているみたいで不満でしょう。
家族の気持ちが一致しており、協力し合える場合———
<任意後見より家族信託>と言い切る理由をお答えしましょう。
1 契約後すぐに効力が発生する(即効性)。
→ 任意後見は「監督人選任後」でないと発効しないが、家族信託は契約した瞬間からスタート。
2 家庭裁判所の関与が不要で、柔軟に運用できる。
→ ちょっと大きなお金を動かすたびに(エアコンを買ったり旅行する)任意後見人にお尋ねし、大ごとにされちゃうと裁判所の許可を得なければならない、なんてことにならない。
3 施設費用の支出や自宅の売却が、受託者の判断でスムーズにできる。
→ 母の生活費や施設費にお金を出すことを、いちいち任意後見監督人にお尋ねする必要がないことは大きなストレス緩和になる。
4 家族間で信頼関係があれば、制度を超えて有効に機能する。
→ 家族が協力し合えるなら、受託者・受益者代理人・信託監督人を家族間で分担でき、気心が知れ相談できるので“最強の守り”になる。
5 信託口口座で口座凍結を回避できる。
→ 家族信託は、認知症発症後もお金を動かせる数少ない制度。
しかも一度設定すれば受託者の判断で、いちいち銀行の窓口で説明や言い訳をする必要がなく、ほぼすべての決定を実現できる。
6 受託者が資産を管理・運用できるので、意思決定が早い。
→ 受託者や受益者代理人、信託監督人が家族なら忌憚なく意思疎通が行なえ、受託者1人が問題を抱え込むことなく、家族内で話し合って受益者を見守り、適切なタイミングで手出しすることができる。
7 任意後見制度は実際にはほとんど使われていない(任意後見監督人選任の審判をして、実際に任意後見人として稼働するケースは2%に過ぎない)が、家族信託はますます普及している。
→ 家族信託なら、契約したその日から受託者としての行動が保障されている。任意後見を、成年後見制度発足からが四半世紀もたった今でも知らない銀行が少なくなく、手続きや運用も各銀行でまちまち。任意後見候補も、銀行に「任意後見した旨」を伝える人は少なく、「任意後見人」として行動する人は契約者の2割程度という現実がある。
8 任意後見は[7]で書いたように、本人の意思能力が落ちても任意後見監督人選任の審判を申立てる人が少ない結果、「申立ての遅れ」を家庭裁判所に叱られるケースが目立つ。
→ 最悪の場合、家庭裁判所の審判で、任意後見スタートではなく、法定後見への移行を迫られる例が少なくない。
9 家庭裁判所の管理下にある任意後見は、成年後見制度の枠内にあるので、家族は当初から「本人の財産を適正に管理する人」とは認識されず、後見の仕方に横から口出しをする“やっかいな存在(邪魔者)”と見られがち
→ 家族信託なら、受託者、受益者代理人、信託監督人としての役割が用意されており、家族間の密接な関与が前提とされている。
任意後見契約の実態については、書きたいことがまだ山ほど残っていますが、書き始めるときりがないので、詳細はまたの機会に譲ります。
ご相談者の場合に戻りましょう。
母は施設に入所予定。
兄は東京、私は福岡。
妹が母の近くにいる――
この場合、妹さんが受託者になって家族信託を引き受けられるかがカギになります。
妹さんがしっかりしていて、兄姉も「よろしく頼むよ」と応援してくれるなら、
家族信託が最も柔軟で実効性のある手段となります。
元々、「私」は母親のことを心配して悩むくらいですから、受益者代理人にうってつけ。
受益者代理人は委託者の母が判断力を喪失した場合、母の意思を代弁する重要な役目を負っています。
年長の兄は信託監督人になって、家族信託全体を見渡し、気づいたことや懸念があれば口を出し、全体のバランスを常に考える人になるのがいいでしょう。
「9つの理由」に書いた8、9番目の事、実に重大です。
はっきりいいます、誰も成年後見という制度を喜んで使いたいという人はほとんどいません。
<預金の凍結>などという異常事態(=非常事態)が起きなければ、誰もこの制度に踏み込みはしないでしょう。
「どっちがいいですか?」なんて愚問です。
「任意後見契約」という仕組みは作られたけど、実際に<監督人>(弁護士か司法書士)を付けて任意後見をスタートさせる人は契約者の2%しかいない。
98%は『このまま黙って預金を動かせたらどんなにいいか』と願いながら、後見監督人選任の審判を(本人が亡くなるまで延ばせたらどんなにいいことか、と祈りながら)延ばしに延ばしているのです。
相談者さんに声を大にして言いたい。
「迷っている今、という時間がどんなにもったいないか、を考えてください」と。
あなたが心から心配している人は、今(かろうじてでも)契約能力をお持ちだ、ということ。
何をグズグズしているんですか!?
さっさと家族信託に精通した専門家の門を叩いて行動を起こしてください!
あなたのお母さんが、自分の意思で大金(信託財産としたいお金)を動かせなければ「おしまい」です。
受託者が管理するため金融機関に新規開設する預金口座に、振込みをするのはお母さん(委託者)です。
高齢の方が、預金している大きなお金を動かすことは本当に“難事業”です。
4、50代の人がおろしたり振込んだりするのとはワケが違う!
ATMでは絶対にできないから、窓口に行って行員に相談の上「お願いする」しかありません。
もちろん家族が付き添った方が無難です。
しかし1から10まで口出ししたり、代わりに指示することは逆効果になりかねない。
銀行には「預金者のお金を守る義務(「善良な管理者の注意義務」といいます)」がありますから、ピリピリした対応になるのが普通。
(でもご安心を!)
だから家族信託の契約書は公正証書で作るのです。
わざわざお金を出して、公証人という法律の専門家に契約書を作ってもらい、本人の意思確認までしてもらうんです。
その契約書に基づいて、「この銀行のこの口座が信託専用の口座ですから振込んでください」と言えば、(私が見聞きしている限りでは)お金の移動はスムースに行われます。
それは当然。銀行が気にする(預金の)移動先は「本人の名+受託者の名」が入った信託専用の口座ですから、詐欺や流用、マネーロンダリングなどの犯罪行為を疑う必要がない。
銀行は、善管注意義務違反を問われて賠償責任を負う可能性=ゼロ、ですから。
ひとたび信託専用口座にお金が入れば、家族はもう「凍結」を恐れる必要はありません。
もし自宅を売却する旨が契約書に書かれていれば、後は受託者がやり遂げてくれることでしょう。
銀行や家庭裁判所の目を気にしなくても大丈夫。
任意後見と家族信託。
どちらが“優れている”とか“正解”とか、そんな問題ではないのです。
どんな制度を選ぶかは、結局「どんな家族なのか」によって決まる。
『うちなら大丈夫』と信じられるなら、後はあなたが行動するのみ。
この問題に気づいているあなたが急がなければ、手遅れになります。
重ねて言いますが、高齢者が預金を動かすのは本当に大変です。
信託のヤマ場は、家族信託か任意後見か、なんかではない。
本人が銀行に行って、お金を動かせるかどうか、
信託専用口座にお金を入れられるかどうかが最大の難所で、ハイライト。
そのために「公正証書で信託契約書」を作る、という普通でない行為をするんです。
<初出:2025/6/12>
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遺言だけにこだわりません。人生晩年のことや相続については悩みがあって当たり前。
解決法は、遺言や家族信託はもちろんですが、時には成年後見制度も必要ですし、
ケアマネさんや社会福祉協議会との連携で悩み解消につながる場合もあります。
まずは質問・ご相談ください。専門家として真剣にお答えします。
実際にあなたはどのような問題を抱えていらっしゃいますか?
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石川秀樹がご家族にとって最良の解決方法を考え、お答えします。
※考えあぐねたらすぐにご相談ください。相談は無料です。
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